そのフランプトンが、28日朝(日本時間)、またニュースになっていた。今回は「北アイルランドのニュース」ではなく「英国のニュース」だった。マンチェスターで行なわれた試合でイングランドのボクサーを相手に判定勝ちして、WBAとIBFの統一王者(スーパー・バンタム級)になったという。試合についてのハッシュタグは、UKでも、また総選挙の開票が行なわれているアイルランド共和国でもTwitterのTrendsの上位に入っていた。
https://twitter.com/hashtag/FramptonQuigg?src=tren
ボクシングは階級だけでなく団体もいっぱいあって、私には全然わからないのだが、フランプトンはIBFのチャンピオン、対戦相手のスコット・クイッグはWBAのチャンピオンで、両者が対戦して統一王者を決定するという試合で、試合が行なわれたマンチェスターはクイッグの地元(ベリー Buryの人)。Twitterでさかのぼって見ると、「スロー・バーナーだな」とか「ペンキが乾くのを見ているようなもの」とか、「最後の3ラウンドは動きがあったが、チケット代の分も楽しめないような試合だ」とかいった評価が多いが、「この試合がつまらないなんて言ってる人は、ボクシングのことは何もわかってない」というボクシング系のアカウントもある。いずれにせよ、最終的には判定で、ジャッジ3人のうち2人がフランプトン、1人がクイッグということで、フランプトンが統一王者の座に輝いた。
http://www.bbc.com/sport/live/boxing/35639187
Belfast's Carl Frampton wins the WBA & IBF super-bantamweight world titles.https://t.co/dr6HMHCtem #FramptonQuigg pic.twitter.com/gp9SPzn2eg
— BBC Sport (@BBCSport) February 27, 2016
即座にベルファストがお祭り騒ぎである。
Congratulations to @RealCFrampton IFB & WBA super bantamweight world champion!! #FramptonQuigg pic.twitter.com/bdMApf4p8D
— Visit Belfast (@VisitBelfast) February 27, 2016
Well done @RealCFrampton #TheJackal #FramptonQuigg pic.twitter.com/FEPIkLSlfL
— Love Belfast ❤️ (@love_belfast) February 27, 2016
WELL DONE @RealCFrampton#MadeInNI
— MadeInNI™ (@MadeInNI) February 28, 2016
THE TRUE DOUBLE SUPER BANTAMWEIGHT CHAMPION OF THE WORLD #FramptonQuigg pic.twitter.com/eOAc4A2i3J
HE DID IT!!!👊
— Belfast Giants (@BelfastGiants) February 28, 2016
Congratulations @RealCFrampton - the WBA & IBF super-bantamweight world champ!!! #FramptonQuigg pic.twitter.com/LcqNJyR5Dk
. @RealCFrampton does it again! Come onnnnnn!! 👊 #FramptonQuigg #GAWA pic.twitter.com/1GXRCx1z1P
— Official Irish FA (@OfficialIrishFA) February 28, 2016
Congrats to @RealCFrampton on a fantastic victory #SUFTUM pic.twitter.com/tnvNcr4yH6
— Ulster Rugby (@UlsterRugby) February 27, 2016
Nice win by @RealCFrampton #FramptonQuigg pic.twitter.com/BFWIeOI58z
— Brian John Spencer (@brianjohnspencr) February 28, 2016
Yes!!!! Great win! @RealCFrampton @ClonesCyclone respect to both fighters. N, JMD & gL #FramptonQuigg #TheJackyl
— Snow Patrol (@SnowPatrolBand) February 28, 2016
Pure class @RealCFrampton @ClonesCyclone #FramptonQuigg pic.twitter.com/fma2HrJZwr
— Carál Ní Chuilín MLA (@CaralNiChuilin) February 28, 2016
The Belfast fans celebrating @RealCFrampton victory outside of the arena. #FramptonQuigg pic.twitter.com/hebrPS0tGG
— InstantBoxing.com (@InstantBoxing) February 28, 2016
