「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2016年05月18日

"「東京五輪中止、ロンドン開催」の可能性が本格浮上" なんか、してないですよ。

えっとですね、まず、ロンドンは、うちらのいらないゴミの捨て場じゃありません。

五輪について書くとあんまり絡まれたくないタイプの人に絡まれる可能性が高くなるので(実際ここに来てるんですけどね)書きたくないし、そもそも個人的に、オリンピックというものについて(仕事でもなければ)何かを書くほど関心がないというか、むしろ無視することにしています(2012年ロンドン五輪は、「ロンドン」に興味があるので開会式や閉会式は見てたし、UKでのニュースは毎日目にしてたけど、大会の中身は見てない)。その程度の自分が何かを書くことは避けるべきと思ってたんだけど、Twitterでちょっと書いたらRTがかなりなことになってるので、ブログに書いておけば誰かの役に立つのかなあということで書いておきます。

「ビジネスジャーナル」というオンライン媒体があります。はてブなどで名前はよく見かけるけど、特に興味のある記事が出る媒体ではないから自分では見ないし、どういうバックグラウンドの媒体なのか、私は把握してません。その媒体に出ている記事が、かなりの話題。現在のトップページ(下記キャプチャ)では、「ギャンブルジャーナル」(って何? 競馬とか競輪とか? 五輪は関係なくないですかね)というコーナー(?)のトップニュースのようですね。



「東京五輪中止、ロンドン開催」の可能性が本格浮上。もはや 「誰も望まない五輪」への変貌と、森喜朗会長の「戯言」
2016.05.17
文=odakyou
http://biz-journal.jp/gj/2016/05/post_422.html

http://biz-journal.jp/gj/2016/05/post_422.html現時点で、この「ビジネスジャーナル」の「ギャンブルジャーナル」というコーナー(?)のアクセス1位がこの記事(キャプチャ via kwout)。「ギャンブル」の要素は何もないと思うのだけど、「ギャンブルジャーナル」の読者が読んでいるというより、普段この媒体をチェックしない人たちにもこの記事が広く閲覧されているのだろうと思います。Twitterでは現時点で373件あるというし、FBでも1000件以上の「いいね」がついている。はてブでは19件と控えめな数値だけど、はてブでは昨日(17日)既に2ちゃんのまとめサイトが取り上げていたのがトップページに出ていて、300件以上のブックマークを得ている。2ちゃんまとめサイトから「ビジネスジャーナル」(内の「ギャンブルジャーナル」)の元記事に飛んで読んでいる人がどのくらいいるかはわからないけど(一般論としては、リンクがクリックされる割合は、1〜3パーセントくらいなものだ)、「東京五輪は中止して、ロンドンで開催しようという話が "本格浮上" している(らしい)」という話は、ネットだけでめっちゃ広い範囲に広まっているはず。今日の職場での雑談などでますます広まるかも。

で、この話だけど……ええと、「ビジネスジャーナル」(内の「ギャンブルジャーナル」)の当該記事が参照しているのは、「海外mailOnline」だそうだ……って、何それ。

「海外mailOnline」なんて、あたしは聞いたことがない言い方だし、見たこともない表記だけど、常識で英国のDaily Mailの電子版、Mail Onlineのことだということはわかる。

英Mail Onlineのことを「海外mailOnline」と書いてしまうような書き手が、どの程度正確に英語の記事を読めるのか、あたしは知らないけど、ともあれ、この元記事を見てみる必要があります。ちなみに、「ビジネスジャーナル」(内の「ギャンブルジャーナル」)の当該記事からMail Onlineへのリンクはないので、自分で探さなければなりません。面倒ですね。

個人的には、昨日はてブで2ちゃんまとめサイトのエントリが話題になっていたのを見た時点でそのMail Online(以下「メイル」)の記事も見ているのだけど、何がきっかけで見たのか……ニュース検索でもしたのかもしれないし、誰かがリンクしてくれてたのをどこかで見てクリックしたのかもしれない。ともあれ、メイルの元記事はこれ。

London in the frame to host 2020 Olympics as Japan bid probed over secret payments
By MATT LAWTON FOR THE DAILY MAIL
PUBLISHED: 21:46 GMT, 12 May 2016 | UPDATED: 00:24 GMT, 13 May 2016
http://www.dailymail.co.uk/sport/othersports/article-3587834/London-frame-host-2020-Olympics-Japan-bid-probed-secret-payments.html

