その交渉の結果、英国が取り付けた(というより「もぎ取った」)合意は、英国をEU内においてスペシャルな何かにするというものだった。つまり「英国は例外」というのが今以上に認められることになる、という内容。「だからお願い、英国はEUに残留しましょう!」とキャメロン首相が英国に持ち帰ったら、BrexitかBremainかの判断について、on the fenceの人たちを、Bremainの側に落とせるようなものとして合意された。
その結果、レファレンダムで「国民の選択」がBrexitになったら目も当てられないというか、どんだけのカオスになるのだろうと不安を覚えるわけだが、ともあれ、そうして合意を持ち帰った首相は、ほとんど寝てない状態だろうが、すぐに閣僚をダウニング・ストリート10番地(首相官邸)に呼んで、話し合いを持った。
そして、彼ら閣僚の態度がどう表明されるかが、20日(土)の英国の報道機関ではずっとライヴで伝えられ、最後の締めとして、キャメロン首相が10番地の前に演台を置いて宣言した。
6月23日(木)。あと4ヶ月だ。
以下、Twitterでのフィードなどのアーカイヴ。
Teabags and treachery while EU players go hungry before sealing a deal https://t.co/zu4X5EPfZa エクストリーム交渉。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) February 20, 2016
Talks on David Cameron's bid to reform the EU continue in the early hours in Brussels after Number 10 said there... https://t.co/hvhYn453TZ
— BBC Politics (@BBCPolitics) February 19, 2016
https://t.co/fgv7kLtTfv このフィードを「北アイルランドのリスト」で見たので、「やっべー、またエクストリーム交渉してるよ」と思ったら、北アイルランドじゃなくてEUの話だった。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) February 19, 2016
「ブリュッセル」と書いてあるのが「ベルファスト」に見えたんだな。「北アイルランドのリスト」を見ているという意識が先に立っていたので。そして、モルダー、あなた疲れているのよ。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) February 19, 2016
……と、キャメロンがブリュッセルで「エクストリーム交渉」に出場しているころ、英国ではUKIPのナイジェル・ファラージ主催の「EU離脱を求める草の根運動 Grassroots Out」の大集会が、ロンドンのど真ん中、ウエストミンスターの国会議事堂の目と鼻の先のコンファレンス施設に、2000人を集めて行なわれていた。
http://www.theguardian.com/politics/2016/feb/19/grassroots-out-unites-politicians-the-ones-we-normally-try-to-avoid
満員の会場に「顔パス」で入れなかった、BBCからITVに移籍したばかりのジャーナリスト、ロバート・ペストンが、現場から実況していたが、UKIP系の「反EU」の人たち(「EUにいると物事がブリュッセルで決定され、英国の英国らしさが危機に瀕する」論をとるナショナリスト)を大勢集めたこの集会には、UKIPとは全然別の系統の極左(「反・資本主義」「反・新自由主義」でEUに反対している人たち)も加わっていたという。そればかりか、集会の「特別ゲスト」が、よりによってジョージ・ギャロウェイだったというのでびっくりだ。呉越同舟、合従連衡、英国をEUから離脱させるためなら、何でもありなんだろう。ギャロウェイなんかが出てきたもんだから、怒って席を立つ人が続出というカオスだったようなので、今後は「共闘」の見せ方が変わるかもしれないが。(しかし極左の活動家たちは、いかにプラグマティズムといえど、ファラージなんかと組んで恥ずかしくないのかね。)
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RT @Peston: From the heart of Europe to the heart of the leave EU movement - a packed Grassroots Out rally, circa 2k people https://t.co/1y… at 02/20 20:37
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RT @Peston: Tieless Bill Cash: "this is the moment we fight back". Grassroots Out rally https://t.co/YtirzhPhlC at 02/20 20:37
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RT @Peston: Last time I witnessed popular political enthusiasm on this scale was during @jeremycorbyn rallies for Lab leadership https://t.… at 02/20 20:38
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RT @MirrorPolitics: Robert Peston got 'McCartneyed' trying to get into Nigel Farage's anti-EU rally
https://t.co/A9uqLKD7xW https://t.co/bV… at 02/20 20:38
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RT @Peston: Ruth Lea simply has to say "Nick Clegg" to @Grassroots_Out crowd and there is a murmur of collective contempt. These people bel… at 02/20 20:40
