今年は、かなり緊張感が高い感じがしていた。11thのボンファイアも12thのパレードも緊張感が高いのも、「毎年のこと」ではあるのだが、設営中のボンファイアが放火されたり、南部連合の旗だの、ナチス・ドイツのSSの旗だの、「北アイルランドのプロテスタンティズム」とは直接関係しない旗が掲揚されたり、カトリックに対する暴力を煽る言葉が交通量の多い道路脇に出現したりと、「緊張感が高い」というより「やばい」感じ、いやむしろ「ヤヴァイ」感じが、がんがん漂っていた。
で、どうなったかというと……というのが本エントリの主旨である。1週間も間があいてしまったが、書かないよりはましだろう(ほっとくとほんとに書かないからね……プリンス・オヴ・ウェールズとジェリー・アダムズの握手ですらスルーしているのが最近の私だ)。
今年は、12日の日曜日が「スレブレニツァの虐殺」から20年の式典で、12日は個人的にはそちらに意識を向け、時間を割いていたが、並行して11th/12thも見てはいた。
まず、11thは、年々巨大化するボンファイアがマジで危険(崩れたらその場にいる人たちには危険極まりないし、火の粉が飛んで大規模火災の原因になりかねない)という点が、今年は昨年までに比べてまじめに指摘・検討されつつあるような雰囲気はある。
Here's the moment New Mossley bonfire collapses shortly after it was lit. pic.twitter.com/526ywRl3Zw
— Jordan Moates (@jordanmoates) July 11, 2015
これが2時間前で、BBC NIにけが人のニュースがないので、誰も怪我はしていないのだろうけれども、そろそろこの「カルチャー」に規制かけないと、死傷者出るよ。
https://t.co/KHUxofRIys
— nofrills (@nofrills) July 12, 2015
しかし、ああいうのを「伝統」、「文化」と呼んで、それ自体最初から正当化されていると考える人々は、たぶん聞く耳など持っちゃいない。11thは、地域の10代から20代の若者たちを動員して、「アルスターのプロテスタントとしての誇り」を涵養するための社会装置で、それゆえに「法的規制」といったことが難しい(北アイルランドの、特にプロテスタントの側の言う「自由」は、libertyではなくfreedomで、欧州の極右政党がよく党名に戴いている「自由」である。アメウヨさんとは本当によく似ている)。
Irish Times bonfire prep gallery and a few more http://t.co/UKqrm2jAT2 @GettyImages @GettyImagesNews @IrishTimes pic.twitter.com/5Mt13e5Ynm
— Charles McQuillan (@photomcq) July 10, 2015
住宅街のど真ん中での巨大ボンファイアは、マジで火災の危険があるので、11日の夜は家々の窓を板でふさいで、住民は屋外に出るよう指示されていたという。
Tensions rise ahead of Orange Order parades http://t.co/ifR1BqSMBp via @IrishTimesBiz pic.twitter.com/gSyp8r5RaZ
— The Irish Times (@IrishTimes) July 10, 2015
BBCがギリギリのヘッドライン立ててきた。本当に、ボンファイアの建蔽率みたいなの作らないと死傷者出るって。「なるべくでかくする」のは、紛争終結後のトレンドでしょ(特に武装解除後の)。 / “11th night: Fire cre…” http://t.co/vIJyZCSwBe
— nofrills (@nofrills) July 12, 2015
One bonfire. 6 fire engines. 35 firefighters. 60 homes. 1,000 people. No-one hurt. pic.twitter.com/8adRaxJdg4
— Mark Simpson (@BBCMarkSimpson) July 12, 2015
多くのボンファイアは巨大化し、巨大化しているものもしていないものも、シン・フェインやSDLPの政治家の選挙ポスターや、アイリッシュ・トリコロールの旗を一緒に燃やして「火あぶり」にする。
セクタリアニズム・ナウ。他人の島に侵略・入植した側が、元からいた人々が掲げている旗を「外国の旗」と呼び総ツッコミを受ける。北アイルランドの場合、その両者がだいたいプロテスタントかカトリックかで分かれているのでセクタリアニズムになる。 pic.twitter.com/10gl221XNK
— nofrills (@nofrills) July 12, 2015
そういうことをしないものもあるのだが(というか、全土で見れば旗を燃やすなどしないもののほうが多いのかもしれない)。
Braniel bonfire as per usual no.flags...we are here to enjoy our own culture not burn anybody else's pic.twitter.com/cQIQFZGZVg
