キューバと米国は今年、唐突に関係改善が進展して、今は大使館がオープンするところまで来ている。経済的にも断絶の時代は終わっている。これはバラク・オバマ大統領の最大の功績のひとつになることは間違いないが、おそらく最も堅実でゆるぎない実績になるんじゃないかとも思う。その関係改善の背後にいたのがフランシス教皇だ。昨年の中東訪問もすごかったが、この人は「宗教指導者」以上の役割を果たしておられる(同時代では、ダライ・ラマ14世やデズモンド・ツツ大主教と同じように)。
Pope Francis - the first pontiff to hail from Latin America - is credited with helping the recent thaw in diplomatic relations between Cuba and the US.
... He also called on Cuba and the US to "persevere on the path" of detente.
... On Thursday the Vatican said it hoped the Pope's visit would help bring an end to the 53-year-old US embargo and lead to more freedom and human rights on the island.
http://www.bbc.com/news/world-latin-america-34303109
ハバナの革命広場でのミサには、信仰を持たない人もおおぜい、話を聞きに来たという。その日の様子はガーディアンのlive blogにとてもよく記録されている。
教皇はハバナの後は地方都市を回り、キューバでの4日間の日程を終えて教皇は米ワシントンDCに空路移動して、カトリックの宗教家としてミサを行なうなどしつつ、国連という「国際政治」の場で演説もされている。
そのキューバ&米国ご訪問(の最初の方)についてと、唐突に出てきた「ロック・アルバム」の話をまとめて閲覧できるようにしたのが下記ページである。
教皇(法王)はロックスター? 本当にアルバム出すって。作曲はLe Ormeのキーボーディスト
http://matome.naver.jp/odai/2144328086577864901
この「ロック・アルバム」について、日本語圏でも「教皇がリードボーカル」という誤解が横行しているので注意されたい。
こんなのがあるのだが:
フランシスコ法王がボーカル ロックアルバムの発売が明らかに - ライブドアニュース
http://b.hatena.ne.jp/entry/news.livedoor.com/article/detail/10634794/
「ロック」の「ボーカル」というのは、少なくとも日本語では、マイクの前でその楽曲を歌うということを意味する。
しかしフランシス教皇の「ロック・アルバム」は、教皇の既存の音声(ミサのときのお話、賛美歌など)を、音楽に乗せてサンプリングしたものだ(と、ちゃんと元記事に書いてあるはずだ)。音楽は、ポップ・ロックからグレゴリオ聖歌までとバラエティに富んでいる。
元記事をちゃんと読んでないガセネタ。「リードボーカル」が嘘。教皇はお歌いになるのではなく既存の音声素材のサンプリング。プロデューサーは以前の教皇でも同じことをしている⇒ http://t.co/1RJNvY8NUG / “フランシ…” http://t.co/NJi9bFiLIq
— nofrills (@nofrills) September 27, 2015
また、はてなブックマークでは「ベネディクト16世との路線の違い」についての言及があるが、今回のアルバムのプロデューサーは、ベネディクト16世でもヨハネ・パウロ2世でも、同じようなことをしている。
今回の「ロック・アルバム」の報道は、最初はRolling Stone誌で行なわれたので、完全に「ロック・スター」式にやっているという点は、確かにベネディクト16世のときとはヴァチカンの態度が変わっているということだろう。
また、アルバムの音源の先行発表(最初の1曲)はSoundcloudを使い、RS誌の記事にエンベッドされるという形がとられていて、それもまた「普通のロック・ミュージシャン」のやり方だが、楽曲の方は「はてブ」の生煮えなみなさんが「反逆の音楽」云々といういつの時代だよという古臭いステレオタイプで語ろうとしている「ロック」のイメージとは全然違うと思う。
楽曲はこちらで:
http://matome.naver.jp/odai/2144328086577864901/2144331340791330903
楽曲の作曲者は、1960年代末から70年代のイタリアのプログレ・シーンの大物バンドだったというLe Ormeのキーボーディストで、イタリアのプログレッシヴ・ロックが好きな人なら「あの人か!」とピンと来るに違いないが、あいにく私はまったく疎いジャンルで、この曲自体の音としても、すいません、苦手である。聞くのが苦痛ということはないが、聞くと気分が上がるとかリラックスできるとかいうことは一切なく、ただ「早く終わらないかな」と思うばかりで、印象にもまるで残らない。私にはこの曲を聞くための耳がないのだろう。
Le Ormeのアルバムは普通に入手可能。日本盤も見つかる。
Felona E Sorona Le Orme by G-Tools |
Uomo Di Pezza Le Orme by G-Tools |
というわけで、教皇のアルバムの音楽を理解しないダメな私でも、フランシス教皇は、はてなブックマークの「コメント一覧」を非表示にしているだけで人のことを「罪深い」と呼ばわったはてなユーザー氏とは違って、「罪深い」呼ばわりはしないと思う。カトリックの「罪深い」の概念を私はよく知らないけど、とにかくそう思う。
ちなみに、教皇と意気投合した様子のラウル・カストロ大統領(キューバ)は、コロンビア和平でも大活躍である。
Colombia peace deal with Farc is hailed as new model for ending conflicts via @guardian http://t.co/NbqKXZG7j2
— José Pertierra (@guaguaP11) September 27, 2015
※この記事は
2015年09月28日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
【雑多にの最新記事】
- Twitterを「鍵アカ」にすると、「《検索したい語句》from:アカウント名」..
- "整理" されてしまった「翻訳・通訳のトビラ」の中身を、Web Archiveで..
- 美しかった。ひたすらに。
- はてなブックマークでわけのわからないスターがつけられている場合、相手はスパマーか..
- 虚構新聞さんの "バンクシー?の「『バンクシー?のネズミの絵』見物客の絵」に見物..
- 当ブログがはてなブックマークでどうブクマされているかを追跡しなくなった理由(正確..
- 東京では、まだ桜が咲いている。
- あれから1年(骨折記)
- Google+終了の件: 問題は「サービス終了」だけではなく「不都合な事実の隠蔽..
- 当ブログに入れている広告を少し整理しました。