そういう「気軽なネタ」は、言ってる側は「無害な世間話」と扱っているかもしれないが、そこで「ネタ」にされている側は、内心穏やかではないかもしれないし、うんざりしているかもしれない。そういう事例について聞かれたので、発端を改めて調べてみた。
「アーロン・ラムジーがゴールを決めると……」(都市伝説じみた「ネタ」)
http://matome.naver.jp/odai/2145733695168210901
アーロン・ラムジーというのはこの人(サッカーに興味がない人は、がっさりと「有名なサッカー選手」と思っておいていただければと):
ラムジーはアーセナルのプレイヤーで、この「都市伝説めいたネタ」のそもそもの発端はアーセナル以外のところのサポーターから出てきているのではないかと思うが(確証は取れなかった)、この「ネタ」はアーセナル・サポ界隈にも入ってきている。
発端は2011年で、消えそうになりながらも復活し……という経緯を経て、なんと5年も続いている「ネタ」で、端的にいえば「しつこい」(ラムジー本人は見ないようにしているのではないかと思うが)。
かつては「人の噂も75日」で、人々の関心はそう長くは続かないと思っててよかったのだが、ネットは、記録されたらその記録は基本的にずっと残る。それら「昔の記録」は普段は目に見えないところにしまわれているが、「そういえば昔、こんなことがあったよね」と発掘してくる人が少数いれば、今は、ソーシャル・ネットで爆発的に流行る(バイラルする)こともある。そこに「クリック稼ぎ」が大好きなメディアが乗っかってくるので、何も中身はないのに、発言の数だけが増えるという「バブル」的状態になる。
Twitterなどソーシャル・ネットで常に情報が流れてくるようになって、人間のアテンション・スパンは短くなったと言われるが(私も自分自身について、それを実感している)、個人が一度に注ぐアテンションのスパンは短くなっても、いつでも誰かが「発掘」してくる場合は、ある出来事に注がれるアテンションのライフ(寿命)はそうではない。
個人的に、5日のゴールでTwitter上で人々が「ラムジーの呪いに気 を つ け ろ」的なことをきゃっきゃうふふわいわいと話しているのを見たときは、単に「またか」と思って、私も「ネタ」としてニヤニヤしながら「OBLにジョブズにカダちゃんにホイットニー」という並びを見ていたのだが、翌日、ナンシー・レーガンが死去したときに「ラ ム ジ ー の 呪 い だ」とかいうのを見たときには、「OBLだのジョブズだのとは知名度が全然違うじゃん」と(アーロン・ラムジーは25歳なのだが、彼の年齢のイギリス人がナンシー・レーガンが誰なのかわかるかどうか……私はとても疑わしいと思う)。
しかも、NAVERのページの最後に書いておいたのだが、ウィキペディア(英語版)を見たら、正直「あの、どなたですか?」という「セレブ」の名前まで書き込まれていて(インドの俳優、インドネシアのミュージシャン……それぞれ、大きな実績のある方だろうとは思うけど、「世界的著名人」ではない)、ちょっと悪ふざけが過ぎてきているのではないかと感じている。
Googleでラムジーの名前検索すると、こんなんだ。

このトップのミラーの記事に、WOLでのインタビューが抜粋されている。
http://www.mirror.co.uk/sport/row-zed/internet-jokers-claim-the-curse-7508778
Despite the lighthearted nature of this nonsense, when "the curse of Ramsey" was brought up to the Welshman during an interview in June last year, he made it clear he doesn't find it amusing...Interviewer: I was wondering if you were aware - I guess you were - that a couple of years ago whenever you seemed to score someone famous seemed to die, and a big thing was made of it for a while. Were you aware of that at the time?
Ramsey: (unamused) A few people did make me aware, but I didn’t score as many goals then. I’ve scored quite a few goals now where no-one had died, thank God...
Interviewer: So you’ve been able to put that one to bed.
Ramsey : Yeah... it was a silly rumour that I didn’t take any notice of.
Interviewer: (laughing) You didn’t find it amusing, in a bizarre sort of way?
Ramsey: No I didn’t really find it funny.
Alex Dimond, the journalist who asked Ramsey the question, took to Twitter to reveal the awkward exchange. ...
And here's a deleted scene from that Aaron Ramsey interview, when my ham-fisted attempt at 'banter' went wrong: pic.twitter.com/hU9A7LZDY8
— Alex Dimond (@alexdimond) June 29, 2015
で、こういう性質の話を「呪いだぁぁっ!」的におもしろがって記事にしている下品なメディアの筆頭が、右翼思想の中年女性がこぞって読んでいるデイリー・メイル(のウェブ版)であるということは、注目に値すると思う。
※この記事は
2016年03月08日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
【todays news from ukの最新記事】
- 英国での新型コロナワクチン認可と接種開始、そして誤情報・偽情報について。おまけに..
- 英ボリス・ジョンソン首相、集中治療室へ #新型コロナウイルス
- "Come together as a nation by staying ap..
- 欧州議会の議場で歌われたのは「別れの歌」ではない。「友情の歌」である―−Auld..
- 【訃報】テリー・ジョーンズ
- 英国の「二大政党制」の終わりは、「第三極の台頭」ではなく「一党優位政党制」を意味..
- ロンドン・ブリッジでまたテロ攻撃――テロリストとして有罪になっている人物が、なぜ..
- 「ハロルド・ウィルソンは欧州について中立だった」という言説
- 欧州大陸から来たコンテナと、39人の中国人とされた人々と、アイルランドのトラック..
- 英国で学位を取得した人の残留許可期間が2年になる(テリーザ・メイ内相の「改革」で..