「よくできた映像」なので、もしもリアルタイムで(ソーシャル・ネットで「みんな」が口々に「これはすごい」、「感動した」、「これぞヒューマニティ」と絶賛しているときに)見ていたとしたら、私も乗せられていたかもしれない。
その映像が「偽物 fake」というか「作り物」だったことがBBCによって検証され、「作者」にインタビューしてまとめられた記事が出たときに、私は初めてこの「勇敢な少年」という映像のことを知った。
その一連の経緯を記録しておくために、Twitterをさかのぼって調べてみて、私が見ているタイミングでTLにこの映像が流れてこなかったのは、ただの偶然だったんだろうなと思った。私がフォローしているアカウントのいくつか(報道機関を含む)も流してたし、何より、シリアからの「映像レポート」のハブのようなところ(ウェブサイトとして存在しており、TwitterにもYouTubeにもアカウントを持っている)がプッシュしていたのだ。
しかしそれでも、私がフォローしている中では「釣られていない」アカウントが目立っている。BBCの「ソーシャル・ネット上の話題」専門のTrending(上述の調査記事を出したところ)はもちろん、「ソーシャル・ネットでのニュース」の可能性をずっと追求してきたアンディ・カーヴィン(元NPR, 現Reported.ly編集長)も、「ソーシャル・ネット上に流される情報」の真偽確認や検証を行なうプロ集団のStoryfulも。
……そういう流れがあってのこれです。時間かけて書きました。お読みください。
「ソーシャルメディアによる新しいニュース」のひとつの到達点、YTNewswireとStoryful
http://matome.naver.jp/odai/2143473987594182801
YouTube Newswireは、そのままでは「ニュース」にならない「一般市民、市民ジャーナリストによる記録」を精査し、「ニュース」になるものをピックアップして流してくれる(wireしてくれる)新規サービス、という認識でよいと思います。サービスの中身はStoryfulが担当するので(彼らについてもかなりちゃんと書いてあります)信頼性は高いです。
YouTube Newswire http://t.co/uEhIl72ngj は、BBCなど大手が既に使っていたソーシャル・ネット上の映像などの真偽検証サービス(例: http://t.co/RfrcDoSho3 )が一般人の利用にも開放されるというイメージでよいかと思います。
— nofrills (@nofrills) June 20, 2015
何しろ、Googleが関わって同じ分野で新規の取り組みが3件、同時にリリースされているという状況で、リアルタイムのログには、振り返ってみると「タメ」だとか「フリ」だとかいったものとわかるような、そのときのワクワク感のための情報(そのワクワク感を共有する目的でもなければ、後から見れば排除してしまってかまわないようなもの)なども多くて、そこの整理にめっちゃ時間かかったんですが(結局は残したりした)、そういうのは出来上がりからは見えないだろうと思います。ここのブログではなく「Naverまとめ」を使っているのは「ツイートの埋め込みの時間と手間がかからず、書くことに集中できて、効率がよいから」&「ページの見た目がそこそこよいから」(グリッドでデザインされているし、ごてごてしてない)なんですが、「ページビューごとにお金が入る」ということで、ここを使ってるだけでdisる人もいます。でも「1ビューごとに」というわけではなく、Naver独自の「ポイント」制で(その中身はユーザーにはわからない)「1円」のお金が発生するためにどのような質のpage viewがいくつ必要なのかわかりません。Page viewなのかどうかさえ実はわからない。YouTube Newswireの「まとめ」はたぶん、時給30円くらいですかね(300円ではなく)。
なお、ほぼ同じタイミングでリリースされたのは、YouTube Newswireのほかに:
First Draft:
アンディ・カーヴィンのReported.lyやエリオット・ヒギンズのBellingcatなど、ジャーナリストや研究者がネット上の情報を検証したり整理したりして流しているサイトをアグリゲート。これはオールスター・キャストですよ。ザ・ダーティ・マック並みの。
10年前のイラクで、サラーム・パックスとリヴァーベンドとジャラールさん一家と医師のアリさんとモスルの女子大生……といったブログをRSSリーダーに放り込んで毎日読んでた人なら、「それに近い感覚」と言えば伝わるかな。
RSSリーダーが「終焉した」あとで、こういうのがね。Googleが「人力」にシフトしてきたなあという感じ。
WITNESS Media Lab:
※まだ中を見ることができてません。人権上の問題の記録・告発のための映像に特化。
.@witnessorg launches @WITNESS_Lab a new tool for advancing the use of eyewitness video in human rights advocacy - http://t.co/sDocMZcSRA
— Peter Gabriel (@itspetergabriel) June 19, 2015
Ammnesty InternationalやHRW, Oxfamなど既に「自前のwire」を持ってる状態の国際NGOに、さらにひとつ加わるというイメージかな……そこにGoogleがかんでいる、と。
ちょっと気がかりなことがあるとすると、StoryfulがNews Corp傘下なんで(2013年に買収された)、News CorpとGoogleのつながりはコントロール可能なのか、という点。News Corpも今後ずっと今のようなままというわけではないにせよ。
※この記事は
2015年06月20日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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