— ian_shanks_ (@shanksybraniel) July 11, 2015
@shanksybraniel @FergalMcFerran the one near me is also flag free pic.twitter.com/KCGZD8Uomg
— Alan (@alanlaw) July 12, 2015
今年は、アライアンスのナオミ・ロングさん(2005年の総選挙でピーター・ロビンソンからウエストミンスターの議席を奪った政治家)が「火あぶり」の被害にあっている。下記は彼女のツイートと、それに反応したカイル・ペイズリーさん(フリー・プレスビテリアン教会: 故イアン・ペイズリー・シニアの息子で、DUP所属の政治家であるイアン・ペイズリー・ジュニアとは双子の兄弟)、ニール・オドネルさん(シン・フェイン所属の政治家で、東ベルファストのショート・ストランドの人。元ベルファスト市のロード・メイヤー)の会話。最後に「ユーモア」で落としているのが、この人たちらしい。
So far my posters have reportedly turned up on Chobham St, Pitt Pk and Orangefield Pk bonfires. Any others folks? #SpotTheGingerNinja
— Naomi Long (@naomi_long) July 11, 2015
@naomi_long Anything yet from unionists on this?
— Kyle Paisley (@JCKP1966) July 11, 2015
@JCKP1966 So far? No.
— Naomi Long (@naomi_long) July 11, 2015
@naomi_long @JCKP1966 same every year. If my very own effigy last year. Just some posters this year though.
— Niall Ó Donnghaile (@NiallSF) July 11, 2015
@NiallSF @naomi_long @JCKP1966 maybe you were more popular last year or more hated, can't work out which? pic.twitter.com/ngpJICaqQK
— Pól (@AIMWoundedKnee) July 11, 2015
@AIMWoundedKnee @NiallSF @JCKP1966 Or there's a shortage of boiler suits? Lol
— Naomi Long (@naomi_long) July 11, 2015
@naomi_long @AIMWoundedKnee @JCKP1966 yeah, that'll be it
— Niall Ó Donnghaile (@NiallSF) July 11, 2015
シン・フェインの政治家たちはこんな目にあわされている。ミシェル・ギルダニュー(今年の総選挙で落選したが、2010年はユニオニスト相手にほんの数票の差で当選していた)。トム・エリオット(UUP、というかオレンジ・オーダーと言うべきか)の発言もよく見ていただきたい。(こういう事実にも関わらず「英国ではヘイトスピーチは規制されている」とか言う人はいるんだよね。)
Effigy of Michelle Gildernew for 'public hanging' at loyalist bonfire. #culture #Twelfth pic.twitter.com/iTEb7qL0ix
— Short Strand (@Short_Strand) July 12, 2015
. @gildernewm says bonfire effigy "makes reference to a quote by former UUP Leader @telliott_UUP when he referred to SF voters as 'scum'."
— Rodney Edwards (@rodneyedwards) July 13, 2015
. @telliott_UUP - bonfire effigy "much less of an action compared to the murdering of our citizens in sectarian acts" http://t.co/ewGAjll1sZ
— Rodney Edwards (@rodneyedwards) July 13, 2015
こういう疑問が出てくるのは当然だ。
Fundamental question is what part of this flag poster effigy cross burning bonfire culture do unionist leaders want as "our shared future?"
