この「壁」がある程度長く伸びたものは「ピース・ライン peace line」と呼ばれていて、東ベルファストのニュータウナーズ・ロードの辺りのものについて結構詳しく書いた記事がある。また2012年の調査報告書についてもある程度書いてある。
「ピース・ライン」は、今では「紛争(の跡地の)観光」の目玉だが、報道や現地の人々のブログなどを見る限り、「紛争」が過去のものになった今もこれらが撤去されていないのは、「観光資源だから」というより、「住民が即時の撤去を望んでいないから」と思われる。地域/コミュニティを分断する壁なんかないほうがいいに決まっているのだが、今すぐに撤去することには不安がある、というような複雑な心情は、きれいごとではないリアルな現場には、やはりある。
そういう「壁」を除去するということには、たいへんな思い切りが必要だろう。
その「思い切り」の動きが、北ベルファストから伝えられた。場所はクラムリン・ロードのホーリー・クロス教会(カトリック)の向かい、あのアードイン地区だ。
https://twitter.com/BelTel/status/702904323949400064
夜間だから見づらいが、クラムリン・ロードを進む車の中から撮影された「撤去された壁」の映像。
撮影主(アップロード主)は、この映像に寄せられたコメントに返信して、次のように述べている。
... they are planning to take down 21 different peace walls in Belfast in the next year. I have to be honest, I didn't think it would have been taken down in our lifetime.
「私たちが生きている間に撤去されるとは思っていなかった」。
北アイルランドはまたひとつ、「不可能だと思われていたこと」を可能にした。 (^^)
以下、詳細。
North Belfast peace wall comes down after 30 years... https://t.co/bRx0wwTPw1 pic.twitter.com/vjMk47TEFr
— maurice fitzmaurice (@mofitzmaurice) February 25, 2016
Video: Belfast peace wall is demolished after 30 years dividing two communities https://t.co/wRNy74FCDp pic.twitter.com/X8jWGpH7Fs
— Belfast Telegraph (@BelTel) February 25, 2016
Video: Peace wall is demolished in north Belfast https://t.co/lz5MvFKrRz via @BelTel ベルファスト北部、クラムリン・ロードのピース・ウォールの撤去作業が開始。コマツの重機であっけなく倒されてる。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) February 26, 2016
BBC News - Troubles 'peace wall' at north Belfast interface is dismantled https://t.co/piV7cKlJ2N BBCにも映像がある。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) February 26, 2016
Peace wall on Belfast’s Crumlin Road is being demolished https://t.co/SvPABLgXrf 詳しい。ひとつの時代を目に見える形で終わらせる決断をした住民。Walls can come tumbling down
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) February 26, 2016
News Letterの記事より。
Rabb McCallum, of the Twaddell Ardoyne Shankill Communities In Transition (TASCIT) group, an IFI Peacewalls project, said: “This is a brave and a bold step taken by residents who have seen more than their fair share of the conflict yet have an eye on the future and a better way of life for themselves and their families.
“Hopefully, their course of action will inspire others to consider how we move forward together as a society.”
場所はここ。この大通りに面したレンガの壁が撤去され、フェンスに置き換えられる。 https://t.co/wcgBFcqLnz
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) February 26, 2016
Google Earthで上空から見る。これだけの影のできる高さの「壁」があり、少し芝生の空間があって、通路があって、そして各家の庭がある。(画像はクリックで原寸)

資料として、この一帯の「インターフェイス」一覧。
http://www.belfastinterfaceproject.org/map/cluster-9-crumlin-road-ardoyne-glenbryn
![]() | 北アイルランドのインターフェイス 佐藤 亨 水声社 2014-01 by G-Tools |
![]() | 紛争という日常: 北アイルランドにおける記憶と語りの民族誌 酒井 朋子 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() by G-Tools |
![]() | 紛争の記憶と生きる: 北アイルランドの壁画とコミュニティの変容 福井 令恵 青弓社 2015-04-25 by G-Tools |
![]() | 北アイルランドとミューラル 佐藤 亨 水声社 2011-03 by G-Tools |
※この記事は
2016年02月26日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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