これは、見出しだけ見れば、確かに、「『東京五輪中止、ロンドン開催』の可能性が本格浮上」と言えるのかもしれない(「本格」が、「本格派のレトルト・カレー」的な用語法であるにせよ)。まあ、メイルだからね。

メイルの見出し(だけ)を真に受けて「本格」とか言っちゃうのが問題なんだけど。

実際、記事を読めば、これが「本格浮上」でも何でもないということは即座にわかります。普通に英語を読める人ならば。

メイルのこの見出しは、英国人を「ええーっ!」と驚かせ、クリックさせるための見出し(いわゆる「釣り見出し」)で、実際にはLondonがin the frameになっているなどという事実はないです。そういう事実があると報じている記事ではありません。

と、メイルの記事へのリンクはしたので、あとは各自、お読みください。翻訳が必要な方は、別途ご依頼ください。

一応、お約束で、記事冒頭の3パラグラフを引用しておきます。
The head of the Istanbul 2020 Olympic bid that lost out to Tokyo has said that the 2020 Games may have to be staged in London if a French criminal investigation concludes that the Japanese made illegal payments to the company at the centre of the athletics corruption scandal.

On Thursday the French financial prosecutor confirmed that they have launched an inquiry into two payments from a Japanese bank account called ‘Tokyo 2020 Olympic Game Bid’ to the Singapore-based Black Tidings company already suspected by French financial investigators of laundering money extorted from drug cheats in athletics.

Sportsmail revealed that the two payments were made either side of the 2020 Games vote in Buenos Aires in 2013 into the company that has direct links to Papa Massata Diack, the son of former IAAF president Lamine Diack and someone who along with his father is also now the subject of a criminal investigation by the French authorities.


この話、キモは「東京に敗れたイスタンブールの招致委員会の人が、東京の混乱を受けて、『じゃあうちでやるのが妥当なんじゃないですかね』とは言ってない」っていうことです。

東京がグダグダだからといって、開催地を改めて選定し直すということはまずありえない、ということは、先日IOCの現役メンバーが語っていた通りです。現実的に、ロンドンのオリンピック・スタジアムはもうオリンピック競技には使えません

17日時点の私のはてブのコメント:
デイリー・メイルで、しかもwould, couldの仮定法じゃん……実現可能性はwouldレベルにもならない。ロンドンのオリンピック・スタジアムは、99年契約でサッカー用に改修済だ。 https://en.wikipedia.org/wiki/West_Ham_United_F.C.#Stadium

http://b.hatena.ne.jp/entry/287564157/comment/nofrills


18日の私のツイート:








一言付け加えておくと、はてブのような場で「ただしソースはデイリー・メイル」だけで「信頼すべきではない」とドヤ顔をしているコメントも、信頼すべきではありません。メイルは確かに飛ばしや釣りが普通に行なわれるし、ブロードシート(デイリー・テレグラフ、タイムズ、ガーディアン)に比べれば信頼性も格段に低いんだけど、「東スポ」レベルではありません(「東スポ」レベルなのはThe Sunとかthe Daily Starとか)。メイルが信頼性が低いのは、第一に、右翼の政治的信条に基づいた主張のために事実を切り取り、派手な言葉で煽り立てるプロパガンダ・メディアだからで、日本でいえば「産経新聞」が近いと思います。メイルについては当方ずいぶん書いてるので、ブログ内検索してください。

で、メイルも常に「信頼できないダメな報道」ばかりをしているわけではなく、ときどき、ものすごく質の高い調査報道があります。ベトナム戦争のときの米軍によるミ・ライ虐殺(ソンミ村の虐殺)についてなど。まあ、こんな記事でもサイドバーは「女優の美脚」だの「芸能人の新恋人」だのといったどうでもいい写真で埋め尽くされているのがメイル・クオリティ(日本の媒体だと時事通信のようなところでも女性の胸の谷間が強調されたような写真がどかどか表示されるが、メイルはそういうわけではないので、その点はある程度は安心です)。

あと、東京開催が決定したときのログを見てみたら、おもしろかった。

08sept2013-min.png

There was something wrong, indeed.

この日(2013年9月8日)のログから:










ひでぇ(笑)




※この記事は

2016年05月18日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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