「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2016年01月27日

シャンキル・ロード爆弾事件(1993年10月)。攻撃計画は事前にIRA内部のスパイから英当局に知らされていたとの報道。

1993年10月23日、土曜日。ベルファストの西側、ロイヤリストの拠点であるシャンキル・ロードの魚屋は、買い物客でにぎわっていた。その建物の2階は、ロイヤリスト武装組織UDAが会合を開くのに使っており、UDAを標的とした爆弾を持ったIRAのメンバーが店に入っていった。爆弾を設置して「爆発するぞ!」と叫び、店の客を外に逃し、2階のUDAを殲滅するつもりだった。しかしその日のその時、UDAはその建物にはおらず、爆弾は予定より早く爆発し、爆弾犯の1人と店にいた「プロテスタント」の一般市民9人を殺した。「シャンキル・ロード爆弾事件」である。
https://en.wikipedia.org/wiki/Shankill_Road_bombing

この事件のあと、北アイルランドでは「暴力の連鎖」が起きた。「プロテスタント」の側が、「報復」として、「カトリック」の一般市民を標的にした(つもりの)攻撃を重ねた。そのことは、事件から20年を迎えた2013年にざっと書いた。

20年前の1993年10月、シャンキル・ロードからグレイスティールへ、暴力は連鎖した。
http://matome.naver.jp/odai/2138320196046648301


この事件について、英当局は「シャンキル・ロードのUDAの会合場所を狙った爆弾攻撃が行なわれる」ということを、IRA内部に入れていたスパイから知らされていた、という記事が、今日(2016年1月26日)のインディペンデントのトップページに出た。


※写真が出ている「1本指を立ててる迷彩柄のTシャツの男」は無視してください。関係のない話題なので。

Shankill Road bombing: MI5 failed to act on IRA tip-off that may have prevented Belfast atrocity, investigation claims
http://www.independent.co.uk/news/uk/home-news/shankill-road-bombing-mi5-ignored-ira-tip-off-that-could-have-prevent-belfast-atrocity-investigation-a6833541.html











どういうことなのかは記事をお読みいただきたいが、一部抜粋すると:
The police watchdog in Northern Ireland is probing claims that the senior IRA operative who planned the 1993 Shankill Road bombing was an informant who passed on details that could have allowed the security forces to prevent the atrocity.

...

Highly-sensitive documents stolen by the IRA during a break-in at the fortified headquarters of the then Royal Ulster Constabulary (RUC) in 2002 have now been claimed to show that the terrorist who plotted the bombing was a British agent known as “AA”.

Leaks from the stolen papers suggest AA had extensively briefed his MI5 or Special Branch handlers on the aim and likely timing of the attack, which was designed to inflame sectarian tensions by killing the leadership of the loyalist Ulster Defence Association (UDA) terror group as they met above Frizzell’s fish shop on a busy Saturday in October 1993.

http://www.independent.co.uk/news/uk/home-news/shankill-road-bombing-mi5-ignored-ira-tip-off-that-could-have-prevent-belfast-atrocity-investigation-a6833541.html


ええっと、つまり、IRAがそういう話をリークしてるんすか。 (((( ;゚Д゚)))

それをインディが記事にしている、と。 (((( ;゚Д゚)))

インディは英国の主要4紙の中でも最もIRAに敵対的な新聞だった。英軍に近い新聞であるデイリー・テレグラフよりも過激な言葉遣いで一方的にIRAとシン・フェインを断罪し、根拠不明の断定を連発していた。2012年だっけ、ロシア人メディア王のレベジェフがこの新聞を買うまではアイルランド共和国の保守派のメディア・コングロマリットの一部だったので、別に不思議なことではない。

そのインディが、こんな記事を? (((( ;゚Д゚)))

……と思うのだが、読んで二度びっくり、この件の最初の報道はアイリッシュ・ニュースだ。

The extraordinary allegations concerning AA, first reported by the Belfast-based Irish News newspaper, raise the highly damaging prospect that British intelligence knew of the attack but failed to act quickly enough to prevent it; or even actively allowed a botched bombing of civilians to take place to place pressure on a faction of IRA still intent on pursuing violence and push its leaders towards accepting the peace process.

http://www.independent.co.uk/news/uk/home-news/shankill-road-bombing-mi5-ignored-ira-tip-off-that-could-have-prevent-belfast-atrocity-investigation-a6833541.html


これさあ、「英情報機関は攻撃のことを把握していながら、それを阻止するよう行動することはしなかった」という指摘は《事実》の指摘だし、記述というか単語の選び方で異論は出るかもしれないけれど、おおむね、その通りだということで一致するはずなのだが、セミコロンの後が……。「その時点でなお暴力という手段をとり続けようとしているIRAの中の一派に、和平プロセスを受け入れるようプレッシャーを与えるために、英情報機関が積極的に、一般市民(民間人)を標的とした爆弾攻撃を起きるがままにしていた」とかいうのは、あのー、すいません、「陰謀論」です。いや、もちろんありそうなことなんだけど……その「陰謀論」は「英当局」だけのものではなく、シン・フェインおよびIRAの中の「和平推進派」のものでもあり、つまりアダムズ・マクギネス体制ののののののののノン・アルコールのチューハイって、普通にジュースでいいんじゃないですかね。





インディは独自にこんなことも書いてる。
The Independent understands that AA, who was identified by the IRA from the Castlereagh papers in 2003 but escaped retribution from its notorious punishment squads and still lives in Belfast, may even have had custody of the bomb the night before the attack, allowing time for the device to be rigged to blow up his comrades.

