「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2015年04月27日

チェコのリバタリアンが、「マイクロ国家を作った」と聞いて(リバタリアニズムは米国製)

10年ほど前(主要な関心事が「イラク戦争」だったころ)だと思うが、ネットのフォーラムかブログ(and/or コメント欄)かメーリングリストのような個人が発言をする場で、チェコ共和国の人が「ソ連と社会主義を否定するあまり、思想的にアメリカかぶれに傾いている現状」について書いていたのを読んだことがある。いわく、人々は「ソ連は絶対悪」であり、したがって「アメリカは絶対善」であるという粗雑な二元論で、コカコーラとマクドナルドと、"Greed is good" (当時、そういう標語があった。"Think locally, act globally" というのと対置、あるいは並置されるように)を危険なほど無批判に受け入れていると。アメリカの消費主義・資本主義をそれ自体評価して受け入れるのではなく、ソ連を批判するためにアメリカを崇拝するのが当たり前だという前提がある、という内容だった。国際的に、GWBの「あれか、これか」論法("Either you are with us, or you are with terrorists")が「わかりやすい」と評価され、「リーダーシップを発揮」することが一種のドグマ化していたころのことだ。チェコ共和国はイラク戦争をいち早く支持していた(今確認すると2003年1月末の時点で「支持」の共同声明を出した欧州8カ国のひとつだった)。

その話の流れの中でだったと思う。チェコは「自由主義(リベラリズム)」ではなく「リバタリアニズム」が、無視できない影響力を有していると知らされたのは。

リバタリアニズム (libertarianism) とは:
他者の自由を侵害しない限りにおける、各人のあらゆる自由を尊重しようとする思想的立場。自由主義が20世紀以降、個人の社会的自由の達成ために、私企業などの経済的自由の抑制や、福祉などによる富の再分配を是認してきたのに対し、それらをも最小化すべきとする。自由至上主義。完全自由主義。(「デジタル大辞泉」)

※辞書のこの定義からは、「直接民主制」への絶対的な信奉(「代議制」、「議会制民主主義」の否定)という要素が零れ落ちている。「俺らの知らんところで、俺らの生活に関わることを決めるな」というリバタリアンの主張は、分析したり解説したりするときには軽視しすぎないほうがいいと思う。それと、この「思想」が「アメリカのイギリスからの独立」にルーツを持っていることも、きわめて重要だと思う(つまり「ボストン茶会事件」。2009年に始まったアメリカの「ティー・パーティ運動」がリバタリアンの思想の最もわかりやすい例といえる――それが「思想」と呼びうるものであれば)。

チェコであれほかの国であれ、ナチス・ドイツに組み込まれてしまったことのある国では、全体主義に結びつきうる「国家の権威・権力」への警戒心が高い、というのは想像に難くなかった。また、冷戦の世界秩序の中で「共産圏」の側に組み込まれていた東欧諸国は、さらに「個人の自由と国家の統制」についての考え方が、深い部分で「西側」とは違うのだということは、ポーランドからの報告でも読んだことがあったと思う。2000年代半ばは、イラク戦争と同時に、EU(欧州連合)において超国家的な(国家の上に、さらに個人の意思とは無関係の)「権威」を明確に形作ろうとする「EU憲法」が大きな関心事で、これら「リバタリアン」的な傾向を有する理念が人気の国々では、この「署名だけで終わった」(未発効)国際条約に対する態度・判断は、最終的に国民投票でNonの結論を出して「EU憲法」を葬り去ったフランスやオランダ以上に、はっきりと拒絶的なものだったかもしれない(ハンガリーなどは国民投票ではなく議会での批准手続きをとったし、チェコは最終的に批准の手続きとしての国民投票を中止してしまったので、推測の域を出ないが)。

ちなみに、2010年代にこぞって「反エスタブリッシュメント」で「反EU」の態度を示して人気を獲得してきた欧州諸国の、いわば「マイルド極右」な政党(英UKIPなど)や、「態度とレトリックを軟化させた元ガチ極右」の政党(仏FNなど)は、90年代のマーストリヒト条約や00年代のEU憲法のような「EU全体としての統合」への反対(つまり「各国の主権」、「各国の独自性」の重視というナショナリズム)をずっと唱えてきたところが多い。彼らは移民制限(「国民」の区別)などを主張すると同時に、「国民」の手から離れたところで法や政策が決められるということについて強い疑問を示し、それが人々にアピールしている。たとえば「国民」の納めた税金は「国民」のために使われるべきという主義は、「国民」のために使われないのなら税金は納めない、という意見につながる。そこに、米国製のリバタリアニズムとの共通点がある。「アメリカ」への(多くの場合不合理な)反感がない場所では、「反EU」と「米国流のリバタリアニズム」はきわめて親和性が高い。

