しかし現実にはどのようなことが起きているのか。もう先週になってしまったが、英国で、「保守主義の名門新聞」の誉れ高い新聞の内情に嫌気がさしたあるベテランの書き手が、重厚長大な「告発文」をOpenDemocracyにアップして、その新聞をやめた。
英デイリー・テレグラフ、「大人の事情」でまともな報道ができないと内部告発して大物が辞めた。 - NAVER まとめ http://t.co/28CkF1QN4A
— nofrills (@nofrills) February 24, 2015
上記の「NAVERまとめ」のページは、アップロードできる状態にするのに時間がかかってしまったが、2月18日に私の見ている画面を埋めたPeter Oborneの「告発文」と、それに対する英国のジャーナリストたちの反応をアーカイヴしたものだ。
その少し前、アメリカではNBCの看板ニュースキャスターが大法螺をぶっこいていたことが明らかになり、アメリカのジャーナリストたちが個人的に呆れているツイートがたくさん流れてきたが、全然違う質の「メディア・ゴシップ」である。
ピーター・オーボーンのこの告発のあとのことは、またアップデートしたいとは思っている。
オーボーンの「告発文」を読後に興味深いと感じられたのは、彼があの長い文章において「(国民/民衆/一般人/読者の)知る権利」での立論をしていないところだ。日本語圏なら確実にそれがメインの立論の柱か、少なくとも重要な要素のひとつになっていただろう。そういう誇大妄想・自意識過剰の言説(もしくはターム)が「この国」のマスコミ様のベースにあることは、残念だが、否定できないことだ。(過去の実例だが、記者個人が天皇お言葉から「放射能」というワードを取り去ることは「普通の編集」であると個人の発言の場で言い張る一方で、新聞の紙面には、特に社説などで「知る権利」というセットフレーズが多用されていることが、「中の人」たちの間で疑問視されている気配すらないのが日本だ。論理的に考えるってことができないからね。)
オーボーンが「読者」について述べている部分には「知る権利」という語は出てこない。そうではなく「伝える義務」が出てくる。この語りこそ、「保守主義 conservatism」の本質ではないか。
This brings me to a second and even more important point that bears not just on the fate of one newspaper but on public life as a whole. A free press is essential to a healthy democracy. There is a purpose to journalism, and it is not just to entertain. It is not to pander to political power, big corporations and rich men. Newspapers have what amounts in the end to a constitutional duty to tell their readers the truth.
https://opendemocracy.net/ourkingdom/peter-oborne/why-i-have-resigned-from-telegraph
「告発文」を読めば、オーボーン自身、日ごろから「マードックのメディア」には極めて批判的であるということはわかるが、「読者と私」のような誇大妄想・自意識過剰は、私にはうかがえなかった。もしそれがあったら途中でうんざりして最後まで読めなかったかもしれない。
日本での「広告主に配慮」系の話で、印刷前に取り下げたというのを聞いたことがあったなあと思ったのだが、記憶がはっきりしない。この件かもしれない。印刷前にもれてしまうなんていうことが起きるのは遺憾なことだが、この書きようを見るに、そう珍しいことでもないのかもしれない。
※この記事は
2015年02月25日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
【todays news from ukの最新記事】
- 英国での新型コロナワクチン認可と接種開始、そして誤情報・偽情報について。おまけに..
- 英ボリス・ジョンソン首相、集中治療室へ #新型コロナウイルス
- "Come together as a nation by staying ap..
- 欧州議会の議場で歌われたのは「別れの歌」ではない。「友情の歌」である―−Auld..
- 【訃報】テリー・ジョーンズ
- 英国の「二大政党制」の終わりは、「第三極の台頭」ではなく「一党優位政党制」を意味..
- ロンドン・ブリッジでまたテロ攻撃――テロリストとして有罪になっている人物が、なぜ..
- 「ハロルド・ウィルソンは欧州について中立だった」という言説
- 欧州大陸から来たコンテナと、39人の中国人とされた人々と、アイルランドのトラック..
- 英国で学位を取得した人の残留許可期間が2年になる(テリーザ・メイ内相の「改革」で..