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RT @Peston: John Boyd from hard left now getting rapturous applause from @Grassroots_Out crowd for reasserting right to strike at 02/20 20:40
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RT @Peston: .@Grassroots_Out says it's not all about @Nigel_Farage, but... https://t.co/2TlvavBsNk at 02/20 20:41
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RT @StigAbell: The spiritual leaders of the Leave movement. https://t.co/8oTGl3QaUe at 02/20 20:41
一方で、主要3政党は(2014年9月のスコットランド独立可否レファレンダムのときと同じように)3党一致してBremain(EUへの残留)を主張している。保守党にとっては党内のBrexit主義者たちをどう御するべきかという問題がある(そしてそれへの解として、今回のブリュッセルでの合意をキャメロンが持ち帰ったのだが)。LibDemsは(まだLibDemsになる前から)一貫して欧州統合支持で、英国が「欧州」の一部であるという制度づくりも支持しているからぶれない。
一方、労働党は、ジェレミー・コービンを党首に押し上げた支持者たちの少なからぬ人々が「反・新自由主義」のスタンスだ。コービン自身、そういうバックグラウンドである。が、
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労働党はもちろんBremain(EUから出て行かない)というのが党の方針だが、コービン支持者はそれについてどの程度納得しているんだろう。左翼の反新自由主義での「反EU」は、ファラージみたいな右翼ナショナリストの「反EU」の陰でほとんど注目されていないかもしれないが、前からあるし… at 02/20 20:47
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…反新自由主義の「もうひとつの世界は可能だ」的なスローガンは、ジェレミー・コービンを労働党党首に押し上げた人たちの間でも定番だったよね。どう折り合いをつけるつもりだろう。労働党は蘇格蘭独立レファレンダムでユニオニズムを打ち出して甚大なダメージを負ったが、その繰り返しになるのか? at 02/20 20:50
一方、キャメロンがブリュッセルで取り付けた合意は:
ざっと見ただけで気が重くなってタブ開いたまま放置してた。これ、大陸目線だと、英国を留め置くためにここまでの形骸化が必要なのかという話だ。> EU deal gives UK special status, says PM https://t.co/nwT45t0me1
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) February 20, 2016
既にUKはEU全体の中での「例外」となっている。シェンゲン協定やユーロは誰でも知っているが、ほかにもある。 https://t.co/2ynhERTaLp このページに記載されてるのがすべてでもないかもしれない。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) February 20, 2016
2015年2月の報道。関税に関して。"An exception was created..." を含む段落参照。>U.K. Wins EU Top Court Challenge Over M&S Exception https://t.co/ZMfBBhZEHB
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) February 20, 2016
あと、北アイルランド紛争期、人権関連でも「英国は例外」っていうのがあったはず(ネット検索ではうまく探せない。本で読んだんだよなあ……)。
「ヨーロッパの一体性の問題だ」という、「そういう反応になりますよね」っていう反応がギリシャから出てますね。よりによって。> EU deal: Cameron takes Brussels plan to cabinet ... https://t.co/EwsfHtUySY
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) February 20, 2016
Grexitなんて、もう覚えてる人もいないんじゃないかという勢い。
そして投票日の告知。
UK to hold referendum on membership of the EU on 23 June, PM @David_Cameron says https://t.co/NxZ8PrwUvM #EUref pic.twitter.com/i6kHoK9ElW
— BBC Breaking News (@BBCBreaking) February 20, 2016
Leaving EU would threaten Britain's economic & national security, @David_Cameron says https://t.co/LtbGirzjs8 pic.twitter.com/xYISSYu1or
— BBC Breaking News (@BBCBreaking) February 20, 2016
キャメロンは既に、二国間条約で決まっていることをEUの取り決めであるかのように偽って、「EUを離脱したら英国は大変なことになる」というスケアモンガリング(恐怖煽動)を行なっている。
Brexit will bring the 'Jungle' to the UK, David Cameron warns https://t.co/JWyQc7Lte1
