しかし、3月20日に……それも「あれから20年」の3月20日に、「海外なんかに行くからテロに遭う」みたいな言葉をリアルタイムで見るというのは、何という皮肉だろうか。
以前も書いているが、日本国内では過去に幾度も「テロ」攻撃・事件が発生しており(このリスト、煩雑すぎる。「国内で発生した」という要件に絞り込んではどうか)、ほとんどの事例で攻撃主は日本を拠点とする者・日本国籍を有する者である(「外国人テロリストが日本に入り込んできて日本を攻撃する」のが常なのではない。アメリカでいえば、オクラホマシティ連邦ビル爆破のティモシー・マクヴェイみたいなのがほとんどで、9-11同時多発テロのモハメド・アタのような者はまれだ)。「外国人ジャーナリスト」と呼ばれる立場の人から、日本は「テロ攻撃のために来日するテロリスト」の心配をする以前に、日本で生まれ育って日本の都市や機関を標的とする「テロリスト」や、「テロ」とは呼ばれない無差別攻撃(報道用語で「通り魔」と呼ばれるもの)の心配をしてはどうかという指摘がなされることも、普通だ。(しかし、「日本には四季がある」=「四季があるのは日本だけ」みたいな阿呆な論理飛躍に《洗脳》されている良い子にはそういう話は通じないし、逆にそういうことを言うと「在日か」などわけのわからない罵倒をされることになりかねないのが現在の日本語圏である。)
地下鉄サリン事件から20年 テロ組織へ突き進んだオウム真理教
http://thepage.jp/detail/20150319-00000008-wordleaf
<地下鉄サリン20年>オウムの本質はサリン事件の頃と「変わらない」
http://thepage.jp/detail/20150320-00000004-wordleaf
上記2本の記事は、元公安調査庁東北公安調査局長の安部川元伸氏による。公安と聞いただけで「うがががががーーー」となる
オウム真理教が引き起こしたサリン事件から20年経過したいま、リアルタイムで事件を見た人はだんだん少なくなってきています。特に、若者の中には、オウムといってもピンと来ない人も多いでしょう。オウムは、例によって騙しのテクニックを使ってそういう若者を組織に取り込んでいるようです。
http://thepage.jp/detail/20150320-00000004-wordleaf?page=3
また、この記事を含め、何本かの有益な記事から抜粋して構成されている短い「まとめ」(INFO-RAVENさんによる)があるので、今は時間がないという人はそちらをどうぞ。文字量としては2分もあれば読める分量だ(情報量としてはもっとたっぷりある)。
【3月20日】風化させない。地下鉄サリン事件を振り返る
http://matome.naver.jp/odai/2142675523319791601
カルトは誰も救えません。あなたや周りの人を不幸にさせるだけです。
http://matome.naver.jp/odai/2142675523319791601/2142677266541459903
おりしも、3月20日は、12月の立てこもり事件で2人が死亡したシドニーのカフェの営業再開が伝えられてもいる。
Sydney siege Lindt cafe reopens to crowds of customers
http://www.bbc.com/news/world-australia-31978231
さて、「海外なんかに行くから」論について、昼間にTwitterで少し書いた。再掲しておく。
nofrills / nofrills
IRAのロンドンでのテロが最盛期のときに、被害にもあわず普通に楽しくしてた多くの日本人のひとりがここにいます。今「海外なんかに行くから」うんぬんという言葉にへこんでる人、そんな雑音は気にすんな。 at 03/20 14:00
nofrills / nofrills
IRAのロンドンでのテロが最盛期のときは、インターネットなんてものは(少なくとも一般人の使えるところには)なくて(このカッコ書きを入れないと変な矢が飛んでくるので回りくどくてすいません)、外務省の「渡航情報」的なものは旅行会社に問い合わせるなどしてたわけだが、…続 at 03/20 14:02
nofrills / nofrills
続)…「イギリスは別に何も出てないです」と言われるのがせいぜいだったのよ(はぁと)
(ついでにいうと、その時代、「イギリスで入国拒否になる旅行者なんていませんから大丈夫です」って旅行会社に言われたのを真に受けてオープンの航空券で渡航して入国拒否になった事例なんかもけっこう多い) at 03/20 14:03
nofrills / nofrills
「IRAのロンドンでのテロ」も20年以上前の話で知らない人も多いだろうし、「どうせ大したことなかったんでしょ」扱いで流されるかもしれないので一応、一例として参考写真貼っておきますね。via http://t.co/Ddpipatkvr http://t.co/BWABeE1rwl at 03/20 14:18
nofrills / nofrills
この写真のテロについては→ 1993年4月24日(土)、ロンドンのシティでIRAのものすごい爆弾が甚大な被害をもたらした。 - NAVER まとめ http://t.co/kdLqTM6Q4W at 03/20 14:19
nofrills / nofrills
この事件のときは日本にいたけれど、滞在中にも同じような計画の未遂はあったというし、ボムの場合、攻撃の実行に至るかどうかってのは紙一重なんですね(今の「ローン・ウルフの銃乱射」はそこまで微妙ではないかもしれないが)。重要なのは、そのときにそこにあの能力を有した集団がいたということで at 03/20 14:23
nofrills / nofrills