つまり、シャンキル・ロードの魚屋を瓦礫の山にしたあのボムは、予定より早く爆発した、つまり設計段階ではもっと時間の余裕があるはずだったのにやけに早く起爆したのだが、それは、IRA内部にいてこの爆弾計画を知る立場にあった幹部(実は英当局のスパイで、「AA」として知られる人物)が、事件の前の晩に自宅にその爆弾を持っており、細工を施した可能性もあるのではないか、ということを、少々回りくどく書いている。

なぜインディがこんなことを? (((( ;゚Д゚)))

記事の最後のほうは普通なんだけどね。

The Police Ombudsman for Northern Ireland has confirmed that it was formally assessing a complaint received last week from a relative of one of the victims of the bombing asking for AA and his relationship with either the RUC Special Branch or MI5 to be investigated.

In a statement on behalf of the ombudsman, Dr Michael Maguire, his office said: “We have received a complaint. It centres on two concerns: Did the RUC have information which would have allowed them to prevent the bombing and was the subsequent investigation compromised; [and] did the police ‘fail to deliver justice to the families of those who lost their lives in the bombing’?

“We will seek to establish if this is something we should investigate, and if so, when we could begin this work.”

The allegations add to an already heavy caseload for the watchdog concerning claimed collusion between the security forces and terror groups on both sides during the Northern Ireland conflict. They include the killings in the 1980s and 1990s of at least 20 alleged IRA informers whose relatives in some cases believe their loved ones were used as scapegoats to cover the tracks of the security forces’ most important IRA agents.

http://www.independent.co.uk/news/uk/home-news/shankill-road-bombing-mi5-ignored-ira-tip-off-that-could-have-prevent-belfast-atrocity-investigation-a6833541.html


で、そもそものアイリッシュ・ニュースの報道(この媒体は、ウィキペディアには「ナショナリスト」と書いてあるけれど、「ピース・プロセス支持」のリパブリカンですよね。この媒体が絶対に批判しないのがアダダダダダダ……)。

Top level agent gave information on Shankill attack
http://www.irishnews.com/news/2016/01/25/news/top-level-agent-gave-information-on-shankill-attack-393522/

EXCLUSIVE: CLASSIFIED documents stolen during the break-in at Castlereagh have shown the IRA 'commander' at the time of the Shankill bomb was working as an informant and passed information to his handlers that could have potentially prevented the atrocity.

The former 'blanketman', now aged in his late 50s, was known as agent AA and calls made to his special branch handlers are logged throughout the documents stolen by the IRA during the raid at PSNI headquarters almost 15-years ago.

The files stolen during a robbery on St Patrick's Day 2001 were heavily encrypted had to be deciphered by the IRA who used a handful of trusted members to decode the information.

The north Belfast man was 'stood down' by the organisation's ruling army council in 2002 after they pieced together the coded information and discovered he had been working as a double agent for almost a decade.

However, the Irish News understands that while he was replaced by high profile republican Eddie Copeland, no explanation was given to the rank and file members as the leadership attempted to keep the information under wraps.

The IRA man has managed to evade the spotlight for almost two decades despite leading the deadly Ardoyne unit of the paramilitary group during a period when they were involved in numerous shootings and bombings. ...





記事書いてるのがアリソン・モリスさんでしてね……








いやあ、この人はすごいっすな……。

クリス・ライダーさんはこの反応。ほんっと、IRAって中身は何だったんでしょうね。






ネルソン(UDA)、ハドック(UVF)、スカパティッチ(IRA)。ほか、名前が挙がってないけど、何度も逮捕され、何度も起訴されて、なぜか一度も有罪にならない人もいますね。Real IRAと呼ばれた組織の人で。

セクタリアン・ディヴァイドの向こうから、ジェイミー(彼はときどき、このように、至極まっとうなことを言う人になる。「壊れた時計でも日に二度は……」と思えるかもしれないけど)。










リパブリカンのまた別の側からは:




PUPの政治家(地方議会)。ジェイミーも同じことを言っていたけど、まっとうなコメントですよ。あの事件で心身に傷を負った人たちにとっては、こんなの、耐え難い苦痛でしょう。




BBC, ノーラン。









Sluggerの人たち:



アイリッシュ・タイムズ(アイルランド共和国):




BT:




NL:




UTV:




そしてアイリッシュ・ニュース:




1993年というと、映画『シャドー・ダンサー』の物語の時期。原作の小説を書き映画の脚本にもかかわっているトム・ブラッドビーが、この時期の北アイルランドをよく知るジャーナリストなので、「英当局が大事なスパイを守るためにどのようなことをするか(どのようなことをするのを怠るか)」という点では非常にリアルだと思う。映画の画面は、御伽噺めいて見えるほど「作り物」かもしれないけれど(あんな目立つ服装で歩かないでしょ、など)。

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東宝 2013-07-26

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※この記事は

2016年01月27日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