それに、「データの量」がある程度は確保される場合でも、昨今の「バイラルメディア」的なものの流行で爆発的に増えた、ほぼコピペ・パクリで量だけはやたらと作られる「○○したいあなたが知っておくべき○つのポイント」(日本語圏ではそういうのより「マル秘芸能ニュース」みたいなブログ記事や、「2ちゃんのまとめ」が多いかも)みたいな、中身が薄くて内容の正確性も疑わしいような記事ばかりでは、「精度」という点での問題は残る。
ずーっと前、Googleの画像検索が一般に利用可能になったときに、「ジェリー・アダムズの写真を探すと、マーガレット・サッチャーの写真が出てくる」という現象が発生してみながお茶をふいた。問題のページは、見出しなど大きく評価される場所にはアダムズの名前があったが、使われている写真はサッチャーで、「アダムズと敵対関係にあるサッチャー」とキャプションがついていた。当時のGoogleさんは、これを「アダムズに関連した写真」として収集した。そして人間が「アダムズ」と入力したときに「お求めの写真はこちらです」とばかりに表示していたが、そこで決定的なズレが生じていたわけだ。だが、アダムズくらいにデータがたっぷりある人物なら、そういう「不具合」は徐々に修正されていくことが期待できる。
問題は、世界のあらゆる事象について、そのような期待ができるわけではないということだ。先ほど書いたGoogle Photosのタグ付けの「バグ」も、たぶん黒人の顔写真のデータが(あのような失礼な判定をしないようにするためには)足りていないというのが問題だったのだろう。
というわけで、話は変わるが、先ほどこのような写真をRTした。
この写真の出所について調べてみたら、「データが少ない」ことに起因する「精度の低さ」という問題に遭遇したので、メモをしておくことにする。
nofrills / nofrills
さっきRTしたネオナチの写真を調べようとGoogle画像検索をしたら、「クリエイティヴィティ・ムーヴメント」 https://t.co/d9XouZPwaH が表示されたのはよいのだが、全然関係ない日本の学術論文がトップに出てくる件。 http://t.co/q1mKN1Dw3S at 07/03 00:18
Creativity (創造性), movement (動き、運動) のいずれも極めて一般的な語で、例えば「子供の発達」についての研究論文にありがちな組み合わせである。そしてそれは、固有名詞の「クリエイティヴィティ・ムーヴメント」とは関係ない。
画像検索のURLはこちら。検索結果はこんな感じだ。
ここに表示されているウェブページの一例。Bloggerを使った「リスティクル」的なブログ記事である。
もうひとつ別の検索結果。上記のBloggerのサイトの記事をスライドショーに仕立てたものだ。
この「ネオナチ組織一覧」は、おそらくこういう「バイラルメディア」様のものの「記事のテンプレ」のひとつだろうと思う。
nofrills / nofrills
「クリエイティヴィティ・ムーヴメント(チャーチ・オヴ・クリエイティヴィティ)」は白人優越主義の新宗教。今年3月に英リヴァプールでビラまきが確認されてるとか、拡大してるのかね。いずれにせよ規模としては取るに足らない規模のはず。 https://t.co/d9XouZPwaH at 07/03 00:23
nofrills / nofrills
情報化社会においては、こういう思想集団で問題になるのは「規模(人数)」ではないというのは、21世紀に入っていくつかの例で示されている通り。 at 07/03 00:26
「クリエイティヴィティ・ムーヴメント」(元はチャーチ・オヴ・なんとかという名称)は、ウクライナ人が始めた白人種(コーカソイド)が世界の支配民族であるという新宗教で、正直、よくわからんです。ウィキペディアでご確認を。
nofrills / nofrills
で、Googleの画像検索であのネオナチの写真についてこの集団の名前が表示されるというのも実は全然正しくない(掲げるシンボルが違う)。こういうフリンジ集団に関しては、Googleのアルゴリズムが頼りにできる「実例」が少ないので、不正確な結果が返ってくることがよくある。 at 07/03 00:28
nofrills / nofrills
なぜこんな結果が返ってくるのか。Google画像検索の結果に示された「この画像を含んでいるページ」が、「リスティクル(まとめ記事)」の形式で「写真、組織名」の順で構成されており、「クリエイティヴィティ・ムーヴメント」というテクストの下にこの写真がおかれている例がいくつか。 at 07/03 00:31
nofrills / nofrills
そして最終的に確認できたのが http://t.co/rXA6BB9nwO のページ(写真19点目)。写真が撮影されたのは2010年8月14日、場所はノックスヴィル。ミシガン州デトロイトを拠点とするナショナル・ソーシャリスト・ムーヴメントのデモを撮影した写真の一枚。 at 07/03 00:37
nofrills / nofrills
この界隈は組織が分派していてわかりづらいが、ナショナル・ソーシャリスト・ムーヴメントの前身はANP(アメリカン・ナチ・パーティ)。 https://t.co/DALBCNIrLS at 07/03 00:42
ANPの分派組織のひとつなので、この集団は「クリエイティヴィティ・ムーヴメント」と関係はあるかもしれないが(詳細は私には確認のしようもない)、クリエイティヴィティ・ムーヴメントそのものではない。
むしろ、「クリエイ(略」ではなく「ナショナル・ソーシャリスト・ムーヴメント」、あるいは「アメリカン・ナチ・パーティ」という組織名が、Google画像検索結果の画面に出てこなければならない。
これを「バグ」と呼ぶつもりはない(単に「限界」だと思う)。Googleの検索にはこういう「限界」があるということは、利用者は一応知っておかないといけないのではないかと思う。
※この記事は
2015年07月03日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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