しかし今では、東京大空襲にせよ原爆にせよ、「サヨク」を批判する立場の人(「右翼」と呼ぶと怒られるのでそうは言いません)が熱心で、数年前にBBCのくだらないクイズ番組が「奇跡体験アンビリーバボー」のノリで「二度、命拾いをした(=ラッキーな)男」として二重被爆者の山口さんを取り上げたときに大使館まで出てくる異様な騒ぎになった際には、「戦勝国のメディアがーーー」とかいう無根拠な罵声がいっぱい巻き起こり、BBCがこういうことを熱心にやってきたことなど知る由もない人々が、当該のクイズ番組が何を「ネタにしていた」のか(「日本の鉄道は原爆を落とされても動いていたのに、英国の鉄道はなんでもないことで止まる」ということである)を説明した私にも「BBCなんかの肩を持つのかーーーーっ」と挑みかかってきた。
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というわけで、原爆投下から70年、BBCの記者さんが広島を訪れて取材し、執筆した記事は、「戦勝国」の《語り(ナラティヴ)》――「戦争を終わらせた正しい判断」、「原爆を使っていなかったらもっと多く(のアメリカ人)が死んでいただろう」――に真正面から挑んでいて、感嘆した。
「原爆投下は必要なことだった」という一面的な《語り》を乗り越えようとするBBCの記事
http://matome.naver.jp/odai/2143877248936693801
アメリカでありがちな、「確かにひどいことだった、しかし……」の文体で、BBCのルパート・ウィングフィールド=ヘイズ記者は「確かに(原爆投下があったから戦争が終わったのだというのは)便利な語りである。しかしそれは、戦争が終わったあとにアメリカの指導者によって自分たちがなしたことを正当化するために構築された語りだ。そして、彼らがなしたことは、いかなる基準においても、おぞましい (horrendous)」とはっきり述べている。
原爆について、これほどまでに力強いレトリックに接することは、あまりないことである。
※この記事は
2015年08月05日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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