kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2015年03月04日

「イスイス団が殺した息子の肉を母親に食わせた」? それ、事実確認取れてないんじゃないですか?

「『イスラム国』が殺害した男性の肉を母親に食べさせていた」という《噂》が、日本でも「ライブドアニュース」経由(記事クレジットはフォーカス・アジア)で広まっているようなので、それは《噂 rumour》ですよ、ということを書いておく。ていうか一応ブコメに書いておいたんだけど、詳しく書く。(日本語圏で「元ネタはデイリー・メイル」ということになってるのも間違っているので。)

真偽不明の《噂》が出回ることは、戦地ではよく見られる。戦地でなくても、うちらが普通に日常生活を送っている東京でだって《都市伝説》が日常的に出回っている。「池袋の○○ビルに行くと、誘拐されて外国に売り飛ばされる。被害者に会って話をした雑誌記者がいるが、記事を書こうとしたら○○組に脅迫され、書けなかった」といった類の《噂》だ。「世間話」として広まりはするが、誰もそれが《事実》であるという確認が取れないまま、細部に変形が加わりつつ、単に口から口へと伝わる。

しかし中には、今回の「殺害した男性の肉を……」の《噂》のように、報道機関が媒介する(文字通りの「メディア」になっている)こともある。

2007年には、英軍が占領していたイラク南部の都市バスラで「英軍が持ち込んだ人食い巨大バジャー(アナグマ)が人々を無差別に襲っている」という、恐るべき生物兵器(マジでそう言われていた)の存在が噂された。これも報道機関が媒介した(このときはアルジャジーラ。詳細はリンク先を読んでください。すごいから)。

が、報道機関が媒介した結果、《都市伝説・噂》の飛び交う狭く閉じた世界の外に伝えられることで、「そのような事実はない(のではないか)」という客観の光が与えられることもある。

前置きはこのくらいにして、本題。ブコメで書いたとおり、「殺害した男性の肉を……」は「十中八九根拠なし」と考えられる。ライブドアニュースの記事のタイムスタンプは「2015年3月3日 11時53分」となっているが、その時点では既にdebunkされていた。




この手の真偽不明の《噂》、《都市伝説》の検証が専門のサイト、Snopes.comによると:
http://www.snopes.com/politics/war/isisfedson.asp
Origins: On 2 March 2015, the British tabloid The Sun published an article claiming ISIS militants had tricked a woman into consuming her captured son's remains. The ghastly story spread rapidly across both news sites and social media outlets, but the sole source for the story was the notoriously sensationalistic Sun.

つまり、発端は2015年3月2日のThe Sun(英国のタブロイド)で、ほかにこの件について報じているメディアはない。

ザ・サンのウェブ版は現在、有料登録していないと記事が閲覧できないし記事検索も見当たらないのだが、2日(月)付の一面は、BBCが毎日伝えている「今日の新聞各紙一面」によると、下記の通り、その話だ(詳細は、記事が閲覧できないのでわからない。個人的に、別に調べようとも思わない。が、見出しの上にあるBrit'sと顔写真の男性は、対ISIS義勇軍に加わってクルド人側で戦ってる英国人だろう)。


(→The Sunの一面にある語で検索してみたら、重要な部分はほぼそのまま転載しているのではないかと思われる記事が出てきた。それによると、このBritというのはやはりクルド人の側に加わっているヨークシャーのYasir Abdullaさんという36歳の男性で、彼がThe Sunの情報源だ。)

ちなみに翌日はころっと、全然別のネタ(プロサッカー選手のスキャンダル)。



Snopes.comのページでは、The Sunと同じくルパート・マードックのNews Corp傘下のニューヨーク(米)のタブロイド、ニューヨーク・ポストを元に、どのような「報道」がなされたかを書いている。
The New York Post's version of the tale read:
"I hate IS because of what happened to an old Kurdish woman from a nearby tribe," he said.

"Her son was captured by IS fighters and taken as a prisoner to Mosul. She was determined to find her son and went to IS headquarters and asked to see him." ...


この、マードック系タブロイドの書いたことが、「真偽を確認しようとした形跡も見られない状態で」他の複数の「メディア」にも転電されたとSnopes.comは述べ、この報告にはいくつもの「赤い旗」が立っていると指摘している。

まずはこの「説」が「シングルソースで伝聞である」という点。しかもこれを語っている男性が、主張の裏づけとなる証拠を示してもいないばかりか、このような考えられないような出来事を自分で目撃したわけではないと認めている。それに、この男性がどのようにしてこの話を知ったかも記事には書かれておらず、Snopes.comではこれを「モスルで広がっている都市伝説ではないか」としている。(The Sunの取材に応じた男性がでっちあげたわけではなく、男性が聞かされた「町の噂」をThe Sunに伝え、The Sunがそれをそのまま掲載しているということ。)

