「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

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2007年05月17日

ハリー(・ポッター)と将軍の決定。

チャタムハウスが「イラクは崩壊に直面している」と断言したり:
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/6663935.stm

ただでさえぐちゃぐちゃになっているガザに対し、イスラエルがまた「ロケットのお返し」として空爆を行ったり:
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/6664917.stm

という日々だが、Henry Charles Albert DavidことPrince Henry of Walesこと、ほんとにpotな「ハリー・ポッター」が、自身は「王子である前に軍人」という態度を示していたにも関わらず、4月には軍は「王子をイラクに派遣する」という結論に達していたにも関わらず、結局、イラクに派遣されないことになった。英陸軍の一番偉い人であるダナット将軍が決断した。

Prince Harry will not go to Iraq
Last Updated: Wednesday, 16 May 2007, 21:39 GMT 22:39 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/6663053.stm

Prince Harry will not go to Iraq, head of the army rules
Richard Norton-Taylor
Thursday May 17, 2007
http://www.guardian.co.uk/Iraq/Story/0,,2081381,00.html

ガーディアンの記事がいいよ。リチャード・ノートン=テイラーだし。

もしほんとに彼が派遣されることになったら、イラク南部がどんどん混乱していく中、SASの最精鋭の人たちを王子の護衛につけなければならないとかいろいろ言われていたけれど、ダナット将軍は例によって「メディアが悪い」論をぶちかましたようだ。けっこうなことで。

将軍いわく、「一部のメディアが細かいことを書くから、ムクタダ・サドルのマフディ軍が『王子を標的に』と怪気炎をあげる始末、たいがいにしていただきたい」。(<大胆な意訳)

いやー。メディアが書こうが書くまいが、彼は狙われます。マフディ軍じゃなくても他の誰かが狙うと思うし、その「他の誰か」はサドル一派よりずっと洗練されたインテリジェンスでかかってくるだろうし。

そんなことはどうでもいいのよ。ガーディアン記事末尾に、「息子をイラクで死なせた親」2人の意見が短く掲載されているのでそれを。

Reg Keys, whose son, Thomas, was killed in Basra in 2003, said he found the decision distasteful. "It would appear that Harry's life is more valuable than my son or the other nearly 150 service personnel who've given their lives."

Rose Gentle, whose son, Gordon, was killed in Iraq, said: "If it's too dangerous for Prince Harry, it's too dangerous for the rest of the boys. They should all come home". Mr Keys and Mrs Gentle are both members of Military Families Against the War.


Reg Keysさんは2005年総選挙でトニー・ブレアの選挙区(セッジフィールド)で立候補して(むろん、当選するつもりではない)、すばらしくシンプルで力強い言葉でブレアに対する批判を語った人。彼は「これではハリーの生命は、息子を含めこれまで戦死した150人近くの軍人より重いとでもいわんばかりだ」とコメントしている。

Rose Gentleさんは息子の死後Stop the War Coalitionなどで「反戦」のメッセージを訴え続けている人。彼女は「ハリー王子にとって危険であるなら、他の兵士たちにとっても危険だ」とコメントしている。

それから、BBCのほうではRepublicという王政廃止論者のグループと、マイケル・ポーティロ(!)のコメントを紹介している。
But Republic, a group which campaigns for an elected head of state, said the decision showed that "the prince should never have joined the Army".

In a statement it said: "This is a scandalous waste of taxpayer's money, brought on by the Windsor family's obsession with linking themselves to the military."

Former Conservative Defence Secretary Michael Portillo also criticised the MoD for "terrible vacillation" over the issue, and Tory MP Desmond Swayne - a former Territorial Army officer in Iraq - said the decision was a victory for Iraqi insurgents.

Republicは「王族があたくしどもは軍とつながっているんざますと言いたいがために税金が無駄遣いされている」と立腹し、ポーティロ(元国防大臣・保守党政権)は結論を出すまでに軍がふらふらしていたことを批判している。また、保守党のDesmond Swayne議員は――この人、議員しながら、2003年に陸軍の士官としてイラクに行ったのだろうか――は、この決定はイラクの反乱勢力の勝利となると批判している。

つまり保守党の両者は、「行かせるなら行かせる、行かせないなら行かせないで最初からゆるぎない態度をとっておくべきだった」と言っているのだと思う。

ハリーがイラクに行くの行かないのって話が始まったのっていつだっけ? 去年の8月まではダナット将軍ではなくサー・マイク・ジャクソン将軍(<1972年1月30日のデリーの関係者)が陸軍参謀長だったので、そのころに具体的な話が出ていたのだとしたら、ダナット将軍個人を非難してもしょうがないと思うのだけど(イラク南部の情勢はこの半年あまりで全然違ってきているようだし)、保守党サイドからの反応は、将軍を批判しているものかどうか、ちょっとわかりづらい。

※この記事は

2007年05月17日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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