そういうことが、2012年のシリア和平交渉(の努力)について、行なわれるほど時間が経過したということなのか、時間はさほど経過していないが局面が変わってそのときのことが完全に「過去」になったということなのか、あるいはほかの背景・文脈があるのか、私にはとんと見当がつかないが、ナミビア、コソヴォなど数々の紛争・調停・交渉の場で活躍してきたマルッティ・アハティサーリさん(北アイルランド紛争の和平プロセスにも絡んでいて、IRAの武器のデコミッショニングの証人になっている)が、シリアについても「調停者」として活動していたことを、ガーディアンのインタビューで語った。
成功しなかったシリア和平の取り組みの一端を、「調停役」が語っている。
http://matome.naver.jp/odai/2144241769244366601
記事では、その活動の中でも最も「ネタ」になりやすいことに絞り込んでいるが、きっともっと多くが語られたのではないかという気がする。
最も「ネタ」になりやすいことというのは、国連安保理常任理事5ヶ国(米英仏中ロ)の間での話し合いをセッティングする中で、アハティサーリさんがロシア代表の口から、「バシャール・アサドを退陣させることを含む和平案(紛争解決案)」を聞いていた、ということである。
記事ではその「ロシア代表の案」について、英国の外交官と、欧州のどこかの外交官(って、P3の誰かだったら英国じゃなかったらフランスしかいないですよね)が「どのくらい真剣な案だったのかが疑わしい」という見方をしている、ということも書かれている。
一方、その記事が出たあと、ロシアからは「そんな案はなかった」(要旨)という反応が出ている(タス通信)。
……ということをざっと一覧できるようにしたのが上記の「まとめ」のページである。
2012年2月というと、まだ「内戦」という言葉は(公的には)用いられていなかったはずだ。
とても昔のことのように感じられる。
そのころはまだ、緑を目立つように配した「自由シリア」(反アサド政権の陣営)の旗がついている、映像・写真による現地報告(現地のメディア・アクティヴィストによるものであれ、外国のジャーナリストによるものであれ)について、「アサド政権が人を殺しているというのはでっちあげだ」、「政権による攻撃など行なわれていない」という情宣が、さかんに行なわれていたはずだ。
「政府対反政府なんていう、単純な構図じゃあ、ないんですよ」と訳知り顔で言う人は、日本語圏にも英語圏にも、2ちゃんねるで「情勢分析」などをしている人々の間にも、報道機関に発言の場を持っている人々の間にもいた。現地に入った人の報告の映像で「あらゆる武力行使に反対する人々」が丁寧に紹介されていて、それに心を動かされている人がいるときに、「これはアルカイダだ」と説明してみせる人がいた。アサド政権側の暴力を報告する英語の記事を紹介すると、そのソースがどこであれ、「CNNを鵜呑みにするバカ」と罵倒してくる人がいた。
そんなころの話だ。
その「暴力」は、その「殺戮」は、その「殺し合い」は、到底ストップしそうに見えなかった。でもきっとストップするだろう、そのために国連もできることをしている、と多くの人は思っていただろう(私もそう思っていた)。アハティサーリさんの今回のインタビューはそのことを語っているのだが、事実としては、その「暴力」は全然止まらなかった。それから今までに、何万人が死んだだろう。何十万人が家を破壊され、家を追われただろう――いや、その単位は「何十万人」では済まない。
アハティサーリさんのインタビューについてのガーディアン記事は、「難民問題」についてのアハティサーリさんの言葉で締めくくられている。
"「こんなことが起こらないようにすべきでした」とアハティサーリ氏は言う。そして、「自分でまいた種です」" として欧州各国への難民(アハティサーリさんはrefugeeという言葉を使っている)の流入に言及している。27
— nofrills (@nofrills) September 16, 2015
"「この気の毒な人々をしっかりケアしていく以外の選択肢はないと思います。私たちは、私たち自身が生じさせた請求書の支払いをしているだけです」" 28/了
— nofrills (@nofrills) September 16, 2015
Isn't there enough room for us on earth?
#Syria #Kafranbel demonstration #WarCriminal #Assad #ISIS #ISIL 2015\08\29 pic.twitter.com/hNtBXXsIks
— Kafranbel English (@kafrev) August 29, 2015
![]() | 知の英断 (NHK出版新書 432) ジミー・カーター フェルナンド・カルドーゾ グロ・ハーレム・ブルントラント メアリー・ロビンソン マルッティ・アハティサーリ リチャード・ブランソン 吉成 真由美 NHK出版 2014-04-09 by G-Tools |
See also:
by @spearsden. 先日カフランベルの写真を検索したとき、「NFZを導入してくれ」という2011〜12年の写真を複数見て生々しく思い出したんです、日本語圏での「政府対反政府勢力なんていう単純な構図じゃないんですよー」論を。 http://t.co/rbgNn0NcNx
— nofrills (@nofrills) September 14, 2015
We will not stop asking, #HowManyMore, until the final line is written in the final book, until all violence against #Syria has ended.
— How Many More? (@HowManySyrians) August 22, 2015
934 pages include thousands and thousands of names of Syria's dead. #HowManyMore
Available at http://t.co/XwaL9tkdZj pic.twitter.com/mudZ9u4Xun
— How Many More? (@HowManySyrians) August 22, 2015
※この記事は
2015年09月17日
にアップロードしました。
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