……とまあ、そういう感じで終わったのだが、試合前にRTされてきたツイートで、スタジアム内(グラスゴーのハムデン・パーク……イングランドのウェンブリー・スタジアムに相当する施設で、どのチームのホームでもない)の観客スタンドに「ユニオニストの意匠」が並んでいるのを見て、来期からスコティッシュ・プレミアリーグが……といったことを思わずにいることは難しく、5月下旬という時節柄、7年前の2009年に北アイルランドで起きた「勝ち誇ったレンジャーズ・サポによる集団暴行事件」(男性が1人殺された)のことなどを思い出してしまい、スコットランドのサッカーに特に高い関心があるわけではない私が東京でそんなことを思っているということ自体が「普通のレンジャーズ・サポ」の人たちには失礼なことなのだろうと思ったり、とぐるぐるしていた。
そういう「試合前の盛り上がり」を物語るツイートの多くに、WATP という文字列が入っていた。
こういう「アルファベットの文字列」は、サポーターたちの応援のスローガンである。うちの場合はCOYG (= "Come On You Gunners!") だが、グラスゴーのレンジャーズFCのWATPは "We Are The People" である。
私がこのアルファベット4文字がどういうものであるのかを知ったのは、ウェブ検索で導かれたUrban Dictionaryでだった。
Urban Dictionaryは、「辞書」と名乗ってはいるが、普通の辞書とは違った使い方が要求される。ここは「みんなで作る悪魔の辞典」のようなもので、サタイア・冗談を意図している。「語義」は(言語学者や辞典編纂者ではなく)ユーザーが書き込み、閲覧者は「ニヤリ」と笑うことを期待/予期されている。とはいえ、そうして書かれた「語義」はまったくのデタラメというわけではない。風刺は、完全なフィクションの上には成り立たない。今の話題でいえば、「三島由紀夫賞」に「なるべく高齢で、小説家のイメージの薄い文学者に与える賞」といった語義を、気の利いた表現で書いているような感じだ。
で、WATPだが、これを私はどっかの掲示板か何か(Bebo.comのグループだったかもしれない)で見かけて意味がわからなかったので、そのままウェブ検索した。
そして出てきたUrban Dictionaryのページで、このフレーズが「どういうものか」はよくわかった。Bhoyというセルティック・サポであることを表す「記号」をまとった「ネット住民」が、うまいこと言おうとするような語だ。
http://www.urbandictionary.com/define.php?term=WATP
だが、WATPの元となったWe Are The Peopleというフレーズの《意味》は、わからない。出典である聖書を読まなければわからないだろう(読んでもわからないかもしれない)。
そこまでわかっていなくても、「スコットランドのサッカー」という文脈の中で使われるWATPが「何を表すか」はわかる。当面は、それで十分だ。
※この記事は
2016年05月22日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。