「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2015年05月25日

アイルランド共和国と北アイルランドは別。「アイルランド全体」、「イギリス全体」が「同性結婚を導入」というのは、誤情報。

取り急ぎ。アイルランド共和国と北アイルランドは別で、北アイルランドは英国の一部である。「アイルランド全体」、「イギリス全体」が「同性結婚を導入」というのは、誤情報である。

2014年5月24日付、Japan in Depth掲載の下記の記事を見た。
http://japan-indepth.jp/?p=18460



この記事には、論点とか視点とかいうこと以前の重大な事実誤認が含まれている。「アイルランド共和国」での政治的な意思決定は、「イギリス」とは関係ないという点についての事実誤認である。

当該記事の見出しには
【アイルランド、国民投票で同性婚合法に】〜イギリス全土で合法化〜

とあり、また本文には
今回アイルランドで行われた国民投票の結果を受け、イギリス全土において同性婚が解禁されることとなった。

とある。これが著しい事実誤認である。

その点について、取り急ぎ、ものすごく大雑把に書いておく。(あまり厳密な記述にはしないので、読むだけ読んで終わりにして、引用とかはしないでいただけるとうれしい。)


現代の英国は、外交、防衛など「英国」の単位でやることはウエストミンスターの英国の国会が立法府となっている。課税に関しても基本的にはウエストミンスターだ(が、部分的には「地方分権」になっている)。

だが、人々の生活により密接なところにある社会的な制度に関する法的整備は、イングランド&ウェールズとスコットランドと北アイルランド、それぞれ別々だ。刑法も違ってたりする。

これらについては、イングランド&ウェールズはウエストミンスターの議会(国会)が立法機関であるが、スコットランドはホリルードの自治議会、北アイルランドはストーモントの自治議会で決めている。

これが、「英国はイングランド&ウェールズ、スコットランド、北アイルランドから成る」ということである。
イングランドおよびウェールズ(England and Walesウェールズ語: Cymru a Lloegr)は、イギリス(連合王国)を構成する4つの国(country)のうち2つを含む法域である。イングランドとウェールズを併せたものが旧イングランド王国の統治機構上の後継者であり、イングランド法という単一の法体系に従う。

権限委譲を受けたウェールズ国民議会(National Assembly of Walesウェールズ語: Cynulliad Cenedlaethol Cymru)が1999年に連合王国議会によって1998年ウェールズ統治法(en:Government of Wales Act 1998)に基づいて創設されており、ウェールズにおいては一定の自治が認められている。ウェールズ国民議会の権限は2006年ウェールズ統治法(en:Government of Wales Act 2006)によって拡大され、ウェールズ政府は今では独自の法令を提案し可決することができるようになった(en:Contemporary Welsh Lawを参照。)。

イングランドおよびウェールズにスコットランドと合わせればおおむねグレートブリテン島とその付属島嶼を構成し、さらに北アイルランドを加えれば連合王国を構成し、さらに3つの王室属領を加えると法的意義におけるブリテン諸島(British Islands)を構成する。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%BA

※「イングランド&ウェールズ」の中における「ウェールズの自治」については、リンク先参照。ここでは扱わない。

そして、「北アイルランド」は「アイルランド共和国」とはまったく別である。相互に政治的な干渉はない。サッカー協会ですら別々である。(ただしラグビーは「アイルランド全島」でひとつの単位となっている。)

今回、同性結婚がレファレンダムで合法化された「アイルランド」は、「アイルランド共和国」である。

そして、それは「北アイルランド」を含まない。

むしろ、同性結婚レファレンダムの結果が出た翌日、私の見ている範囲(つまり北アイルランド目線)では、英語圏は「北アイルランドだけ取り残された」という話でもちきりである。

北アイルランドにおいては、Civil Partnershipは、英国全土で導入されたときにいち早く実施されている。実際、「全英(イギリス全体)」のトップを切って儀式が行なわれたのは、ベルファストだった。なお、この当時は「シヴィル・パートナーシップ」が俗に「同性結婚」と引用符つきで呼ばれていたことにも注意されたい。

'Gay weddings' first for Belfast
Last Updated: Monday, 19 December 2005, 17:03 GMT
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/4540226.stm

しかし、北アイルランドは「宗教保守」の地である。シヴィル・パートナーシップでも、夏のPrideのパレードでも、「神様」を持ち出してプラカード立ててデモを打つ人々はいるし(だんだん目立たなくなってきているが)、ソーシャル・ネットでは、見るところを見れば、ホモフォビックな言葉は普通に行きかっている。それでも北アイルランド全体として、「同性愛は罪である」的なことを言ったり書いたりするのは、「ちょっと、どうなのか」というふうになってきてはいるかもしれない。それでも、コアの部分は何も変わっていない。

キリスト教圏では「結婚」とは、うちらが理解するようなもの(日本国憲法にある「両性の合意」によるものとか、日本文化にある「家と家のつながり」)ではなく、もっとはっきりと宗教的な意味合いを有する。(だから、「結婚」せず「生活のパートナー」として暮らし、子をなすということも普通にある。)

北アイルランドは「シヴィル・パートナーシップ」はそれなりに受け入れたかもしれないが、「結婚」という宗教的な意味合いのあることについては全然、何も前進していない。この4月末に次のようなニュースがあったばかりだ。

Gay marriage rejected by Northern Ireland Stormont Assembly
http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/general-election-2015/gay-marriage-rejected-by-northern-ireland-stormont-assembly-31175600.html


しかもこれ、DUPのような宗教保守勢力だけが「同性結婚にNO」と言っているのならともかく、総選挙直前というタイミングで「有権者の反感を買いたくない」という事なかれ主義もあったかもしれないが、「リベラル」なはずのアライアンスも、SDLPも、腰の引けまくった態度を示して人々に呆れられていた。

同性間の「結婚」というのは、そのくらい「アンタッチャブル」なことなのである。だからこそ、「結婚ではないが、結婚に類似した制度」としてシヴィル・パートナーシップという制度が導入されていたのだ(それについての議論は、イングランドでの同性結婚が合法化される前の議論を参照。イングランド国教会の見解が示されたときの報道記事などがたくさん見つかるはずだ)。

また、「結婚」に関する問題以外にも、北アイルランドでは「同性愛」についての「偏見」が包み隠されることなくそこらへんに出てくることがある。つい先日、チャールズ皇太子のアイルランド西部訪問と同じタイミングで判決が出て北アイルランドでは大ニュースになっていたのだが、「保守的」な価値観を抱いている店主のケーキ屋で男性同士のカップルがメッセージ入りのケーキを注文したら受付を拒否され、「差別」で法廷沙汰となる、ということがあった。判決は「差別が行なわれた」ことを認めるものでしたが、ケーキ屋は「悪いことをした」とは思っていないし、支援者も「自分たちの正しさ」を信じている。この件については、事実関係は、gay cake row in belfastなどの検索ワードでGoogleで調べてみていただきたい。

以上、取り急ぎ。この件、記事筆者の齋藤実央さんのサイトにあるメールフォーム経由で、齋藤実央さんにもお伝えしてある。

小言めいた言い方になるかもしれないが、少なくとも、「アイルランド共和国」と「イギリス」は別の国であるということをはっきりと認識することなく、これら2つの国について書くようなことは、私は、すべきではないと考える。両者は(曖昧なままにされている)台湾と中国以上に「別の国」である。たぶん、オランダとベルギーくらいに「別の国」である。

See also:
















※この記事は

2015年05月25日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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