「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2016年04月06日

【パナマ文書】2.6TB分もの文書は、どのようにして今のように報道されるに至ったか。

租税回避地(タックス・ヘイヴン)のパナマにある法律事務所が、何十万件というペーパーカンパニーを関与させ、何百人という世界各国の政治トップや国家元首、要職にある政治家や公務員、ほか芸能・スポーツ分野の著名人(3日目の今日は英ガーディアンが英国の芸能人などについて報じている)などの蓄財(本国の税務当局に申告しない財産)をおこなっていたことを示す大量の(2.6テラバイト分の)文書が暴露された件、いったい誰がどのようにしてそんな大量の文書を……という点について、当の法律事務所からの発言があった。

Panama Papers: Leak firm Mossack Fonseca says it is 'victim of hack'
http://www.bbc.com/news/world-latin-america-35975503

A partner at Mossack Fonseca, the Panamanian law firm at the centre of a huge leak of confidential financial data, says it was the victim of a hack.

Ramon Fonseca said the leak was not an "inside job" - the company had been hacked by servers based abroad.

It had filed a complaint with the Panamanian attorney general's office.


つまり、「モサック・フォンセカ法律事務所」の設立者の一方であるフォンセカ氏が、今回のリークは「内部からのもの」ではなく、国外のサーバーからハッキングされていたと述べた。同事務所は既に、パナマの司法当局に届出をしている。

届け出ているということは、何らかの証拠が残っていたのだろう。この点は、今後パナマの当局が動くことになると思われるが、その結論が出るまでは、何を詮索しても意味はなかろう。ただ、この時点で単にニュースを読んでるだけのうちらにも関係するのは、この「リーク」は「内部告発」とは言えないかもしれない(というか、当の事務所は「内部告発ではなく、外部からの侵入だ」と述べている)ということだ。

ともあれ、これらの2.6TBもの文書を誰がどのようにして持ち出したかは、今は単に「わからない」としかいえないのだが、それがどのようにして今のように報道されるに至ったかは、英語圏ではかなりたっぷり説明されている(日本語圏でも、パートナー・メディアである共同通信と朝日新聞で何か書かれているかもしれないが、私は単に未確認)。自分が2,3見たなかでわかりやすかったMashableの記事:
400 reporters kept the Panama Papers secret for a year. Here's how they pulled it off.
http://mashable.com/2016/04/04/panama-papers-media/


今回の「パナマ文書 #PanamaPapers」の報道は、全世界で100を超える報道機関の連携作業となった。関わったジャーナリストは約400人(それだけの人数が関係してて、このプロジェクトのことが「解禁日」まで外部に出なかったんだからすごい)。全体を仕切ったICIJ (the International Consortium of Investigative Journalists) が「勝手のわからない外国のことは、その地の報道機関・ジャーナリストに任せよう」という方針でこの「特大リーク」に臨んだのだという。

なお、ICIJはこれまでにも「隠し資産」関連の大型リークを何件か手がけている。Swiss LeaksやLuxemburg Leaks, Offshore Leaksと呼ばれたプロジェクトだ(後述)。2010年のWikileaksの華々しい活動以降、うちら末端のニュースの受け手にも明確に「見える」ようになった「リーク」の中には、何者かがガセネタをばらまいたケース(例えば、昨年末のAnonymousのOpKKKを騙った、無関係の人名リストの公表……あれは誰がやったんだろうなあ)や、公表後にいろいろあったのか、元の「リークされた情報」が閲覧できなくなってしまったケース(ネオナチ集団の会員名簿とされるもののリークなど)もあるが、ICIJのこれまでの大型リークは、ICIJのサイトで問題なく閲覧できるようになっている。下記URLからどうぞ。
https://www.icij.org/projects



今回のリーク主が最初に接触したのは、ICIJではなく、ドイツの「南ドイツ新聞 SZ」(ミュンヘン)だった。その経緯について、SZが作成してサイトに埋め込んでいる映像がある



接触時のやり取りとしてSZが伝えているのは、次のようなことだ(要約はされていると思う)。

リーク主「こんにちは、ジョン・ドウ(名無し)といいます。データを持っているんですが興味おありですか」

SZ「非常に興味あります」

リーク主「条件がいくつかあります。私の生命が危ないので。話をするのは暗号化されたファイルでのみとさせてください。実際に対面することは絶対にお断りします。何を記事にするかはお任せしますので」

SZ「なぜこんなことをなさるのでしょうか」

リーク主「これらの犯罪を公にしたいんです」


その接触があったのが2014年遅くで、接触を受けたのが Bastian Obermayer記者だったそうだ(オベルマイヤー記者は英語とドイツ語でTwitterで書いているので、興味がある方はフォローしてみては)。