ともあれ、そんなことを思い出したのは、これ↓を見たからだ。

ミニ国家「リベルランド」建国、世界で最も新しい「国」に
http://www.cnn.co.jp/fringe/35063738.html

2015.04.26 Sun posted at 13:05 JST
via はてブ

ドナウ川に隣接するセルビアとクロアチアの国境地帯にこのほど、ミニ国家「リベルランド自由共和国」が建国された。

人けのない国境地帯、わずか7平方キロメートルの小さな土地に黄色と黒の国旗を掲げて建国を宣言したのは、チェコの政治家ビト・イエドリチカ氏。リベルランドは、米国建国の父トマス・ジェファソンの誕生日である4月13日に建国された。

イエドリチカ氏は政府の過剰な介入に反対する政治活動を続けており、リベルランドもリバタリアニズムの考えに基づいて建国された。ウェブサイトでは「直接民主政の要素を含む立憲共和国」と述べられている。

国の通貨にはビットコインに似た仮想通貨を採用し、中央銀行設立を避けた。銀行業務から売春に至るまで、国家はなるべく余計な干渉をしない。金融面での規制も最小限だ。……


見出しで「国」とかぎ括弧を使うのなら、本文でも「建国」はかぎ括弧を使うべきだろう。

これについて、私は次のようにブクマのコメント欄に書いた(ものをTwitterにフィードした)。



トマス・ジェファーソンは、「リバタリアン」にとってはシンボル中のシンボルだ(共産主義者にとってのレーニンのような存在)。
http://www.libertarianism.org/people/thomas-jefferson

バラク・オバマを「共産主義者」と罵倒するようなトンデモ言説の奔流の中で、私は何度か、「トマス・ジェファーソンが生きていたら何と言うだろう」というような言葉が、煽りの文言として機能しているのを見た。ああいう奇矯な言説は、あんまり見てると精神を病むので(いろいろな「陰謀論」も、日本での「ラッスンゴレライ」とやらについての奇矯な言説も同じ、あんまり見ないほうがいいですよ)、そのような言説の存在が事実であることを示すために1ページだけリンクしておく

で、この「マイクロ国家」(「ミニ国家」より小さい)について、CNN日本語の記事は26日付なのだが、実際には英語圏ではすでに17日には報道されていたようだ(CNNがどうなのかは知らない。調べる手間もかけたくない。ちなみに、はてブでid:Mukkeさんがブクマしているので知ったガーディアンは24日付けで、現地で取材している)。

A Czech Libertarian Has Declared a New Micronation in the Balkans
http://www.vice.com/read/a-czech-libertarian-has-declared-his-own-state-ln-eastern-europe-417

April 17, 2015, by Mark Hay

Earlier this week, a Czech citizen named Vít Jedlička declared the creation of a new libertarian micronation on a small plot of unclaimed land between Croatia and Serbia. The Republic of Liberland, as Jedlička calls his new territory, lies on 2.7 square miles of land between Serbia and Croatia, on the western bank of the Danube River, in what is known as the Gornjua Siga region, which lays unclaimed as the two neighboring nations continue to hash out longstanding border disputes.

Although Jedlička, a 31-year-old leader of the Czech Republic's libertarian Party of Free Citizens with a moderate Facebook following, has done little more than raise a flag and make a declaration, he's already invited people from around the world to apply for citizenship, digital or residential, by sending him an e-mail with a scan of any photo ID and a cover letter explaining their desire to join him in his libertarian utopia.

"The goal of the founder of the new state is to create a society in which honest people can prosper, without having the state making their life difficult with unnecessary restrictions and taxes," reads an official statement from the Republic, as recorded by Croatia Week. "One of the reasons for the establishment of Liberland is the increasing influence of interest groups on the functioning of the states and worsening living conditions."


VICEの原文にはリンクもたくさん入っている。興味のある方は読んでみるとおもしろいのではないだろうか。

で、私はざーっとスキャンしただけだが、思い出したのはあれですよあれ、「セボルガ公国」。はてブでどなたかが書いておられたが、「仮想通貨」のプロモーションのための仕込みなんではないかというのもちょっとある(「通貨」は「国家による統制」の最たるもので、「仮想通貨」はそれへのアンチテーゼであるというのは基本)。

これは、the Principality of Seborga(←さっきのイタリア語の固有名詞の英訳)の月刊広報の英語版のページのようです。この記事は、同年2月に「セボルガの大学? うーん、どうでしょう」という記事を出したところ大反響がありました、という内容で、「勝手にうちを名乗る大学の数々」の存在を細かく指摘したもの。……

