
Photo By Chris 73 / Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0
一般的な「たけのこのアク抜き」の手順は、夜のうちに米ぬかや米のとぎ汁でたけのこを茹で、火を止めて朝まで放置する、といったもの。難しいことは何もないのだが、けっこう壮大系の台所仕事である。ここらあたりの店では、たけのこを買うとビニールの小袋に入れた米ぬかも無料でくれるけれど、私の場合は、あのアク抜きをしないと食べられないたけのこは、もっと気合の入った日に……と思ってるうちに季節が終わってしまうということが多い。だが今年は、最近話題になっている「大根おろしを使った筍のアク抜き」をやってみようと思っていた。これなら、「ほうれんそうを茹でてアク抜き」くらいの感覚でできそうじゃん? (そうなのか?)
筍のアク抜きは大根おろしで
2015/5/11 05:00:09(食育通信 online)
http://magazine.shokuikuclub.jp/kitchen/20150511_050009/
……今日は新しい筍のあく抜き方法を試してみました。西麻布の日本料理店、分とく山の野崎料理長が考案したとされる「大根おろしを使ってあくを抜く」という方法です。
この方法は筍を長時間茹でないため、旨味と風味の流出が極端に少ないのが特徴。
……と紹介されている手順は、シンプルなものだ(放置時間が入るので本当に忙しいときには「夜の間に茹でて一晩置く」ほうが合理的かもしれないが)。ちなみに「分とく山(わけとくやま)の野崎料理長」はNHKの「きょうの料理」などに出ておられるとのことで、「大根おろしでたけのこのアクを抜く」というのはここ何年か、テレビで話題になっているという。
必要なのは、大根(1本なくても、スーパーで半分に切って売ってるサイズで足りるはず)、水、塩。道具は、つけておくためのボウル(か何かの大きめの容器)と包丁、まな板、鍋。
1. 大根をおろして絞る。
ここで必要なのが「大根おろしの絞り汁200cc」なのだが、大根はどのくらいおろせばいいのかがレシピには書かれていない。ヤマカンで、特に細身でも太めでもない、よくある青首大根の尻尾のほう(少し細くなりつつある方)を20センチくらいごーっとおろして(「食育通信」さんのページにあるように「さらしを使う」という丁寧なことはせずに)単にぎゅーっと絞ってみたら、200ccは余裕で取れた。もう少し短めでもよかっただろう。
なお、汁を絞ったあと、「おから」状態になった大根は、手でほぐして、ゆかりごはんの素といりゴマを投入してタッパーに入れて冷蔵庫へ。今すぐ食べればいいのだが、明日のお昼にでも、細めのおうどんを茹でて、えのきたけやしめじを炒めて、レタス刻んで、これを乗っけてめんつゆとポン酢と海苔……にでもしたらどうだろうか。
2. 大根のおろし汁と等量の水を合わせる。
さらしを使って絞っていないので、大根の繊維質がぷかぷか浮かんでいる状態の大根おろし汁を、茶漉しでこしてボウルに入れ、等量(200cc)の水と合わせる。塩小さじ1杯弱を加える。
3. たけのこの皮を剥いて切る。
皮の剥き方などは上記の「食育通信」さんのページにはないので、Cookpadのこちらさんのレシピなどを参考に。あと、たけのこの皮は、もふもふした繊維がついてる部分を全部取るのが基本だけどどこまで剥いたらいいのかがわからなくなって途中で不安になったりする(春野菜あるある)。切るのは、「食育通信」さんのページの写真を見ると8等分かな、というところなのでそうしたが、この段階であまり小さく切っておこうとすると、穂先のほうがばらばらの破片になってしまう(失敗した)。4等分でもいいかもしれない。
で、この工程で、手が猛烈にかゆくなる人がいると思う。サトイモの皮むきやヤマイモのすりおろしで手がかゆくなる人は、タケノコでもかゆくなる。たくさん含まれているシュウ酸のせいだ。これは、かゆいと感じたときに、たっぷり目の食塩を手にもみこむようにして水で洗えばすぐにおさまるが、作業前に濃い目の酢水に手をつけておくという方法もあると聞く(私は塩で洗えばおさまるので、そこまではやったことはない)。
4. 2の「おろし汁+水+塩」に、3のたけのこをつける。
分量の液体でたけのこが完全につかるようにして、1〜2時間放置する、とあるので、2時間ほど放置した。
「食育通信」さんの記事によれば、鮮度がよければ、大根おろし汁につけて放置しただけでもアクは抜けるので、そのまま生食もできるというが、「静岡産」の表示があったタケノコが東京都内のスーパーに並ぶころにはそのような鮮度は失われているだろう。汁から引き上げるときに剥がれ落ちた、穂先の方の皮のかけらをそのまま食べてみたが、アクを感じないのはそのかけらが薄くて小さいからに違いない。ロー・フードやってる人ならここで迷わず生食するのだろうが、私はおとなしく次の工程に進む。
