英語を学習中で、多読のための素材を探している人は、こういうタイミングを狙うとよい。つまり、国際的なニュースで、日本語での報道もたくさんあって、あまり「時事的」でない話題が出ているタイミング。
(「日本人が殺され、武装勢力が犯行声明を出している」といったニュースは、元々何がなにやらわからない状態というか、「戦争の最初の犠牲者は真実」と言われるような状況を想定しておかねばならないので、「英語学習素材を見つける」にはあまり適していないと思う。)
先日の「ラグビーW杯での日本代表の劇的な勝利(南ア戦)」などでもかなりよさそうな英語記事はあったが、やはりある程度の予備知識(南アがどういうチームであるか、この勝利がどのような意味か、「日本代表」がどういうチームか)がないと、すらすら読むのはかなり厳しそうだった。
が、今回のノーベル医学・生理学賞では、「速報」段階でけっこうよさそうな記事が出ている。というのも、いつもの同賞とは若干異なり、今年は「薬の発見」という一般人にもわかりやすい実績での受賞だからだ。ざっくりとした説明の文章を読むだけでも、何がしかの専門知識(例えば「細胞とは何か」とかいったこと)が要求されるのが例年だが、今年はそれは要求されていない。
たまたま私が見た中で「多読用の素材になる」と思ったのが、New Scientistの下記記事だ。
Nobel Prize for medicine for drugs that have benefited billions
https://www.newscientist.com/article/dn28284-breakthrough-drugs-for-malaria-and-roundworm-win-medicine-nobel
This year's #NobelPrize for medicine goes to drugs that improved the lives of 3.4 billion people worldwide http://t.co/dnCglfHrEb
— New Scientist (@newscientist) October 5, 2015
英文多読の素材を探している高校生の方におすすめ。今日発表された今年のノーベル医学生理学賞についての説明。難しい単語さえ辞書引けば余裕で読めるはず(センター試験の長文と同じレベル)。分量も多すぎない。 / “Breakthrough…” http://t.co/isWdGhembO
— nofrills (@nofrills) October 5, 2015
訳読しようとすると少し厄介な文かもしれないが、日本語にいちいち訳さずに読む練習には適している。一文一文が短く、構成も平易で、気取った導入部などもない。日本の高校の教科書のようだ。
「日本語に訳さずに」といっても、無理に「訳さず」に読もうとする必要はない。例えば記事の書き出しの文、
The 2015 Nobel prize for medicine or physiology has been awarded to scientists who developed new drugs for roundworm parasites and malaria. The treatments have improved the lives of 3.4 billion people around the world, says the Nobel committee.
これは、次のようにざっくり日本語にしながら読んだっていい。慣れないうちは「日本語にしない」で「読む」(意味を把握する)ことはなかなか難しいからだ。
2015年のノーベル医学・生理学賞が、roundworm parasitesと、マラリアのためのnew drugsをdevelopした科学者たちに授与された。そのtreatmentsは、全世界の3.4billion人の人びとの生活をimproveしたとノーベル委員会は言っている。
※これ、アズ・イット・イスだと「ルー語」なんだけどね。
"roundworm parasites" みたいな「専門用語っぽい語」は、わからなくても、とりあえずそのまま先へと読み進めていく、というのが「多読」の練習だが、それも慣れないうちは、いきなり辞書を参照したっていい。
全部で9パラグラフあるが、一度に全部読むのが大変なら、3パラグラフずつに分けて3日間かけたっていい。語数をカウントすると全部で454語程度だから、よくある新聞記事の半分くらいの長さだろう。
ついでながら、「薬の発見」でのノーベル医学・生理学賞の受賞は、1988年以来のことだそうだ。
Chemists win 2015 medicine @NobelPrize for drug discovery. Hasn't happened since Gertrude Elion and James Black won in 1988. #NobelPrize
— Ash (@curiouswavefn) October 5, 2015
そういったことについて、具体的に知りたければ、ネット検索をすればよい。例えばノーベル生理学・医学賞の受賞者一覧のようなページがざくざくと見つかるはずだ。英語でも、日本語でも。
英語は多読が一番! (ちくまプリマー新書) クリストファー ベルトン Christopher Belton by G-Tools |
関連ツイート:
Youyou Tu's #nobelprize malaria work was a secret program by Mao to help cure the disease during Vietnam War. Scroll:http://t.co/qusnucgXKn
— sarah everts (@saraheverts) October 5, 2015
The 2015 #NobelPrize #Medicine Press release: http://t.co/jvMsjumBT4 Advanced info: http://t.co/dYxirG32Xz
— The Nobel Prize (@NobelPrize) October 5, 2015
漢方だ。"Youyou Tu turned to traditional herbal medicine to tackle the challenge of developing novel Malaria therapies" http://t.co/Z3D0deTJLs
— nofrills (@nofrills) October 5, 2015
#NobelFacts Chinese Youyou Tu is the 12th women awarded the #NobelPrize in Physiology or Medicine
— The Nobel Prize (@NobelPrize) October 5, 2015
※「マラリアの薬」で受賞した中国の女性科学者さん、漢方薬の研究者で、ニガヨモギから薬効のある成分を発見したのだとか。そのきっかけが、ベトナム戦争のときに中国軍(北ベトナム支援)がマラリアに苦しめられたため、という歴史秘話的な文脈もある。さらに、当時は「個人」が顕彰されることはなかったとか、いろいろ。
EXCLUSIVE Interview with Satoshi Ōmura on golf, great scientists, and the 2015 #NobelPrize in Physiology or Medicine https://t.co/Ia8tNPliNK
— The Nobel Prize (@NobelPrize) October 5, 2015
"Tu has never won any major award in China. She has not been elected to China's major academies." #NobelPrize http://t.co/P42byXzUUF
— Nature News&Comment (@NatureNews) October 5, 2015
アイルランド成分。
A Donegal man has won the Nobel Prize in medicine http://t.co/2mdwFnDA2q pic.twitter.com/A3ezu3F7I3
— The Irish News (@irish_news) October 5, 2015
ノーベル医学生理学賞、大村さんと共同受賞のキャンベルさん。アイルランド、ドニゴール生まれ(なのでアイルランド圏がおもしろくなるはず)。 / “William C. Campbell (scientist) - Wikipedia,…” http://t.co/ZNkyikZvoD
— nofrills (@nofrills) October 5, 2015
※この記事は
2015年10月05日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
- 英語の冠詞についての優れた本2冊
- 【英語】単数形か、複数形か、それが問題だ(The teamなど「ひとつの集団」の..
- 「誤訳」は「意訳」「超訳」ではないし、「意訳」「超訳」は「誤訳」ではない。(実例..
- 重い話題が続いているので「ダジャレを言うのはだれじゃ」(&文脈とは何か)
- 英語圏お名前苦労譚
- "Go west" と "go south"...「西」か「南」か、英語の慣用句..
- 何かを称賛するときの英語の語彙の多さは、実にdopeだ。
- 《The + 比較級 …, the + 比較級 〜》の構文のバリエーションで、最..
- 辞書に載ってないかもしれませんが、政党の役職のChairmanは「幹事長」です。..
- 英国の「ブラック・フライデー」(ブラック・アイ・フライデー etc)