日本時間で9日に日付が変わって少しした後から、ニューヨーク証券取引所(以下「NYSE」)で取引が全面的に停止するということがあった。システム障害が原因といい、日本が朝を迎えたころ、というか私が起きてPCを立ち上げたときには既に復旧していた。
その件について、英語圏("海外")と日本語圏の報道記事の見出しを見比べてみたらなかなか興味深く感じられたので、その点、書きとめておこうと思う。
NY証取、ウォール・ストリート・ジャーナル、ユナイテッド航空で一斉にシステムダウンしていた件、ガーディアンのUS版ではトップニュースの扱いですが(「復旧した」段階): 1/3 pic.twitter.com/vHWmYm1yFc
— nofrills (@nofrills) July 9, 2015
……UK版のガーディアンのトップページにはほとんど見えないようなところに小さく出ているだけで(トップニュースの右の片隅。画面下のほうの「このほかの世界のニュース」のところに写真入ということもない): 2/3 pic.twitter.com/n4toANU7x5
— nofrills (@nofrills) July 9, 2015
…国際版でもヘッドラインのところに写真なしの扱い(写真つきで出てる「NSAがドイツを…」のウィキリークス暴露より大きくてもよさそうな気はします。ウィキリークスのはロイター記事だし)。いずれも「NYSEのシステムダウン」の話だけ。3/3 pic.twitter.com/1N0lOlusWG
— nofrills (@nofrills) July 9, 2015
ちなみにBBC News(日本からの接続での画面)はこう。キャプチャは今さっき。 pic.twitter.com/UsjdFbzB5b
— nofrills (@nofrills) July 9, 2015
英語圏では、このように、2015年7月9日朝9時台(日本時間)の見出しは「NYSEが取引を再開した」ことを伝える見出しが並んでいる感じ。
一方、その時間帯の日本語圏のニュースの見出しでは、私が見たところで目に入ったものは、「NYSEが取引を停止した」というものだった。復旧する前の記事だ。
当該記事のタイムスタンプは、7月9日1時8分で、つまり「古い記事」なのだが、続報らしきものは見当たらない。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150709/k10010144071000.html
BBCなどでは、「ニュースは最新情報を提供するもの」という原則があるのだろうと思うが、同じURLで(履歴を閲覧可能な形で残すことなく)さっくりと記事を上書きで更新することがよくある。
例えば「今日、○○報告書が公表される」という見出しで記事を立てておいて("So-and-so report due today" のように)、報告書が出たら「○○報告書、警察の行動には問題なしと結論」というような見出しにして("So-and-so report: Police acted lawfully")、記事も大幅にアップデートする、という形だ。同じURLを見るタイミングによって記事の内容が変わってしまうということではあるが、そのURLを見れば最新の情報が得られるということでもある。
一定の時間をすぎたり、区切りがついたりすれば、その「同じURLで上書き更新」というのはストップし、続報があれば新たに別のURLが立てられる。だが、それらのURL自体は、その後もずっと削除されることなくアーカイヴされるのが原則だ。
日本の報道機関の場合、特にNHKを含むテレビ媒体は、一定の時間(数時間から数日の単位)が経過したらURLそのものが使えなくなってしまうし(記事をアーカイヴせず削除する)、新聞でも記事の閲覧には制限がある上に、一定期間(1年など)経過するとURLが使えなくされてしまうこともあり、要するに、「アーカイヴ性」という点ではまったく期待できない。
先日、アメリカで教会が燃やされているということについて、Twitterで一般の人が1996年の報道記事を引っ張り出してきて「20年前から問題はある」と述べていたが、それは「特別のデータベースを使わなくても、一般の人が使えるインターネットだけで、1996年の記事が読める」という環境があるからこそだ。
なお、1996年となるとさすがに「よく残ってるなあ」と思うが、私が普段使っているBBCでも1999年以降の記事は余裕で、普通に探せる(ただし、最も最近のサイトのリデザインで、BBCサイト内検索がどうしようもないほど低品質で使えないものになってしまったので、実際に探すのはちょっと大変かもしれない……「日付順ソート」すらできなくされた)。
ちなみに、日経新聞ではこんな感じ。こちらはさすがに、「最新情報が細かくわかる」ようになっているが、それでも「同じURLで上書きする」ということはしていない。日本の「新聞」のウェブ版は、やはり根本的に、「紙に印刷したもの(あとから書き換えたりしないもの)」なのだろうと思う。
最近、ガーディアンでよくあるのだが、大きな出来事(例えば先日のチュニジアのビーチリゾート襲撃事件)があったとき、第一報は通信社の記事をそのまま出しておいて、数時間以内に同じURLで自社の記者の取材した記事に置き換え、というのもある。AFPやロイターの記事だったはずが、6時間後くらいに再度チェックすると、ガーディアンの記者の署名記事になって、内容も大きく変わっている(情報が増えている)、というケースだ。
なので、「確かAFPの記事にかくかくしかじかということが書いてあったよなあ」と思って見直したりする場合は、ガーディアンでメモっておくととても不便な思いをすることもある。(そういう意味で、AFPの英語記事をチェックしたいときは、米Yahooのニュースが便利。)
※この記事は
2015年07月09日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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