「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2016年03月23日

ベルギーの首都にしてEUの中枢、ブリュッセルがテロリストの爆弾攻撃を受けた件でのネット上の誤情報についてのメモ

22日(火)、現地で朝のラッシュの時間帯に、ベルギーの首都であり欧州連合(EU)の中枢であるブリュッセルで、相次いで爆弾攻撃が行なわれ、多くの人命が失われた。実に言葉もない。また、このため、水曜日の出張が中止になったというドイツ在住の方の報告もあり、欧州全体に影響は広まっていると思われる。

最初の爆発は現地朝8時ごろ、ブリュッセル国際空港(ザベンテム空港という呼び名もあり、ハッシュタグは #Zaventem)のターミナル内、出発ロビーの中で2度起きた。時間が経過してからはっきりしたのだが、この爆発は荷物の爆発と自爆で、さらにあとで空港内からは不発だった爆発物とか未使用の自爆ベルトが見つかっている。この爆破攻撃でブリュッセル着を予定していた飛行機はすべて目的地変更となり、出発便は出発見合わせとなった。

Twitterでそのニュースが一巡して、英語圏(英国)の「反EU(EU離脱推進派)」のよくわからない演説(欧州のイスラム過激派が組織化されたルーツは英国にあるんで、今EUを離脱したところで、英国にイスラム過激派の拠点があることは変わらないし……ほんと、あの人たちはこういうときに「反EU」の演説をして、何をしたいんですかね)なんかが目立ってきたころ、現地の朝9時ごろに、今度は地下鉄のMaalbeek(マルベーク)駅で爆発が起きた。これは3両編成の列車が停車中に真ん中の車両で爆発が起きたとのことで、自爆ではないという。

2ヶ所の爆弾攻撃で30人以上が殺され、100人以上が負傷した。負傷の多くは爆発物(ボム)に仕込まれていたネイルによるものと報告されている。人で込み合っている空港や地下鉄にネイルボムというのは殺す気満々すぎるが、あの連中ならデフォであろう。

そう、「あの連中」だ。犯行声明は比較的早く出た。イスイス団である。

そこらへん、Twitterでぐわっとかき集めておいた。ニュース系のフィードから、カウンター・テロ方面専門家の分析、「連帯」を表明する個人の言葉、あるいは「なぜ欧州でこういうことがあるとこんな騒ぎになるのか」という不満の声など。

ベルギー、ブリュッセルの空港と地下鉄駅で爆発、死傷者多数(2016年3月22日)
http://matome.naver.jp/odai/2145864061724916901


フランスでは、エッフェル塔がベルギーのトリコロールの色(黒、黄、赤)にライトアップされている。2015年11月13日のパリ攻撃の実行グループの唯一の生き残り、サラ・アブデスラムがブリュッセルで逮捕されたのが18日(金)だが、そのブリュッセルで、中3日でこんな大掛かりな攻撃が起きてしまった。Sinisterすぎて、こちらの感情が消えてしまうほどだ。




……と、欧州の中枢の都市で、1時間の間隔で2度の爆弾攻撃が行なわれ、数十人単位で死傷者が出ているというひどいニュースは世界中の耳目を集め、ネット上にはいろんな情報が出たのだが、その中には「誤情報」や「デマ」も含まれていた。

このようなときに必ず発生する「過剰反応」や「情報の錯綜」は、特に記録しておく必要性を感じなかったが(あまり見かけなかったということもある。2015年のパリや、その前のオタワのときなどは、「同時多発だ」という心理から実際には攻撃されていない場所についてまで「攻撃が行なわれている」という情報だけが流れることがよくあったが、今回はそれは見なかった。オランダ語という言語の壁かもしれない)、意図的なもの(つまり「デマ」)と思われるものについては、「まとめ」の(更新履歴を除いて)最後のセクションに記録しておいた。



善意の誰かが、たまたまFBやYTで見た古い映像をうっかりと日付をつけずに今日流してしまったり、今の映像と勘違いして流したりする、ということもよくあるのだが、今回のケースはそれとは違っていた。

22316fkvid.png上記の例は、誰かがご丁寧に、2011年1月のロシア、モスクワの空港での爆破のCCTV(監視カメラ)の映像の画面の左下に、今日の日付を入れていた(添付の図を参照)。これをTwitterなどで「拡散」している人たちは、FBなどで見て「これは大変だ」と思っただけの「善意」の人たちだろう。「善意」でないのは、ニセの日付を書き加えてネットのどこかにこの映像をアップした者だ。

誰がどのような意図でそんなことをしたのかはわからないが、今回、ロシアが今までにない絡み方をしてきているので(「ロシア情報機関が、ベルギー当局に、ベラルーシ人ISISテロリストが攻撃を計画していると伝えた」など。今日の爆破後のロシアの報道機関のはしゃぎっぷりも何かすごいし、ロシアの国会議員はまたひどい発言をしているとかいうことで……ブリュッセルといえばNATO本部もあるから「メシウマ」してるんじゃないかとかんぐりたくなるレベル……)、ロシアでの事件の映像がこういうふうに使われているのは、なんだかなあとやはりどうしても思ってしまう。

