そのときにやっていた作業が一段落し、9時ごろにTwitterの画面を見たときには、どうやら既に「はっきりした根拠はないけれど、その時点でわかっている事実の断片だけつなぎ合わせて結論しちゃおう(少なくとも可能性のひとつにはなるので、これは善いことだよな)」という人々(今後、「オカルト組」と呼ぼうと思う)が活発に発言していたようだった。(個人的にはその界隈は見ないようにしているが、それを見たと思われる人々の言葉の断片がいくつか、流れていた。)
「墜落、乗員・乗客全員絶望」ということが報じられただけの段階で――飛行機墜落事故ではお約束の「フライトレコーダー」の話も出る前に、それどころか(大海原でもないような)墜落現場の空撮映像ですら出る前に――、「なぜ墜落したか」について(「可能性のひとつ」などとことさらに正当化して)根拠のない話がされること自体は、よくあることだと思う。自分だって、家族や友人と一緒にニュースを見ていれば、何の根拠もなく連想したこと、思ったことを口にするだろう。そこに「最近、物騒だよねー」というような、実は何の実体もない形式だけの言葉(多くの場合、それは会話の潤滑剤である)を、さも意味ありげに付け加えたりもするだろう。TwitterやFacebookのような「インターネットで、一般に広く公開された場」で、そのような「プライベートな」(「身内の」という日本語が一番しっくり来るのだが、英語ではそれに対応する概念はprivateでは正確には表せないかもしれない)会話を行なう人も、普通に、いるだろう。
だが、ここでは実際に大勢が亡くなっている。バルセロナにはその人たちを送り出したばかりのご家族やご友人が大勢いて、デュッセルドルフではその人たちを出迎えようとしているご家族やご友人もきっと大勢いる。そういった「直接の関係者」をよそに、比喩で言う「まだ遺体が冷たくなっていないうちに」、根拠も依拠できる証拠もないくせに「きっとこういうことで墜落したのだ」ということを、インターネットという「パブリックな」場で行なうことは、少しは慎んだらどうなのか。これは(「言論の自由」とかではなく)human decencyの問題だ。
いろいろと情報が遅い日本語圏のテレビなどでは頼りにならないので、「ネットで情報を」と思った場合(デュッセルドルフは日本人在住者が多い都市のひとつで、情報を気にしている人も多いだろう)に(英語であれ日本語であれ何語であれ)どどーっと目にするのが、「オカルト組」が根拠も何もなくただ憶測で並べ立てている「墜落原因」だ、などということになったりしたら、ほんとによくない。
なので、そのとき既に英語圏報道各社がやっていた「ライヴ・ブログ」などを一覧できるようにしておいた。(それらのライヴ・ブログは、25日の段階では既に更新が終わっているが、アーカイヴとして参照可能である。)
ジャーマンウィングス機墜落: なるべく雑音を入れずに情報収集するための英語圏情報源
http://matome.naver.jp/odai/2142719913198366401
墜落の第一報があってから24時間以上経過した現時点でも、まだ「事故原因はかくかくしかじかと考えられる」といったことは具体的には出ていないようだ。
個人的には、アクセスが容易ではない山中に墜落したこと、地元の(学校の?)体育館が遺体安置所として使われていることなどから、どうしても日航機の御巣鷹の墜落を重ね合わせてしまう。1985年8月のあの墜落から、今年で30年だ(当時、毎晩のニュースで釘付けになってみていた。同世代の人の中には、飛行機というとこのときに見ていたニュースが思い出されてどうにも苦手だ、という人もいる)。
#GermanwingsCrash reminds many of us here in Japan of Mt Osutaka Crash in 1985. http://t.co/9WDhvJeMW8 Thoughts are with the families. RIP
— nofrills (@nofrills) March 24, 2015
http://t.co/XjL4aIjd3W "Remembering those spring days." The singer of this song, 上を向いて歩こう aka Sukiyaki, was killed in the 1985 crash.
— nofrills (@nofrills) March 24, 2015
2 leading opera singers among the dead in Germanwings crash http://t.co/B2ktjhbohN ジャーマンウィングズ機墜落、亡くなった方々の中にオペラ歌手Maria Radnerさん、Oleg Bryjakさん
— nofrills (@nofrills) March 24, 2015
承前。バルセロナ近郊の3世代の3人(おばあちゃん、お母さん、学校に通っている孫娘)、あと学校の学生交換プログラムで1週間スペインに行っていたドイツの中学生が大勢(オマー爆弾事件を思い出してつらい)。。。乗っていた人たちのご家族にはカウンセリングの専門家と教会の人がついている。
— nofrills (@nofrills) March 24, 2015
Opera singers confirmed among victims of Airbus crash in French Alps http://t.co/eUIa5Ayl3u #Germanwings pic.twitter.com/nDlLdPt2bT
— ITV News (@itvnews) March 24, 2015
事故当日のドイツとスペインのメディアから。
This evening's Bildt #tomorrowspaperstoday pic.twitter.com/72bj7EKMUb
— Neil Henderson (@hendopolis) March 24, 2015
Newspaper covers from Catalonia the day after #Germanwings pic.twitter.com/oS9FBIdrbv
— David Parreño Mont (@dapamont) March 24, 2015
乗客の国籍は、ドイツ72人、スペイン35人、オーストラリア、アルゼンチン、イラン、ベネズエラ、米国がそれぞれ2人、英国、オランダ、コロンビア、メキシコ、日本、デンマーク、ベルギー、イスラエルがそれぞれ1人と、ジャーマンウィングスCEOが明らかにした。
#Germanwings CEO gives details of nationalities of some of the victims from flight #4U9525 http://t.co/cIlefhCniE pic.twitter.com/NtL6phxFq7
— BBC Breaking News (@BBCBreaking) March 25, 2015
Students mourn in front of their school in western Germany after #Germanwings crash: http://t.co/4rZpvrKlT2 pic.twitter.com/Va0epmt8Aw
— Yahoo UK News (@YahooNewsUK) March 25, 2015
2 Americans among victims of #Germanwings flight 9525 http://t.co/wNWb6sfX8V pic.twitter.com/LSf9iWkBP9
— KDVR FOX31 Denver (@KDVR) March 25, 2015
"Before we were many, now we are alone." - Joseph-König School #Haltern #germanwings pic.twitter.com/OyzebLIN00
— Daniele Hamamdjian (@DHamamdjian) March 25, 2015
言語的なこと。スペイン発、ドイツ行きの航空機がフランスで墜落したので、スペイン語、ドイツ語、フランス語の3つの言語と英語が飛び交っている。ドイツ語だけは「見ただけで何となくわかる」というわけにはいかないが、スペイン語やフランス語は英語話者なら「見ただけでわかる」単語がけっこう多くある。
が、注意しなければならないのは、英語と共通する語彙だからといって、常に英語でと同じ意味を表すわけではない、ということだ(詳細はfaux amisという概念で調べてほしい)。今回のように、例えば「事故なのか、事件なのか」といった微妙な判断が、どのような単語を用いるかによってあらわされる場合、英語圏での用語法を基準にして、フランス語がまともにできない人がフランス語のニュースに書かれていることを(機械翻訳などを頼りにして)解釈することは、大変に危ないことである。やめたほうがよい。
それと「ネットde真実」系のアメリカの情報を見てる人。「あいつら頭おかしいから、あいつらの発言は見るのをやめなさい」としか私には言えない(アメリカ人が2人乗っていたことを根拠に、「アメリカ人を殺そうとした」と主張し始めているらしい)。
※この記事は
2015年03月25日
にアップロードしました。
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