— The Telegraph (@Telegraph) February 8, 2016
"'Jungle' to the UK" とかいう恐怖煽動(「Brexitした場合、フランスが遠慮なく「移民の大群」を英国に送ってくる」説)、だれがやってるのかと思ったらキャメロンかよ……スコットランド独立レファレンダムのときと同じ、なりふり構わぬ情報戦だな、やはり。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) February 8, 2016
キャメロンは、何をやってくれたんでしょうかね。保守党内部から出てきたよ……。https://t.co/heQ54qyvmX
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) February 8, 2016
"It would not lead to a major change" - Former Conservative Defence Secretary Liam Fox #Calais #EUref #wato pic.twitter.com/XIsV7gJIve
— The World at One (@BBCWorldatOne) February 8, 2016
(1/2) Sad and disappointed to see our Prime Minister stoop to this level of scaremongering #Calais @David_Cameron @Number10gov #EUref #EU
— Dr Liam Fox MP (@LiamFoxMP) February 8, 2016
(2/2) especially as he knows the #Calais agreement is nothing to do with the #EU and agreed between the two govts @David_Cameron #EUref
— Dr Liam Fox MP (@LiamFoxMP) February 8, 2016
自分の思っていたのと違う結果を得るということに慣れていないホワイトホールのエリートさんたちががっつりキャメロンをバックアップすることになるのだが、あの人たちは、自分の思っている結果を得るためなら、どんなことでもする。「ウエストミンスター、ホワイトホールとシティのエリート」対結果を得るためなら誰とでも手を組むような「草の根」が議論の最前線に立つ。これからしばらく、英国の言論は異様になるかもしれない。スコットランド独立可否レファレンダムのときも、「独立なんてするわけがないって」とタカをくくっていたウエストミンスター、ホワイトホールのエリートが土壇場で大慌てしたことで異様な言論空間が出現したが、今回もエリートさんたちは実のところ、「EU離脱なんてするわけがないって」と考えているようで(Brexitの場合のシナリオがない)、またあれの繰り返しなのかなと思っている。もちろんメディアは煽りに煽るだろう。「激論」を演出すればするほど売れるわけだし。
英国でEU離脱支持が拡大、残留派と拮抗=世論調査 | Reuters https://t.co/viUu75Xfx7 "ICMのオンライン調査によると、離脱を支持するとの回答は42%、残留を望むとの回答は41%、残りは分からないと答えた。" さらに政権がオウンゴール決めまくるし。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) February 10, 2016
で、私としては気になるのは、「英国」の権威を認めず、議会(国会下院)にも出席しない主義を貫いている北アイルランドのアイリッシュ・ナショナリストが、「英国人」として与えられる今回の投票権を行使するのかどうかという点。つまりシン・フェインと、ディシデンツ系の各組織。その点、まだはっきりした話を捕捉していないのだけど、捕捉したらまたちょっとメモくらいはすると思う。
それから、まだ読めてないんだけど、ティモシー・ガートン・アッシュが書いてる。
My take on Cameron's deal & how to argue for Britain to stay in the EU: https://t.co/PATdXNbp2X #brexit #Bremain @OpenEurope @CER_London
— Timothy Garton Ash (@fromTGA) February 20, 2016
トニー・ジャットの見解を聞きたかったな。2010年以降、英国が急速にこういう方向に傾いてきたことの分析も聞きたかったな。(;_;)
![]() | ヨーロッパ戦後史 (上) 1945-1971 トニー・ジャット 森本 醇 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() by G-Tools |
お笑い:
nofrills / nofrills/新着更新通知・RTのみ
RT @Queen_UK: Looking at holding the European Referendum the day after the Eurovision Song Contest. #Sensible at 02/20 21:37
(いうまでもないことですが、超有名なパロディ・アカウントです)
そしてこの緊張感あふれる局面で、ぐろにあどさんがやってくれた!
Today I declare that I join Sajid Javid in backing the UK to remain in the UK. pic.twitter.com/cyTUyVuAKV
— Liam Shields (@PhilosopherLiam) February 20, 2016
BREAKING: Sajid Javid backs the campaign for the UK to remain in the UK, acc to the Grauniad https://t.co/LoLPRW8Vai pic.twitter.com/QXmMoHORVt
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) February 20, 2016
※この記事は
2016年02月20日
にアップロードしました。
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