Awesome Carl #Frampton defeats Scott #Quigg on split decision https://t.co/d5tXeZHKyc pic.twitter.com/LQ2DE4MfNt
— Belfast Telegraph (@BelTel) February 27, 2016
#boxing Carl Frampton is double world championhttps://t.co/oKtA19n526 pic.twitter.com/U6t6I8igUc
— Belfast News Letter (@News_Letter) February 28, 2016
#champ is now trending in #Belfast https://t.co/l4SSf6xOWi
— Trendsmap Belfast (@TrendsBelfast) February 28, 2016
Frampton felt like 'comfortable winner' https://t.co/iY2OiUbfUS
— BBC News NI (@BBCNewsNI) February 28, 2016
Look at this! Just look! Done us proud @RealCFrampton #inspiration pic.twitter.com/1eUnllCrVc
— Cllr Corr Johnston (@JulieACorr) February 28, 2016
Yessssss Carl... New unified champion #ThisIsntManchester #EverywhereWeGo
— Andy Allen (@AndyAllen88) February 27, 2016
@ClonesCyclone Well Done!! #PrideOfUlster pic.twitter.com/Y8uK50I6b5
— Emma Pengelly MLA (@little_pengelly) February 28, 2016
From Beechmount to The Bay; Belfast is buzzing!! @GuySpence well done @RealCFrampton 👍👍👊👊
— Niall Ó Donnghaile (@NiallSF) February 28, 2016
Delighted for our wee @RealCFrampton Another reason to be proud of Northern Ireland. #ProudofNI pic.twitter.com/O6jmF5LrYs
— Arlene Foster (@DUPleader) February 28, 2016
シン・フェインからUUP, PUPまで、政治家たちも「ベルファストのボクサー」の勝利を祝ってツイートしている。まさに「クロス・コミュニティ」の光景だ。「北アイルランドではみんながこの話をしている」とジャーナリストのディーン・マクローリンさんも報告している。
The one thing everyone's talking about in NI - #Frampton https://t.co/mQxBa3Op4b
— Dean McLaughlin (@Dean_Journalist) February 28, 2016
NIのリスト(本エントリの一番下に少しキャプチャを入れておく)を見ていると、同じ時間帯にアイルランド共和国の総選挙の結果を受けた反応などもあるので、やたらと「ばんざい」が多いという印象。全アイルランドの政党であるシン・フェインと、北アイルランドの政治オタ・選挙マニアのみなさんは、選挙で盛り上がっている。ジェリー・アダムズとマーティン・マクギネスは選挙にかかりっきりで、ボクシングのことはツイートしていない(してたら、さすがにおかしい)。
さて、そのカール・フランプトン。ベルファストの北部に位置する「タイガーズ・ベイ Tiger's Bay」という地域の出身である。この地域は、めちゃめちゃ濃いロイヤリストのエリアとして知られる。今はもう上書きされていて現存しないが、Peter Taylorの本の表紙にもなっている下記のロイヤリスト武装組織UVFのミューラルは、この地域にあった(写真は via Alarmy、撮影者はJoe Foxさんで、撮影日は27th March 2005)。
アイルランドでは、アマチュア・ボクシングは北も南もなく、「全アイルランド」でひとつである(ラグビーと同じ)。ウィキペディアに詳しく書いてあるが、地元タイガーズ・ベイのジムに所属してアマチュアとしてリングに立っていたころから、フランプトンは強かった。100試合以上に勝ち、負けたのはわずか8試合だった。そして「国代表」に選ばれるところまで来たのだが、そうなるとめんどくさくなるのが北アイルランド。ゴルフのグレーム・マクドネルやロリー・マキロイがワールドカップで「英国代表」になるのか「アイルランド代表」になるのかでややこしいことになるが、カール・フランプトンの場合は(リパブリカンの濃い地域と接する)ロイヤリストの濃い地域のど真ん中の子だ、めんどくささがハンパない。ウィキペディアには、「『英国のために(英国代表として)リングに立ってたほうが嬉しかったんじゃないか』と始終聞かれますが、答えは『ノー』ですよ。11歳とかそのくらいのときからずっとアイルランドのボクシングに面倒を見てもらってきたんで、アイルランドのために(アイルランド代表として)闘えるのはとても嬉しいことでした。アイルランド全域からも、UK本土からも大勢の人に応援してもらえていて、非常にありがたいことです」という本人の発言が、BBC記事をソースとして紹介されている。