そんなことより、このPrincipalityについて。さくっと検索して出てきたウィキペディア日本語版を参照すると、「公国と自称し独立宣言を行った地域である。ただし、外国の国家承認は全く受けていない」とのこと。さらに「イタリア政府とセボルガの間には何等の緊張もない。イタリアの法、医療サービス、通信、学校、その他すべての公共サービスがイタリアの他の地域同様に供給されている。住民はイタリアの行政サービスを受け、政治的権利を行使しており、地方税と(イタリアの)国税を納入している」とのこと。つまり真面目に「国家」と位置付けられるのかどうか、という点でものすごく疑問です。(「わが国は独立国家である」という信念や意気込みがどうこうというのではなく、単に手続き的に。)

【追記】「地下生活者の手遊び」さんのコメント欄で、この「セボルガ公国」についてドキュメンタリーでご覧になったことがあるという「うさぎ林檎」さんに教えていただいたのですが、どうやら小さな村が村おこし的に『公国』を名乗っている状態のようです。ただし「公国」を名乗る歴史的な経緯はあるそうです。(だから本当に村おこしとして「なんとか国」と名乗って「なんちゃって通行手形」を出したりしているのとはちょっと違う。)【追記ここまで】

http://nofrills.seesaa.net/article/120795588.html


で、今回チェコのリバタリアンの政党の人が、勝手に作った「マイクロ国家」は、この「セボルガ公国」のような歴史的経緯すらなく、いきなり他人のもめてる土地に入っていって、旗を立てて、「ここ、誰のものでもないんなら、わたしの国だから」と宣言している(what is known as the Gornjua Siga region, which lays unclaimed as the two neighboring nations continue to hash out longstanding border disputes)わけで、これはもう当事者(セルビア、クロアチア)から見れば「悪質ないたずら」以外の何ものでもないだろうと。

VICEの記事より:
Since news of Liberland first started popping up on Balkan social media on Tuesday, the news has taken off−especially since it's become clear that Jedlička is apparently dead serious about his new country. He has stated that he will try to seek recognition from Croatia and Serbia, before turning towards the rest of the world, and claims to be devising a digital currency (for now the use of alternative currencies will be allowed).
http://www.vice.com/read/a-czech-libertarian-has-declared-his-own-state-ln-eastern-europe-417


Dead seriousなら、どうしていきなり旗を立てて「国家」を宣言したりするのか。しかも「うちの庭」ではなく、20年越しでもめてる外国の、帰属がはっきりしない状態にされている土地で。いや、「ネタ」だろうとは思うのだが、「ネタ」なら「うちの庭」でやればいい。「領土」が「ネタ」や「シャレ」にならないということは、2014年のウクライナのおかげで、あまりに生々しい。頭が痛い。

だから、id:Mukkeさんがおっしゃる通り、ジェファーソンをシンボルとすることは「やっぱり他人の土地を侵略して新しい国を作ったことへのリスペクトなんですかね?」といって、ダークな笑いをムワハハハハと響き渡らせておくという反応を私もしたい。

VICEの17日の記事は間接情報ばかりだが、ガーディアンの24日の記事(「記事」というより「インタビューの文字起こし」)を丁寧に読めば「建国者」の真意がわかるかもしれない。ただあいにく、頭が痛い。ざっと見たところ、申し訳ないが、私には「理念があり、口のうまい詐欺師」にしか見えない。
http://www.theguardian.com/world/2015/apr/24/liberland-hundreds-of-thousands-apply-to-live-in-worlds-newest-country

VICE記事の後半にある「世界のマイクロ国家のリスト」的な記述(「リスト」の形式にはなっていないが)は、なかなかおもしろいと思う。
http://www.vice.com/read/a-czech-libertarian-has-declared-his-own-state-ln-eastern-europe-417



余計なお世話と思いますが、この「リバタリアン国家」に賛同したりするのも個人の自由であるにせよ、「出資詐欺」みたいな話はそこらじゅうにあるので、気をつけてくださいね。お金だけではなく「気持ち」の問題になるので。

最近、ニュースになったと思うんですが、元々荒唐無稽に過ぎる上に、ガチであるにしてもいろいろとひどすぎると批判の多かった火星移住計画「マーズワン」は、オランダ人が始めたものですが、「嘘は大きければ大きいほどよい」という類のホラだと、その内情を知る人が暴露しました。

「実家が大阪城」だとか、「息子の夜食のラーメンを作ったら、息子の部屋に届けるまでにのびた。家が大きすぎるので」だとかいうホラはいいけど。
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※この記事は

2015年04月27日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 19:00 | TrackBack(0) | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