北アイルランド、ベルファストの北東側、カリックファーガスに行く途中にグレンゴームリー (Glengormley) という街がある。行政区分としてはニュータウンアビーの一部だ。
https://en.wikipedia.org/wiki/Glengormley
北アイルランドの海岸側はだいたいざっくりと「プロテスタントが断然多い」のだが、調べてみるとここはそうでもない。"43.78% belong to or were brought up in the Catholic religion and 47.89% belong to or were brought up in a 'Protestant and Other Christian (including Christian related)'" だそうだ。総人口2500人ほどという小さな規模の街で、プロテスタントの側から「そのほかのキリスト教」(ものみの塔のような新興宗派や、キリスト教関連の新宗教も含む)を除外してもそう変わりはないだろうが、カトリックとプロテスタントの人口に占める割合はほぼ半々だ。
ただし、何かのイベントでもあれば、街の外からも人がやってくるので、この「半々」というバランスは崩れるだろう。そして北アイルランドでそういう「イベント」があるのが、そう、夏! ついに到来する夏の例のシーズン!
Erection of glengormley Orange arch pic.twitter.com/Haq0vkpStt
— Mossley Orange (@ontheboyne) June 16, 2015
というかここ、4月に鼓笛隊(バンド)のパレードが予定されたのがパレード委員会によって止められてて(そのときのシン・フェインの担当者、ケリーさんのコメント)、今回は「ミニ12th」と呼ばれるパレードをする側(つまりロイヤリスト)が「ばっちこい!」な体制だったと思われるのだが、ここで、BBC News NIなどがスルーして、Twitter上(やFBでもたぶん)のそちら界隈だけで出回っている「リパブリカンによる嫌がらせ」の写真がある。
これについて、本稿ではメモっておきたい。なぜなら……
「祝うな、呪え」事案なので。
(・_・)
その、ロイヤリスト界隈でだけ出回っている写真はこれ。アカウント名がすごい。
Sectarian graffiti sprayed across Glengormley as republicans try to raise tensions before the mini 12th. pic.twitter.com/jzgYNUClQT
— 36th (@ShankillSomme) June 18, 2015
さらに写真、もう1セット。
Another night of sectarian spray-painting across Glengormley. Clear attempt to raise tensions ahead of mini 12th. pic.twitter.com/QX3gPeCFaH
— Phillip Brett (@PhillipBrett21) June 18, 2015
これが「ロイヤリスト」の間でぐるぐる回っているのだが……
Glengormley graffiti designed to raise tensions prior to 'Mini Twelfth' parade. Interesting to see 'GARC' mentioned! pic.twitter.com/eB4SINzzTd
— ThePurpleStandard (@UlsterWillFight) June 18, 2015
Although the spelling is bad the sectarian nature of this graffiti can be seen. #Glengormley #SharedSpace? pic.twitter.com/fE1TcOiuKH
— Ryan! (@RyanInUlster) June 18, 2015
これが……(「IRA」と書けば「セクタリアン」になるというのがそもそもおかしいのだけれど)
ああ、reroteって何かと思ったら、rerouteと書こうとして綴れてないのか。「呪ってやる」と書くつもりで「祝ってやる」と書いたのと同じ類のバカだ。「フルート・バンドのパレードのコースを変えろ」と言っているんだ。
— nofrills (@nofrills) June 18, 2015
しかしINLAって、IRSPが http://t.co/T8s6DT8wcn ということで1ヶ月ほど前に「武装闘争の時代は終わった」宣言してるのと辻褄が合わないのだが。勝手に書いてるだけ? あるいはINLAの内部で闘争継続の人たちが分派?
— nofrills (@nofrills) June 18, 2015
これが、さらにおかしい。
Loyalists must think we are daft. Even any old hood out there can spell TAL. This was the work loyalists. Glengormley pic.twitter.com/qWxf6nu1LK
— equality for all (@italianirish81) June 18, 2015
「ロイヤリストはおれらをバカだと思っているようだが、こっち側では誰だってTALくらい綴れるわ」と。
……あれ。 (・_・)
……確かに。 (^^;)
Tiocfaidh ár lá というのはアイルランド語で、 "our day will come" という意味の「アイルランド統一」陣営(特にPIRA)のスローガン。獄中のボビー・サンズが使ってたとのことで、サンズを讃える絵に描きこまれていたりもする。
これが書けないリパブリカン活動家はいない。
一方、グレンゴームリーに書かれた文字は、Tiochaidhではなく、Tiocfahich...
……Tiocまで合ってる。(・_・)
(これ、書いた人、ディスレクシアの検査受けたほうがいいかもしれない。文字の誤認のパターンが気になる。)
というわけで、到底リパブリカンが書いたとは思えないのだが、となるとロイヤリストの自作自演で、そうなると「INLA」というのも「単に知ってる組織名を書いた」だけの可能性が出てくる。
さらに、「知ってるから書いた」っぽいのがGARC。これは「ロイヤリストのパレードがうちの住宅街を通ることを禁止したいナショナリストの住民団体」のひとつで、北ベルファストのアードインの団体の名称だ。
というわけで……
@Kalista63 @petergraham110 north Belfast Garc have a say in Glengormley pic.twitter.com/bpqhIdIIIp
— Phil Hamilton (@aac_warrior) June 18, 2015
@aac_warrior @petergraham110 No one is buying that, Phil. Look at the flippin' spelling. Why would there be GARC fraffiti in Glengormley?
— Paul Evans (@Kalista63) June 18, 2015
何この漫才。
あげく、この「ロイヤリストによる訴え」のキャンペーンでTwitterで地名がトレンドしてしまったので、スパムの標的にされて、こんなことになってる。
結論: 夏ですね。
BBC News NIでスルーされている証拠:
ベルファスト・テレグラフもこう。
Northern Ireland Breaking News, Sport, Business and Entertainment from Belfast to Derry/Londonderry - BelfastTelegraph.co.uk via kwout
BTは一応記事はあるんだけど、記事に名前出してる記者はいなくて(スタッフ・レポーターのクレジット)「DUPの人がこう言ってます」ということしか書かれていない。
http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/northern-ireland/dissident-graffiti-a-bid-to-stir-up-tension-in-glengormley-31313407.html
自作自演だったとして、このくらいの「デマ」は、ニュースにもならないだろうなと思います。(ほかにもっと深刻な「デマ」がニュースになってないことを私は知っている。)
※この記事は
2015年06月19日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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