そのフランプトンのお師匠さんが、アイルランド共和国モナハン州クローニス出身で、北アイルランドで活躍したボクサー、バリー・マクギガンである。「クローニス・サイクロン」と渾名された彼が活躍したのは1980年代、つまり「北アイルランド紛争」の真っ只中だったが、マクギガンは宗派対立のどちら側からも応援されていた。ウィキペディアには、2011年のガーディアン記事をソースとして、次のように書かれている。「影が深々とさしているところに、私の試合は明るい日差しのようなものだったんです。カトリックの側もプロテスタントの側も、『闘うことならマクギガンに任せておけばいい』と言ったものです。ボクシングの試合は娯楽でもありました。紛争のことを忘れて楽しめるひとときです」。マクギガンは「アイルランド」を象徴するようなものは身に着けなかったという。(あの時代はそれを身につけたらそれだけで大変なことになっていたはず。1987年に法律が撤廃される前は、アイリッシュ・トリコロールを掲げることは違法にもなりえた。)
「紛争」の時代、スポーツ界でそのように「あちら側もこちら側もない」存在だった人には、ジョージ・ベスト(サッカー)、ハリケーン・ヒギンズ(スヌーカー)などがいるが、あの狭いエリアで、スポーツまでもが「あちら側のスポーツ」、「こちら側のスポーツ」に分かれていたからこそ、彼らのような「ひとつにまとめるスーパースター」が輝かしい例外として目立っているし、語り継がれている。
そういう人を師匠に持ち、自身はごりごりのロイヤリストのエリアで育ったフランプトンは、「僕は伝説になりたい。アイルランドのスポーツ界に名を刻むような存在になりたい」と語っている。「バリー(・マクギガン)が世界タイトルをとったことは、30年経ってもまだ語られ続けている。僕も30年後に、そういう存在になっていたい」
“I want to be a legend,” Frampton said in 2015. “Honestly, that’s what I want to be, a legend in Irish sport. I think it’s coming up to 30 years since Barry won his world title in Loftus Road against Pedroza and people are still talking about it. I want to be like that 30 years from now - people are talking about my fights with guys like Chris Avalos and Kiko Martinez in the pubs all over Ireland. That’s what I intend to do...”
https://en.wikipedia.org/wiki/Carl_Frampton
そのようにレスペクトされまくりの師匠は、「カールは私のやったことをやっている。平和と和解へと導く役目で、北アイルランドの未来を現している」。現役時代、マクギガンはショーツに平和の象徴である鳩をつけていた(→この写真でどういうふうだったのか確認できます)。試合では国のアンセム(国歌……と言い切るのは、連合王国の場合は難しい)の演奏はせず、英国の国内タイトル戦にも出られるよう英国の市民権も取得して、プロテスタントの女性と結婚した。それは80年代当時、本当に大きな意味を持っていた。そして教え子のフランプトンも、ほぼ同じ道をとっている。プロテスタントの彼はカトリックの女性と結婚し、カトリックの側からもプロテスタントの側からも熱心なファンを大勢集めている。
Speaking to the BBC, McGuigan said "Carl is doing what I did. He's a beacon for peace and reconciliation and represents the future of Northern Ireland." ... As a fighter, McGuigan was known for wearing a Dove on his shorts, as a representation of peace. He also had no national anthem played at his fights, he took up dual Irish-British citizenship which allowed him to fight for British Domestic titles, and he married a Protestant woman, all of which had huge significance at the time. It is hard to not draw comparisons, with Frampton following down an almost identical path. He too has even married a Catholic woman despite being Protestant, and he too has a large following of die-hard fans from both Catholic and Protestant backgrounds, who attend his fights in their thousands and leave their differences at home for a night...