と、この件についてオンライン・メディアのMashableがよい調査&まとめをしているので、それも参照しておこう。

These CCTV videos people are sharing are NOT from the Brussels attacks
http://mashable.com/2016/03/22/cctv-video-brussels-attacks/#XqSDI5FcHGqM


記事曰く、今回流されている「ニセ」の映像は、上述の2011年1月のモスクワでの攻撃のほか、同年4月のベラルーシの首都ミンスクでの攻撃の映像がある。

そして、モスクワの映像が「拡散」する元となったのが@OnlineMagazinというTwitterアカウントだとMashableは述べている。

The false reports started when a Twitter account for a magazine in Lisbon, Portugal, tweeted the videos, which Storyful identified as a "key" link in the chain of misinformation.

🆘‼Unconfirmed: CCTV Video of the explosion in the #Malbeek subway from #Brussels. pic.twitter.com/OjWVRyNHyk

− Onlinemagazin (@OnlineMagazin) March 22, 2016


Mashable記事がここで参照している@OnlineMagazinのツイートは既に削除されているが、一応冒頭に「アンコンファームド」と書いている。事件の起きているブリュッセルが拠点というわけでもなく、「アンコンファームド」な話を流すようなアカウントは、プロの報道の人たちはスルーするはずだ。

しかし、ここでCNNがやらかしたんだという話。CNNがテレビで紹介したビデオ(地下鉄のもので、空港の「ニセのビデオ」ではない)のソースが、この@OnlineMagazinだということで、ネット上の情報を検証する専門家集団、Storyfulのデイヴィッド・クリンチさんが下記のようにツッコミを入れている。




この@OnlineMagazinについては、現地ベルギーのツイッターユーザーでフラマン語/オランダ語話者のポールさんも、別の写真・映像について(だと思うが、デイヴィッド・クリンチの言ってる写真についてかもしれない)、「マルベーク駅だといって流しているその写真は、マルベーク駅ではない」と指摘している。



というわけで@OnlineMagazinは変なアカウントなので、ちょっと気になって、見てみた。

個人的に、「ポルトガルのメディア」にはあまりよい印象はない。英国のリッチな家族がリゾート旅行にいったときに娘が行方不明になったという事件に関して、「両親が実は犯人だ」という無根拠な説を繰り返し流したのは、まずはポルトガルのメディアだったし……。ともあれ。

https://twitter.com/OnlineMagazin
プロフ欄には次のようにある。
Viele interessante Themen im Onlinemagazin. Impressum: http://www.artikelmagazin.de/impressum/

Lisbon, Portugal
artikelmagazin.de


ポルトガル拠点で、ドイツ語のメディアなのか。よくわからん。

Twitterの画面はこんなふうで、ドイツ語のメディアなのにツイートは英語だ。

olmtw.png


一方、媒体そのもののページを見るとドイツ語である。



何がしたいのか、よくわからない (´・_・`)

ともあれ、この「オンライン・メディア」のアカウントが、いかにも自分たちでネタを取ったかのようにツイートしていることがある。タイムスタンプは23 March, 01:17だ。



この内容(空港の監視カメラの映像に記録されている攻撃者が、左手だけ手袋をしているのは、起爆装置のリモコンを隠し持っているからではないかという推測)は、しかし、この「オンライン・メディア」が発見したことではなく、ネット上のどっかから拾ってきたものだろう。そして、ソースを示さずに、あたかも自分たちの発言であるかのようにツイートしているのではないか。

「手袋」に注目しているツイートは、この「オンライン・メディア」の上記のツイートのときにはもうあった。下記はCT専門家のマイケル・ホロヴィッツさんのツイート。




@OnlineMagazinというアカウントは、人々の関心が高そうなトピックで、Twitter上の情報を拾い集めて、元情報のクレジットを示さずに自分たちのアカウントから流しているだけだろう。Like (Fav) の件数が異様に多いのも、Likeを使って「ネタ集め」をして、情報をパクって自分たちのものとして流しているだけではないか……とかんぐりたくなるが、見てみると、自分へのリプライを片っ端からFavしてるようだ。



……にしても、フォロワー数29.9kかぁ……。

日本語圏の「Copy Writing」とかいうアカウントと同様かな……とも思う。

いずれにせよ、パクられたらいやなので、ブロックはしておいた。うっかりリプライしたりすることのないように気をつけておかないと……。

ブリュッセルではまだ事件の実行犯が捕まっていない。もうこんなことが繰り返されてはならない、と思うのだが、「〜てはならない must not be repeated」は単に自分の感情の発露でしかなく、私の中のリアリストはそれがただの言葉に過ぎないことを知っている。

苦しい。

ベルギー、ブリュッセルの空港と地下鉄駅で爆発、死傷者多数(2016年3月22日)
http://matome.naver.jp/odai/2145864061724916901


※この記事は

2016年03月23日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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