3月20日。ウォリントン爆弾事件の日。>「和解と赦し」――20年前、商店街のゴミ箱に設置されたIRAのボムは、子供たちを殺した。 - NAVER まとめ http://t.co/e7NbQrFc7J at 03/20 14:25
nofrills / nofrills
はい、この攻撃は「経済標的」に対するものでした。この時期、IRAは「経済標的」を明言してロンドンなど都市の市街地をボム攻撃していましたが、日本ではだからといって英国に行かないというムードにはなってませんでした。RT @yukiseka: これで一人しか亡くなってないんですね‥ at 03/20 14:38
と、1993年ビショップス・ゲイト爆弾事件の写真をアップしたらえらく関心が高いようなので、少し補記したものが下記。
nofrills / nofrills
やっぱりIRAの経済標的に対するボム攻撃の「見た目」のインパクトってすごいですよね。(写真としてある意味、昔から見慣れてしまっているので感覚が…IRAの人命を標的にした攻撃の陰惨な見た目と内実について知ってると余計に感覚がおかしくなっていて…) at 03/20 15:01
nofrills / nofrills
これが彼らの「テロリズム」だったんですよ。「見た目」のインパクト、それの引き起こす「恐怖terror」。でもそれでロンドンへの投資が冷え込んだりしたか? シティが(リング・オヴ・スティールと呼ばれた防衛網と監視カメラ網にも関わらず)攻撃されたという事実は、どの程度影響を与えたか? at 03/20 15:03
nofrills / nofrills
93年4月のビショップス・ゲイトのボムについては後にBBCが検証番組を作っていて、爆弾の規模(肥料爆弾でトラックを使った)、設置場所を含め最大限のスペクタクルを引き起こすように計算されたボムだったと。なるべく多くの外面的破壊(特に窓ガラス)を衝撃波で引き起こすよう計算されていたと at 03/20 15:09
「テロの脅しに屈さない」というのは、こういうことなんです。「IRAのテロ」があるからという理由で「ロンドンでの企業活動は手控えよう」などとしない、ということ。実際、IRAのイングランドでの爆弾攻撃が盛んだったのは1980年代から90年代にかけてで、その時期は日本企業が欧州や米国で最もブイブイ言わせてたころ(バブルのころ)でした。そして、欧州の「金融の中心地」だったロンドンは(多くの企業が工場などを作っていた英国の首都だという理由もあったけど、それ以上に「金融の中心地」として)日本企業があれこれ物件を押さえていたし、誰もIRAなんかにひるんでなかった。その時点で「テロ」には「負けていなかった」んです(「勝った」かどうかはそういう軸では判断できないと思うけど)。
そのころのことは記録が残ってますね。例えば下記の本。今読む意味はないかもしれないけれど、商品説明、ユーザーレビューなどを見てみてください(原書・日本語訳ともに)。
![]() | The House of Nomura: The Inside Story of the Legendary Japanese Financial Dynasty Albert J. Alletzhauser Arcade Pub 1990-05-01 by G-Tools |
![]() | ザ・ハウス・オブ・ノムラ (新潮文庫) アル アレツハウザー Albert Alletzhauser 新潮社 1994-04 by G-Tools |
それと、こういう点。「自己責任」という四字熟語(元々は投資などで「必要な情報は自分で仕入れてから判断すべきで、判断の責任は自分が負う。他人のせいにしない」というような意味で使われていたはずだ)が、「旅行先で不慮の事態に巻き込まれること」について使われるという用語法は、2004年4月のファルージャでの日本人拘束のときに爆発的に流行ってそのまま浸透して定着したと私は記憶しているが、特に危険地帯について言うのではなく、「(既に旅行者が行ける程度に)安全だ」と認識されている地域(2004年秋のイラクは、地域によりけりではあったかもしれないけれど、「慣れた人なら旅行に行ける場所」という認識だったんですよね。香田さんが行ったころ)で何かあったときに「自己責任」と言って切り捨てるというのは、根本的には「因果応報」(あの人がひどい目に遭っているのは、日ごろの行いが悪いからだ、など)の考え方だろうと思う。少なくとも「因果応報」と親和性がとても高い。(これは「いじめは、いじめられる側にも原因がある」などというvictim blamingと共通しているかもしれない。)とにかくこの日本という文化圏では、wrong place, wrong timeという考え方は、通用しないのだ。とにかく何でも「因果」「因縁」で語りたがる。陰湿きわまりない。(だから「海外」に脱出してる人もいるわけですよ。)
nofrills / nofrills
日本の「自己責任」論は、根が「因果応報」論(英語圏でいう "仏教の「カルマ」論")なので。私は身近にそういう言説があふれているところを知ってます(登山で事故にあえば「登山なんか行くからそんな目にあう」と言うということがある)。根は本当に、「そういう宗教」なので、個人は気にすんな。 at 03/20 14:07
冒頭の件。他者への情報伝達を含意する tweetという語を、多くの場合「独り言」(ゆえに、他者に聞かれることを想定していない言葉)を意味する日本語として訳すのは、本質を捉えそこなっていると思う(といっても、サービス開始時のTwitterは、運営者自身もこういう「社会的広がり」が出るとは思っていなかったようだが)。「つぶやき」と訳した人には、次の仕事ではもっと社会的文脈を考慮してほしいと思う。
※この記事は
2015年03月20日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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