https://en.wikipedia.org/wiki/Carl_Frampton
カール・フランプトンがRTしているバリー・マクギガンの写真。「1984年、クローニス。共和国と北アイルランドの境にて」。(マクギガンの出身地のクローニスは、南北を隔てるボーダーの町である。)
1984: @ClonesCyclone on the border between Republic of and Northern Ireland, Clones pic.twitter.com/OGMevJDJGU
— Kevin Byrne (@KevByrneBox) February 9, 2016
それと、この並び。
「1980年代のシャンキル(プロテスタント、というかロイヤリストの地域)の後援会の写真です。試合、がんばってください」というキートン・モリスンさんのツイート。
@ClonesCyclone @RealCFrampton hi Barry,your supporters club from the Shankill in the 80's! Good luck to u and carl👍 pic.twitter.com/xsZlm5tANK
— keaton morrison (@keaton_morrison) February 23, 2016
「左から2番目はうちのおじいちゃんだ」という人。
@keaton_morrison @ClonesCyclone @RealCFrampton 2nd left is my Granda!!
— Cheryl80 (@80cheryl) February 26, 2016
この「シャンキルの後援会」の写真に、バリー・マクギガンは「皆さんからの応援は一生忘れられません。カール・フランプトンも同じような応援を、フォールズ(カトリック、リパブリカンのエリア)の方々から頂戴しています」とリプライ。
I will not forget the support I got from you guys, @RealCFrampton getting the same from the people from the falls. https://t.co/kUKJAsZQAv
— Barry McGuigan (@ClonesCyclone) February 23, 2016
カール・フランプトンは1987年生まれ。「シャンキルの後援会」の写真が撮影されたころは、まだ生まれていなかったかもしれない。
妻のクリスティーンさんのツイート(カールがRTしている)と、カールからのお返事。はい、ごちそうさま。
Happy valentines day everyone. I hope you're all getting to spend today with those you love the most 💕 👪 pic.twitter.com/UtlFoDg3Y6
— Christine Frampton (@XtineDorrian) February 14, 2016
Missing this one one Valentine's day 😚 pic.twitter.com/jwyQD80lZd
— Carl Frampton (@RealCFrampton) February 14, 2016
@RealCFrampton Happy birthday Daddy 👪can't wait to have some cake with you next week 🎂love you to the moon & back xx pic.twitter.com/jeWoAmPJVG
— Christine Frampton (@XtineDorrian) February 21, 2016
Decent bit of #FramptonQuigg artwork from my daughter Carla aged 5. Quigg looks a bit heavy 😂 pic.twitter.com/UZMzL9lu7U
— Carl Frampton (@RealCFrampton) February 21, 2016
ニュースサイトで見るカール・フランプトンは、よく、難病と闘う子供や青年を元気付けたりしている。今回の試合前にも、ホスピス支援を呼びかけていたそうだ。
@RealCFrampton WE LOVE YOU!!!!
— NI Hospice (@NIHospice) February 28, 2016
Congrats!! pic.twitter.com/etNb076TkC
なお、今回のタイトルマッチの対戦相手で判定で敗れたクイッグは再試合を希望しているということだが(具体性のあることなのか、「リベンジを誓った」的な試合後のコメントなのかは私にはわからない)、「再試合とか言ってないで、2人とも、先に俺と試合しようぜ」という呼びかけが、キューバのボクサーから来ている。
Just so #FramptonQuigg know. I still want to fight both of you. So STOP THINKING ABOUT A REMATH. FIGHT ME FIRST!
— Guillermo Rigondeaux (@RigoElChacal305) February 27, 2016
あと、ジョン・トング教授ってベリー生まれなのか(笑)
Down below: Frampton and my hometown Bury's finest Scott Quigg. Congrats @RealCFrampton See you at Belfast rematch😄 pic.twitter.com/kiPvyQhYBQ
— Jon Tonge (@JonTonge) February 28, 2016
NIのリストのキャプチャ:
※この記事は
2016年02月28日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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