いずれにせよ、「週末の夜」のユルい時間の市民生活が標的とされた2015年11月13日のパリとは逆に、2016年3月22日のブリュッセルでは「平日の朝の通勤時間帯」が標的とされた。空港での爆発は朝8時ごろ。空港には遠距離便を使う人ももちろん大勢いただろうが、近隣国への出張に向かうビジネスピープルも大勢いただろう。爆破が行なわれたのは遠距離便(シェンゲン圏外行き)のターミナルだったが、「空港内で爆発があり、離着陸はすべてストップ、全員退避」ということが起きたときに「自分(のいる場所)も標的にされているのではないか」と思わないでいることは難しいだろう。続いて朝9時ごろに爆破された地下鉄は、3両編成の真ん中の車両が駅で停車中に爆破されたそうだが、その駅(マールベーク駅)はEU(欧州連合)の政策執行機関であるEC(欧州委員会)の建物の最寄り駅で、業務に入る時間帯で人の動きが多いころを狙っている(時期的にも、どうしても地下鉄サリン事件を思い出さずにはいられない)。
空港での爆発の様子を、毎日新聞が次のように伝えている(ブリュッセル賀有勇記者)。
「2度目の大きな爆発で天井が崩落した。あちこちが血だらけになり、けが人が倒れ、荷物が散乱した」。爆発10分前にスイス・ジュネーブからブリュッセル国際空港に到着したという男性は、仏テレビ局に爆発直後の様子を語った。爆発があった出発ロビーには、爆風ではがれ落ちた天井材や窓ガラスが散乱。床にはけが人から流れる血と、爆発で破損した配管から出た水が混ざっていたという。
……報道によると、1回目の爆発は、搭乗手続き客で混み合うアメリカン航空のカウンター近くで起きた。空港職員の男性は英BBCに「1度目の爆発の後、皆が同じ方向に向けて走って逃げる途中でまた爆発があった」と証言。2度目の爆発は最初の爆発現場から離れたスターバックスコーヒーの近くで起きたという。現場に居合わせた英スカイニュースの記者は「すさまじい音がして、建物が揺れるのを感じ、煙と粉じんがわき上がった」と話した。
ベルギー同時テロ 「戦場のよう」通勤時間帯の惨事
http://mainichi.jp/articles/20160323/k00/00m/030/068000c
http://archive.is/XWoam
2度目の爆発で、このスタバの店員さんが1人軽傷を負ったとスターバックスがステートメントで述べている。さらに、当面の間、ベルギー国内の店舗はすべて閉鎖するとも。
Starbucks Statement on Attack in Brussels, Belgium https://t.co/PRbwaCbU8j #Brussels pic.twitter.com/JbHD9X2ELN
— Starbucks News (@Starbucksnews) March 22, 2016
「恐怖 terror」による支配が、……と書いて、どういう言葉を続ければよいのかわからない。「勝利した」? いや、さすがにそうじゃないだろう。「強まった」? 「固められた」? ……というより「深まった」か。
それでも、「恐怖 (terror) には屈さない」と言うことはできる。《現実》がどうであれ、そのように言葉にすることで(知ったような顔をして「《現実》を見れば」などと言わずに)、人は自分の中の「人間性 humanity」を保ち続けることができる。「恐怖 (terror) には屈さない」と言い続けなければならない。
もはやそのような言葉が無力であるばかりか、白々しく響くしかないという地域(例えばイエメン、例えばシリア、例えば南スーダン、例えば、例えば、例えば……)があることを知りながらそうしていることは、見かけほど簡単なことではない。それでも。
ベルギー国内では、ツイッターなどインターネット上でも旅行者らへの支援申し出が相次ぐ。テロ直後にツイッターには「助けます」「空き部屋あります」「ドアは開いています」というハッシュタグが付けられたアカウントが、次々と開設された。
空港閉鎖で足止めされた旅行者のため、自宅の空き部屋提供や、移動に困っている人たちのために自家用車での送迎を申し出るなど、多くの市民が協力に名乗りを上げた。
ベルギー同時テロ 連帯のベルギー旗 「彼らは銃を、我々は花を持っている」
http://mainichi.jp/articles/20160323/dde/041/030/011000c
http://archive.is/ANtDq
(ただしこの記事、1ヶ所とても気になるところがある。「バーレーンの男性」は、何を「テロ」と呼んでいるんでしょうか、という点。バーレーンは、2011年に政府に対する非武装の平和的抗議行動が「テロ」と呼ばれ、武力弾圧され、今もまだその弾圧が続いている)
Bourse Sq in #Brussels has become a giant black board for people' messages of solidarity https://t.co/AuZw81WC7k pic.twitter.com/CCsxj8P25V
— Guardian news (@guardiannews) March 22, 2016
People in Brussels are writing messages of solidarity by the central stock exchange in the aftermath of the attacks. pic.twitter.com/jRrInq3opg
— AJ+ (@ajplus) March 22, 2016
If you mistake Islam for terrorism, you play into the hands of terrorists.It's humanity that matters #StopIgnorance pic.twitter.com/WwhG8hRakt
— Allie Fox (@alliefoxmusic) March 22, 2016
My hero of the week, airport worker Alphonse Youla who carried 7 wounded victims to safety after #BrusselsAttacks ❤️ pic.twitter.com/X6qISA5nRH
— Kon Karapanagiotidis (@Kon__K) March 22, 2016
@Kon__K #hero #BrusselsAttacks #Brussels pic.twitter.com/XuYDCQwbYR
— Kon Karapanagiotidis (@Kon__K) March 22, 2016
フランス語とオランダ語(フラマン語)での「私は〜」の標語を掲げた人々と、無数のろうそく。その下の地面にはもう無数の言葉がチョークで書き付けられている。ベルギーの旗と並んで、アマジグの旗もある。その写真を、アイリッシュ・ニュース(アイリッシュ・タイムズではない)がフィードしている。
On our #liveblog: Vigil for #Brussels terrors victims is a colourful canvas of defiancehttps://t.co/56KqEvh1k3 pic.twitter.com/BRKiWbZUum
— The Irish News (@irish_news) March 22, 2016
One group broke into Edith Piaf's "Hymne a L'amour" (Hymn to Love) as onlookers applauded.
http://www.irishnews.com/liveblog/
http://archive.is/1ZCMT
イスイス団は、支持者が「攻撃の成功」に喜んでソーシャル・ネットで盛り上がったあと、Al-Amaq(イスイス団の通信社)がブリュッセルのことを英語で伝え(当初アラビア語なし)、それから1時間ほどして、いつもの青系の地のサイトで犯行声明が出された。犯行声明は最初にアラビア語とフランス語で出され、続いてロシア語、ボスニア語、英語、トルコ語、ドイツ語版が出された。「まとめ」の12〜13ページに、CT(カウンター・テラー)専門家のツイートを記録してある。
http://matome.naver.jp/odai/2145864061724916901?&page=12
http://matome.naver.jp/odai/2145864061724916901?&page=13
ベルギーだから、オランダ語(フラマン語)もあるかもしれないが、私は未確認。
読みたい人はご自身で読んでください。私は最初に出たフランス語版を見て頭が痛くなって(半分は「言語の壁」のせい)、時間を置いてから出た英語版を読んで、こんなん読まんでもかまわん、と結論しました。犯行の細部が、実際に起きたことと一致しているので、サン・バーナディーノ(米国)での職場の集いの銃撃事件のようなケースとは違い、イスイス団の大元が把握してた攻撃作戦だということはわかるし、重要なことだけど。
※この記事は
2016年03月23日
にアップロードしました。
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