だが、少し掘ってみたら、そういう要素とは別の面が際立って見えた。「わが国の伝統」への忠誠心みたいなのが、(おそらくTwitterでの140字制限とあいまって)事実を非常に不正確に映し出しながら、人から人へと伝わっているようだった。別な意味で怖かった。
今からさかのぼること8年前の2007年に日本でも放映されDVD化もされていたのだが、2000年には「セレブリティ・シェフ」としての名声を確立していたジェイミー・オリヴァーが、『ジェイミーのスクール・ディナー』というテレビ番組を通じ、学校給食改善運動に正式に乗り出した。
https://en.wikipedia.org/wiki/Jamie_Oliver#Charity_and_campaigning
![]() | ジェイミーのスクール・ディナー DVD-BOX アーティストハウス 2007-01-25 by G-Tools |
ジェイミーがその運動を始めていた2006年、私は次のようなBBC記事を読んで驚嘆したことを覚えている。
Parents feed pupils through gates
Last Updated: Friday, 15 September 2006, 14:35 GMT 15:35 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/england/south_yorkshire/5349392.stm
つまり、学校でフィッシュ&チップスやハンバーガーのような脂っこくて健康的とはいえないような料理は出さないようにしたら、昼になると親が子供にそれらのジャンクフードを柵越しに手渡しに来るという。「だって子供が食べたいものがないって言うんですもの」。
そのころ、英国では「肥満」が社会問題化していた。その「肥満」も、「運動不足で最近肉がついちゃって」とか、「昔は格闘技をやっていたので全身筋肉だったが、年をとってやめたので脂肪になった」とかいう感じではなく、何と言うか、資料映像の「アメリカの肥満」のようなとても不健康な太り方に見えた。そういうのは、子供のころの食生活と生活習慣がもとになっている、というのが、ジェイミーの学校給食改善運動のベースだ。
それから何年も経過しているのだが、「子供の食生活が不健康だ」という問題はまだ残っている。
その先にあるのが、この件だ。つまり、「子供のお弁当と一緒に持たせるのに好適な紙パックのジュース」。砂糖をたっぷり使った飲み物は、それだけで子供の一日分の砂糖許容量を満たしてしまう。そんな飲み物は売るのをやめて、シュガーレス (no added sugar) のものに切り替えていこうと、大手スーパーのテスコが判断したという。
しかし、クリック数稼ぎなのか単に根が雑なのかわからないが、テスコが通常品(砂糖使用品)の子供向けのパッケージの製品の扱いをやめるブランドは複数あるのに、1つだけ、それも英国人にとってはめっちゃ思い入れの深いブランドだけに注目した報道機関のフィードが次々と出た。
結果、「ライビーナ (Ribena) がテスコの棚から消えるってよ」的な根拠のない説が、デジタルの海をぷかぷかと浮かんで流れていくことになった。
全容は下記で。
英小売大手テスコが、「砂糖使用」を理由に、あの国民的飲料の販売をやめるって? (風評注意)
http://matome.naver.jp/odai/2143809221388447201
それにしても、「ライビーナ」は今はサントリーの傘下なので、「オランジーナ」(初めてフランスで飲んだとき、あまりにおいしくて感動した)のように日本でも展開してくれればいいのに、してくれそうにない。「ライビーナ」(ブラックカラント、つまり黒スグリ、すなわちカシスの果汁を使った飲料)の売りである「ビタミンCが豊富」が、日本では表示できないのかなあ(オセアニアでは調査の結果、ライビーナは「言うほどビタミンCを含んでいない」という結論を下されている)などと思ったりもしている。
個人的には特に好きな味ではないのだが、たまにあると「懐かしめる」かなあ、というわけで……。かつてはDHCが扱っていたが(それも「健康食品」のように!!!)、サントリーがブランドを買ったあとはそれもなくなった。今も輸入品ならあることはあるが、輸入品としての値段付けどおりにお金を出せるかっていうと……。
Ribena Blackcurrant Drink (600ml) ライビーナのブラックカラントドリンク( 600ミリリットル) | |
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※このAmazonリンクの業者、Cooking Marvellous Limited という英国の業者だが「限られた素晴らしい調理」などと機械翻訳そのままで日本語ページに掲載している。英語で苦情のレターが書ける能力がない人は、少し慎重になったほうがよいかも。
※この記事は
2015年07月29日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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