「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2016年02月18日

唖然とするだけで終わることもできるが、唖然とした上で生産的にもなれる。人間ってすごい(ということだと思う)

日本国内で唖然とするよりないことが報道されているが:
自民党の丸山和也参院議員は2月17日の参院憲法審査会で、アメリカのオバマ大統領を引き合いに「アメリカは黒人が大統領になっている。これは奴隷ですよ。建国当初の時代に、黒人・奴隷が大統領になるなんて考えもしない」と述べた。

http://www.huffingtonpost.jp/2016/02/17/maruyama-slip-of-tongue_n_9251242.html


(この人、弁護士だよね。自分の発した言葉がどう解釈されるかによって、物事の成り行きが変わるということは、知ってるはずだよね。)

そのアメリカでも唖然とするよりないことがあって、そして世界中で「ネタ」にされて、最終的には「世界各国・各地域のひみつへいき図鑑」ができてる。

ジェブ・ブッシュは「これがアメリカだ!」として拳銃の写真をツイートした。インターネットは反応した……
http://matome.naver.jp/odai/2145571759825672801


生産的で、とてもよいと思う。(え

なお、丸山議員の発言については、そのくだりを全文読んでも、唖然とするよりない。文脈云々の話ではない。これが、公人(国民の選挙で選ばれた人、つまり議員)として、議会で述べられた言葉であるということに、脳みそがつるつるになりそうな衝撃を受ける。そもそもこの話が出てきた「日本州」云々のたとえ話が、私には意味不明すぎる(これ、英訳しろといわれたら、まず「時制をどうすればいいのか」がわからないので発言主に明確化を求めることになると思う)。ただひとつはっきりわかるのは、この発言主が「人種」を基準に物事を語りたがる人物であるということ、つまり狭義の「人種主義者」であるということだ(そして、狭義の「人種主義者」は別に珍しくもない。自分の中にもその要素はある。つまりこの発言そのものからは何もわからないし、とことん意味不明だということだが)。

バカみたいな話だと思われるかもしれないかもしれませんが、例えば今、アメリカは黒人が大統領になっているんですよ。黒人の血を引くね。これは奴隷ですよ。はっきり言って。リンカーンが奴隷解放をやったと。でも、公民権も何もない。マーティン・ルーサー・キング(牧師)が出て、公民権運動の中で公民権が与えられた。でもですね、まさか、アメリカの建国、当初の時代に、黒人・奴隷がアメリカの大統領になるとは考えもしない。これだけのですね、ダイナミックの変革をしていく国なんです。

http://www.huffingtonpost.jp/2016/02/17/maruyama-slip-of-tongue_n_9251242.html


とかいうとまた「歴史的経緯としては間違ってないですよー」とか言い出す人に絡まれるんだろうな、と思うだけでげんなりする。

なので私はもう発言らしい発言はやめることにしたのだ。

あ、そういえば……




あと、バラク・オバマという個人を離れても、「アメリカの黒人イコール奴隷」というのがいかに偏見であるか、というか端的に事実に照らして正しくない可能性が高いステレオタイプであるか、ということは、米アカデミー賞をとったあの映画で語られてますね。ええと……ぼんやりした邦題がやっぱり覚えられない。12 Years A Slaveですが。

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この邦題が覚えられないのは、「夜明け」ってのが「アメリカの黒人奴隷の解放」についてのステレオタイプの語りであるせいもあるかもしれない。この物語(実話だが)の主人公(実在の人物で、彼の手記に基づいてこの映画は作られているのだが)、ソロモン・ノーサップは、「奴隷」ではなく「フリーマン(自由人)」で、音楽家だった。その彼が、興行主に乗せられてよその「ステート」(米国の文脈では「州」と訳すのが慣例だが、あのころは事実上「国」に近い)でライヴ・ツアーを行い、その「ステート」では違法でないからということで誘拐されて「奴隷」として南部に売られてしまう。そしてそのまま12年間を、南部のプランテーションで奴隷として過ごすことになる。

最終的には、ソロモン・ノーサップは、白人の浮浪労務者(ブラッド・ピットが颯爽と登場!)との幸運なめぐり合わせをきっかけに、北部からの助けを得て、北部の妻子の元に戻る。ノーサップは、妻子と再会して開口一番、Sorry for my appearance. と言うほど、礼儀正しい人物として描かれていた(この箇所、映画館でみたときには字幕が間違っていた。「今頃現れてすまない」となっていたが、「こんなみっともない身なりですまない」だ)。南部の農園に颯爽と登場したブラッド・ピットが演じていた非定住者の大工より社会的には高い地位にいた「文化人」だ。

そういう立場にいた「黒人」の存在を前提にしない「黒人」のイメージを「アメリカの黒人」に押し付けることは、丸山議員のいう「ダイナミックの(原文ママ)変革をしていく国」に敬意を払う態度とは間逆である。つか、一言でいえば、スパイク・リーに説教されるべきだと思う。

バーダマン教授の下記の本は、リンカーンの奴隷解放令のあとで南部で状況が停滞した(むしろ逆戻りした)ことについて、非常に詳しく、また痛みが迫ってくるような本なので、ご一読をお勧めしたい。特に丸山議員に。またあの発言に共感しちゃった人たちに。

アメリカ黒人の歴史 (NHKブックス)アメリカ黒人の歴史 (NHKブックス)
ジェームス・M・バーダマン 森本 豊富

アメリカ黒人の歴史 - 奴隷貿易からオバマ大統領まで (中公新書) 黒人差別とアメリカ公民権運動―名もなき人々の戦いの記録 (集英社新書) アメリカ黒人の歴史 新版 (岩波新書) アメリカ黒人の歴史 (「知の再発見」双書) キング牧師とマルコムX (講談社現代新書)

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あと、アメリカ大陸を離れて欧州の話では下記の本。欧州サッカーを少しでも見てた人なら「わかる」はず。カランブーにこんな深い背景があったとは。

サッカーと人種差別 (文春新書)サッカーと人種差別 (文春新書)
陣野 俊史

人種とスポーツ - 黒人は本当に「速く」「強い」のか (中公新書) あなたの見ている多くの試合に台本が存在する FIFA 腐敗の全内幕 サッカーの敵 スポーツを考える―身体・資本・ナショナリズム (ちくま新書)

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(この本のAmazonのレビューは、書いてないことを勝手に読み取って勝手にキレている系のものもあるのでほどほどに参考にしてください)

※この記事は

2016年02月18日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 23:55 | TrackBack(0) | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