攻撃者はまた、米国主導の対ISIS軍事作戦に参加しているフランスの軍人の(本人ではなく)親族の個人情報(と攻撃者が述べているもの)をまとめてどーんとウェブに公開もしているとのことで、少し深刻に受け取っておくべきかもしれないと思う。フランスでは行政もかなり慌てている様子だ。
これについて、攻撃の発覚から報道、局の説明などのツイートをアーカイヴしておいた。日本語圏と英語圏の報道の要旨も添えてある。
フランスのテレビ局が、ISIS(イスラム国、イスラミック・ステート)支持者のサイバー攻撃を受けた。
http://matome.naver.jp/odai/2142855281300186801
攻撃対象とされた局は、ウィキペディア(英語でも日本語でも)を見ても何か大げさな文言で宣伝っぽいなあという印象が先に立ってしまい(「世界で4番目の規模を誇るテレビチャンネル」と言われても……)、実際にその放送を見たことがない私では漠然としたイメージしかつかめないのだが(新聞でいえば「タイムズ」なのか「デイリー・エクスプレス」なのかがわからない。どういう人が何を目的に見ているのか、どの程度見られているのか、など)、今回の攻撃の影響の大きさについては:
For three hours on Wednesday night, between 10pm and 1am, all broadcasts were brought down in a blackout by hackers claiming allegiance to Isis. The hackers were able to seize control of the television network, simultaneously hacking 11 channels as well as its website and social media accounts.
先日、日本語圏でもウェブサイトが改竄され、"Hacked by Islamic State" というメッセージが画面に出てくるということが多発して、警察が注意喚起を行なうという事態が発生したが、今回のフランスのテレビ局に対する攻撃はそれとはまるで異なる。
日本でも確認された改竄はWordPressのプラグインの脆弱性をついた「ハッキング」だったようだが、ISISが使っている「あの黒い旗」(あの旗は、信仰を表す旗をISISが自分たちのものとして一方的に使っているのであり、「ISISの旗」というわけではない)が掲げられていたことから、ちょっとした「パニック報道」のようになった部分があるようだった(数年前の「アノニマス」関連での無駄な大騒ぎを思い出す)。「テロ組織」の行動については、別に騒ぐ必要のないものまでセンセーショナルに騒げば騒ぐほど(その一方で本当に深刻に考えねばならないことはスルーされたりするのだが)、その組織を利する(思う壺である)のだが、起きたことは起きたこと、事実は事実である。ただし、日本語圏のサイトが改竄された件については、本当にISISが関わっていたのかどうかは疑わしい(「ISISって書いておけば話題になるんじゃね?」程度のことかもしれないし、実際にISISのハッカーが腕試しをしたのかもしれない)。いずれにせよ、「ISISの中にもプログラマーやエンジニア、IT系の人員は(普通に)いる」ということは明確に認識しておく必要がある、ということは当時Twitterで書いた。
サイバー・セキュリティに携わっておられる方々はそんなことはないと思うが、日本語圏のガラパゴスの自閉した空間では、「先進国でなければ後進国」のような粗雑で時代遅れの《イメージ》が根強く、ISISの「蛮行」の《イメージ》もまた強いので、「あのような蛮族がコンピューターを使えるはずがない」というに等しいようなばかげた思い込みが実際にある。
10年前のイラクのファルージャで日本人が拘束されたときにネット上、特に2ちゃんねるのような場では「あんな先進的な機器を使えるイラク人がいるはずがない」という説が、真顔で取りざたされていた。イラクは国連の経済制裁を受けていたので最新の技術は入っていないだろう、という想定があったのだが、現場でどういうことがあったかを調べもせず、判断材料も持ち合わせていない人たちが勝手に言ってるだけにもかかわらず、案外広く信じられていたようで、なんというかほんとにもうorzであった。さらにorzなことには、2014年に湯川さんがISISに拘束されたときにもまだそういう思い込みはネット上にはけっこうあって、特に湯川さんのFBのページについて英語で書いた日本人が(別にその人が書いてなくても、ISISは自分たちで拘束した日本人について、尋問でも何でもして調べられるというのに)、「ネット民」によってネット上で責め立てられているという文脈で、ええと、私は自分の言葉としてその文字列をここに文字で記したくないので、よそで使われているものを画像で参照しますよ、という言葉(下記)を見て、こいつらどんだけ鎖国の中で生きてるんだよと思わざるを得なかったことがある。
実際には、アルカイダであれISISであれどこであれ、元から、エンジニアリング(工学)や化学の専門知識のある人たちや、プログラマーなどIT系の人たちで構成されているということは、普通によくあることだ(例えばモハメド・アタはカイロ大学の工学部出身だった)。10年ほど前のイングランドでは、大学の理系・理工系の学部に留学してきた学生が「アルカイダのシンパ」として逮捕・起訴されるといったことは何度かニュースになっていたと思う。
最近では、イングランドからシリアに行ってしまった女性たちのひとりで、離婚歴のある40代の元パンク・ロッカーの配偶者(バーミンガム出身の男で、彼女とはネットで出会った)がハッカーとして有罪になったことがあるという人物だったりしている。
※この記事は
2015年04月09日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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