It all started in late 2014 when a source that referred to itself as "John Doe" reached out to Bastian Obermayer, an investigative journalist for German newspaper Süddeutsche Zeitung.

http://mashable.com/2016/04/04/panama-papers-media/


今回、パートナーとなっているメディアのひとつ、ガーディアンは、この経緯について次のように説明している。
http://www.theguardian.com/news/2016/apr/03/what-you-need-to-know-about-the-panama-papers
The records were obtained from an anonymous source by the German newspaper Süddeutsche Zeitung, which shared them with the International Consortium of Investigative Journalists (ICIJ). The ICIJ then shared them with a large network of international partners, including the Guardian and the BBC.


「名無し」氏からドイツのSZにもたらされた大量の文書がICIJに渡り、ICIJが世界各国のパートナー・メディアにその文書を渡したという。

はっきりと述べられてはいないが、国別に分けたのではなかろうか。インドのボリウッド映画のスターの文書はインドのメディアに、南アの大統領関係の文書は南アのメディアに、というように。そしてそれから、各地の報道機関・ジャーナリストがその文書について詳細な調査を開始し、4月3日(日本では4日)の解禁日までに記事を準備していたのだろう。

このプロジェクトについて、Mashableが話を聞いているコロンビア大ジャーナリズム・スクールのシーラ・コーネル教授は、次のように述べている。

Sheila Coronel, a veteran investigative journalist and professor at the Columbia Journalism School, said the Panama Papers project has set a new bar for cooperation.

"I've never seen a collaboration of this nature in terms of the number of journalists and news organizations involved and in terms of the countries involved, and in terms of the independence and autonomy that was given to each of these entities to mine this very rich material to find stories that are important and relevant to their own audiences," Coronel said.

mashable.com/2016/04/04/panama-papers-media/


このほか、このMashableの記事はいろいろ細かく説明がなされているので、一読の価値はある。参加しなかったメディア(招かれなかったメディア)についても、アメリカを例に、次のように説明されている。
The project is also notable for which press outlets appear to have been excluded, particularly the largest news outlets in America: The New York Times, The Wall Street Journal and Washington Post, all of which do not appear to have worked on the papers and did follow-up stories.

The Intercept, the investigative journalism outfit started by Glenn Greenwald and Laura Poitras, who were instrumental in reporting on the leaks of Edward Snowden, also appears to not have been involved.

As for why those organizations aren't a part of the project, Walker said that openness to collaboration was essential to the project. Each partner was required to share any relevant or important discovery among all the other outlets, she added.

mashable.com/2016/04/04/panama-papers-media/


解禁日は、なぜか、解禁時刻が来る前に、エドワード・スノーデンがSZの記事の画像をツイートしていた。なぜなのかはほんとにわからない(ひょっとして説明されてるかもしれないが、私は見ていない)。その件、詳細は下記にて。



さて、今回の「パナマ文書」(パナマ・リークス)が暴いたのは、ざっくり言うと、租税回避地(タックス・ヘイヴン)としてのパナマを、外国の富豪が財産置き場として利用していることの詳細な実態だ。リークされた2.6 TBの文書は過去40年分とのことで、そんな「文書」が残されていたということ自体が驚きだと述べる人もTwitterにいた(私も驚いた)。

だが、そのような、タックス・ヘイヴンでの蓄財の実態についての文書が大量にリークされたことは、実際、前にもあった。それについて、昨日(5日)、Twitterでちょこっとメモったので、それを貼り付けておく。関心がおありのかたは、それぞれリンク先でご確認いただきたい。












これら過去の「リークス」の報道も、英語圏では非常に大きく取り上げられていた。特に「スイス・リークス」(HSBCスイスのやっていることの暴露)は、リーク主(内部告発者。後に起訴され有罪となっているが、米NSAによる通信監視の実態の暴露を行なったエドワード・スノーデンとある意味同じような背景を有している)のこともかなり広く伝えられていた。
https://en.wikipedia.org/wiki/Herv%C3%A9_Falciani

スノーデンについての下記の本を書いたルーク・ハーディング(ガーディアン)は、今回、「パナマ文書」の報道チームの一員として記事を書いて書いて書きまくっている。Twitterもフォローしているとたぶんおもしろい。

スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実
ルーク・ハーディング Luke Harding 三木俊哉

暴露:スノーデンが私に託したファイル

by G-Tools





※この記事は

2016年04月06日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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