— Alex Maskey MLA (@AlexMaskeyMLA) July 12, 2015
もちろん、ミシェル・ギルダニューだけではない。
McShane effigy attached to loyalist bonfire :: Irish News -- Connla Young: http://t.co/stOPnVWYjU #Ireland #Ulster
— nuzhound (@nuzhound) July 14, 2015
Effigies of Bobby Sands, Gerry Adams and Martin McGuinness 'placed on bonfire' http://t.co/DH08H9vMgg pic.twitter.com/6qepK49dwg
— Belfast Live (@BelfastLive) July 11, 2015
で、警察(PSNI)はこういうことを本気で「問題」だとは思っていない。今年は去年のようにカトリック教会からかっぱらってきた聖母の彫像を火にくべようとするなどということは起こらなかったが、政治家のポスター燃やしなどは近年エスカレートしていて、誰もコントロールできていないのに。
@JulieMoore_23 @shanksybraniel I've been round plenty Julie and they're getting nastier as the years go by bit seems. pic.twitter.com/APskmeh52Z
— G Mac an tSabhasaigh (@savo01) July 11, 2015
@JulieMoore_23 @shanksybraniel that's last year, this is this year. pic.twitter.com/KQK8DZoowB
— G Mac an tSabhasaigh (@savo01) July 11, 2015
@savo01 Well fair enough. Can't agree with that.
— Julie Moore (@JulieMoore_23) July 11, 2015
というか、実際には、こういうことを「問題である」と言うと、エクストリーム交渉がさらにエクストリームになることからもわかるように、ロイヤリスト/ユニオニスト/プロテスタントの反発がえらいことになるのだ(今年は同時期に米国の南部の白人優越主義者のことが少しは大きなニュースになっているので、「あれと同じようなものですよ」と言えば、少しは通じるのではないかと思う)。
Police say they are unlikely to make arrests over bonfire effigies because evidence was burned http://t.co/jTFri5nzsM pic.twitter.com/fBk8N1hIOe
— The Irish News (@irish_news) July 14, 2015
Best worst excuse ever? PSNI say prosecutions over bonfire effigies unlikely 'because evidence burned': http://t.co/CG7mzyLnnn @irish_news
— Brendan Hughes (@brendanhughes64) July 14, 2015
でもまあ、今年は事前に懸念されていたようなひどいことは起こらなかった。
Tricolours and effigies burnt, but loyalist bonfire night passes off relatively peacefully http://t.co/be2Ue7j716 pic.twitter.com/irk8G7QTrf
— The Irish Post (@theirishpost) July 13, 2015
そんな中、北ベルファスト拠点のロイヤリストで、かつて覆面をしてUVFの一員としてメディアの取材に応じていた人で、現在はPUPの政治家というか政治活動家であるウィンストン・アーヴァインさんは、「過激」なことをせず、地域の楽しい集まりとして組織されたウッドヴェイルの11thのことを、次のように報告している。
#WoodvaleFestival Fantastic family-friendly atmosphere-11th July celebrations.Positive expression of local tradition pic.twitter.com/e1bQ8jx2vd
— Winston Irvine (@propatriaeamore) July 11, 2015
#WoodvaleFestival Notice this community does not need to burn flags/paraphernalia to celebrate local tradition. pic.twitter.com/IPIKizdqDr
— Winston Irvine (@propatriaeamore) July 11, 2015
#WoodvaleFestival Local people taking responsibility and showing positive leadership. Well done to all involved. pic.twitter.com/4tWIwCFZZ5
— Winston Irvine (@propatriaeamore) July 11, 2015
しかし、このWoodvaleというのはですね……
2年前にあの写真が撮影されたのがウッドヴェイルですよ……
Twelfth riots: Orange Order blames Parades Commission for creating crisis on Belfast streets - BelfastTelegraph.co.uk via kwout
……というわけで、12thのパレード(今年は13日開催)についても一緒のエントリにしたかったのだが、もう既に十分に長いのでパレードについては次項に。
ボンファイアが済んだ翌朝の様子。あの「住宅街の中の巨大ボンファイア」のところ(東ベルファスト)では、板張りを取り外す作業。
Work underway to remove wooden boards from around 50 homes in the Chobham Street area. The bonfire is still alight. pic.twitter.com/XW5PZaZr7M
— Sara Moore (@saramoore_utv) July 12, 2015
AnPにこんなのがある。
Bonfire hate crime challenge to unionist leaders and Orange Order pic.twitter.com/8Mt8s1SoWX
— An Phoblacht (@An_Phoblacht) July 13, 2015
※この記事は
2015年07月20日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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