このような《都市伝説》がまことしやかに「報道」された例としては、シリア内戦についてはこんな事例があった。内容の真偽とは別に、単に形式として「事実を伝える」形になっていないものが、正体不明の「オンライン新興のアドヴォカシー・メディア」によって流布された。また、2011年のリビアでの蜂起の際、カダフィ側がバイアグラを云々という話が出たが、あっちこっちの大手メディアでallegelyつきで書かれていたにも関わらず、事後調査を行なったHRWもAIも誰もその証拠を見つけることができなかった。

続いてSnopes.comでは「殺害された息子の肉」の件を「根拠のない噂話ではないか」と考える2番目の理由を説明している。いわく。「名前も日付も、そのほかの詳細も、一切不明である」こと。「殺害された息子の肉が調理されて母親に供される」などというひどいことについての背景的な情報は一切記事に書かれておらず、その証拠も示されていない。その「母親」は、息子をさらっていって拘束している武装勢力が「イスラム国」を自称する勢力(ネットスラングで「イスイス団」、本稿では「ISIS」と表記)だということを把握して「息子を返せ」と責めよりながら、出された食事に預かっているというのも矛盾しているのではないか、とSnopes.comは指摘する。が、その点はその土地の習慣などもあるので、それこそ背景情報がなければ何も判断できないのではないかと思う。

そして三番目として、「知らず知らずのうちに人肉を食わされていたという話は、ISIS出現のずっと以前から定番である」こと。シェイクスピアの『タイタス・アンドロニカス』から、サウスパークのエピソードまで。要するに「ありがちな噂話」という扱いだ。

そしてSnopes.comは次のように本稿を結んでいる。

While it is not impossible ISIS militants fed a man's remains to his mother, the story originated from a single sensationalistic source and was passed on by many other outlets without any additional investigation. No details were provided to determine whether the story was based in fact or born out of fear of Islamic State. The tale bears many common features of an old urban legend, including a horrifying twist ending and the involvement of villains du jour. Ultimately, no substantive evidence suggests that the events described have occurred at any point in recent history.

「そのようなことが本当にありえないというわけではないが、この話はたった一つのセンセーショナリズムが得意なソースが元になっており、他の報道機関によって、なんら追加の調査なしで広められている。この話が事実に基づくものなのか、ISISへの恐怖から生じたものなのかを判断する根拠となる細部も提供されていない。この話は、昔からある都市伝説の特徴を多く備えていて、このようなことが実際に最近起きたということを示す証拠は一切示されていない」(要旨)。

一方で、日本語圏で広まっているライブドアニュース掲載の記事だが(記事クレジットはフォーカス・アジア)、これは本当に低質というか、文字通りの「劣化コピー」だ。
英紙デイリー・メールによると、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が殺害したクルド人男性の肉を調理し、解放交渉に訪れた母親に食べさせていたことが分かった。2日付で台湾・自由時報が伝えた。

一時ソース(ザ・サン)にさかのぼることすらしていない。

なお、この記事について、ソースがデイリー・メイルであるというだけで「あっ・・・(察し)」のような反応がはてブにも湧いているが、それも必ずしも正しくない。メイルは、ガチの報道はものすごくガチだ(一例としてベトナム戦争での米軍による虐殺事件当事者についての報道。暴露趣味の見かけだが、記事を読んでみるといいと思う)。日本の夕刊紙(日刊ゲンダイとか夕刊フジ)よりは信頼性は高いと思う。ただ英国内の政治的なムードを作る記事(移民バッシング、社会保障受給者バッシング、LGBTバッシング、シングルマザーや働く女性へのバッシングなど)はめちゃくちゃなのでお笑い扱いだし(でも「嘘」ではないので、真に受ける人がとても多い)、事件報道などは基本的に警察の言うことを疑わずそのまま垂れ流すので(日本の大手報道と同じだ)、あまり(というかほとんど)信頼されていない。

そんなことより、この日本語媒体が、「台湾の自由時報」←「英デイリー・メール」としかたどらずに、こんなものを日本語化したことのほうが問題であろう。せめてThe Sunまではたどろうず。。。



ウィキペディアに、こんなページがあるんですね。
http://en.wikipedia.org/wiki/Atrocity_propaganda
Atrocity propaganda is a term referring to the spreading of deliberate fabrications or exaggerations about the crimes committed by an enemy, constituting a form of psychological warfare.

The inherently violent nature of war means that exaggeration and invention of atrocities often becomes the main staple of propaganda. Patriotism is often not enough to make people hate – propaganda is also necessary.

※この記事は

2015年03月04日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 15:00 | TrackBack(0) | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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