5. さっと茹でる。
鍋にお湯を沸かして、放置の済んだたけのこを1〜2分、さっと茹でる。「食育通信」さんの記事によれば、「炊き込みごはんにつかうなら下茹でなしで直接炊きこんでしまってください」との由。また、下茹でなしでお酒と出汁で直煮するのもよく、さらにこの記事で写真入りで解説されている「ゴマ油で焼いて、酒をかけ、甘辛たれを絡める」というレシピも試してみたすぎる。
一方、テレビで見たレシピを自分で作ってみたという方のこのCookpadの説明によると、「水で一回洗い流し、2、3分茹で」るという。
いずれにせよ、2分茹でるくらいの感じでよさそうなので、そうしてみた。1分半ほど経過したところで、「すくわなきゃ」と思うくらいにアクの泡が出てきたのでオタマ持ってきてすくって、キッチンタイマーが2分をお知らせしたタイミングでざるに上げて、アク抜き終了。
切るのに失敗して壊れかけた穂先のほうのをそのまま口に放り込んでみたが、ウマー。2, 3度噛むと、しゃきしゃきした歯ごたえのなかからふわーっと口の中に甘みと旨みと風味が広がり、栄養のありそうな味がする(例えば枝豆って「栄養がありそうな味」がしますよね、あの系統)。
予定では「土佐煮」にするつもりだったんだけど、そのままお皿に盛って岩塩を振り、さっきの「大根おろしの『おから』withゆかり」を脇に添え、カスカスの大根にはしょうゆを2滴ほどたらしてみた。あくまで「下茹でをしただけのもの」なので、えぐみはけっこう残ってるけど(なので「ちょっと無理」という人もいるだろうし、「まずい」と思う人もいるはず)、たけのこが好きな人なら「美味い」という味のはず。これは「うちの台所でアク抜きをした」からこそ食べられる味で、それも旧来のように「米糠で茹でて一晩放置」というやり方では味わえないほかほか具合。
6. 作りたい料理を作る。
あとは何でも好きなように料理すればいいと思う。
http://cookpad.com/search/%E3%81%9F%E3%81%91%E3%81%AE%E3%81%93
この「焼きたけのこ」、簡単で目先変わってておいしそう。ブラウンえのきを隣に置いて焼いて、大根おろし(さっきのカスカスのじゃなくて、新たにおろしたみずみずしいもの)を添えたら、栄養がありそうな味のする理想的な酒のアテになると思う。
それと、村井理子さんの「ぎゅうぎゅう焼き」の流儀でオーブン調理(オーブンがない場合はフタつきフライパン、スキレットで可能)をすると、さらに旨みが凝縮されるのでは……。
![]() | 村井さんちのぎゅうぎゅう焼き おいしい簡単オーブン料理 (シュシュアリスブックス) 村井 理子 KADOKAWA/角川マガジンズ 2015-12-04 by G-Tools |
7. 使い切れなかった分の保存
たけのこ1本分くらいなら、土佐煮にせよ、たけのこご飯にせよ、一度の調理で使い切ってしまうと思うが、「今日は土佐煮、明日はペペロンチーノ」というようにしたければ、保存もできる。下茹で前なら、大根おろしの絞り汁につけて冷蔵庫へ、下茹で後ならふつうに水につけて冷蔵庫へ。検索で出てきたAll aboutの記事によると:
大根おろし水に漬けたままなら、生のままで1日冷蔵庫で保存できます。それ以上保存したい場合はゆでたものを水と一緒にポリ袋かタッパーに入れて冷蔵庫で保存しましょう。2日に1度水を替えてあげれば、1週間保存が可能です。
http://allabout.co.jp/gm/gc/463301/
あと、ほんの少しだけ味付けして保存性を高めて冷凍するという方法もあるとのこと。
※たけのこのアク抜きのメカニズム
承前のAll aboutの記事によると:
重曹:アルカリ性の重曹で、えぐみ成分を中和させてアク抜き。
米ぬか:米ぬかに含まれるカルシウムがえぐみ成分を吸着してアク抜き。米ぬかに含まれるアミノ酸と脂肪がたけのこの繊維を柔らかくする。
大根おろし:アルカリ性の大根おろしがえぐみ成分を中和させてアク抜き。さらに大根に含まれる消化酵素がえぐみ成分を分解。酵素は熱に弱いので、常温でのアク抜きが必須。
なるほど、大根の消化酵素(焼き魚に大根を添えるのもこの理由)。。。っていう話になると例の「酵素ダイエット」とかいうわけのわからない方向に接続しそうでいやだなあ……(´・_・`)
(最近、こういう「世間では流行っているが、自分は無視しているトンデモに、勝手に接続されそう」な雰囲気が、ものすごく嫌。)
※この記事は
2016年04月29日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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