「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2015年02月23日

チェルシーFCの一件、北アイルランドにも関連

詳細はまだ明らかにされていないが、チェルシーFCの「ファン」ということになっている差別主義者たちがパリで起こした一件、北アイルランドにも関連しているという報道がなされている。

既に書いたが、「チェルシー・ヘッドハンターズ」などの極右勢力は、UVFやUDAといった北アイルランドのロイヤリストとがっつりつながっているという歴史的な事実があるので、ここで北アイルランドが出てくることは「やっぱり(&残念)」という印象であるにせよ、その内容が「……」である。




ベルファスト・テレグラフの記事にいわく、パリでの一件についての調査が進められる間、「WAVEトラウマ・センター」が、パートタイムで働いている人を一時停職とするというステートメントを出した。

The WAVE Trauma Centre, which offers counselling to victims of Troubles related incidents, said in a statement that the worker has been suspended pending further investigation.

“As this matter is subject to an investigation by the Metropolitan Police it would not be appropriate to comment further at this stage,” they said.

http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/uk/wave-trauma-centre-suspends-worker-over-chelsea-fans-paris-racism-probe-31012388.html


WAVEトラウマ・センターは、北アイルランドで紛争後の社会に生きる個々人に対するサポート活動をしているチャリティ団体(日本風にいうと「NPO」)で、精神的ケア(カウンセリング)や気分の変動への対応のための代替医療(フラワーレメディなど)の提供、社会保障制度に関する相談、特に紛争による暴力で身体障碍を負った人の就労支援などを行なっている。

また、紛争後の「未来志向」の社会で「声なき人々」に「声」を与えるという活動も、大学などと組んで実施してきた。「語る」ということについての非常に実践的な取り組みだ。
http://www.wavetraumacentre.org.uk/about-us/wave-projects

設立は1991年で、紛争によって配偶者を亡くした人々を支援することが目的だったが、後に活動領域を広げ、子供・青少年や、紛争による傷を受けたすべての人を支えるという活動をするようになった。北アイルランドの社会のなかで、非常に高く信頼されている組織のひとつである。

ベルファストで始まった活動だが、現在はアーマー、オマー、バリーモネー(Ballymoney)、デリー/ロンドンデリー(Derry Londonderry)と合計5ヶ所に拠点を有する規模になっている。センターのサイトによると、これまでに3600人を超える人々に支援を提供してきたという。
http://www.wavetraumacentre.org.uk/about-us

今回の「チェルシー・サポの人種差別」に関連して、よりによってこの団体の名前を見るとは、私は思っていなかった。正直、ショックである。




が、この団体の活動領域の広さ、「分け隔てなく」という理念("Derry" でもなく、"Londonderry" でもなく、"Derry Londonderry" と表記するような)からすれば、不思議なことではない。

少し掘ってみたら、アイルランド(26州のほう)の日曜タブロイド新聞の報道だった(アイルランドのタブロイドはイングランドのそれとは少し違い、より「権力に切り込む」という側面が強いという。独立以降、国家による情報統制がかなり強かった影響と聞く)。撮影されていたあの映像の中で、(ただ一緒にいてにやにやしているのではなく)率先して騒ぎを起こしている中心人物で、乗り込もうとする男性を突き飛ばしている当人であるように見受けられた中年の男だ。




一面でIrish copと書いているのは、アイルランド(26州)のメディアだからだろうと思う。実際にはRUC (the Royal Ulster Constabulary)、つまりかつての「北アイルランド警察」だ(北アイルランドの警察は2001年に改組され、RUCは解散してPSNIとして再編された)。



Chelsea race thug is ex Irish cop
Saturday 21st February 2015
http://www.sundayworld.com/news/news/chelsea-race-thug-is-ex-irish-cop
https://archive.today/6kWXo

The Chelsea football thug being hunted for pushing a black man off the Paris underground is a former Irish cop, the Sunday World can reveal.

...

The Sunday World has learned that the man cops want to speak to for pushing the Paris-born French-Mauritian man from the train is 50-year-old Richard Barklie.

And we can also reveal the extraordinary double life the ex-RUC police officer leads.

By day he is the director of a worldwide human rights organisation, lecturing on racial tolerance around the globe. But at the weekend Barklie rubs shoulders with hooligans and racists from the notorious Chelsea Headhunter crew.

And we can reveal that the burly Co. Antrim native left the police force under a cloud amid allegations of drink-related problems.

The Sunday World understands that Barklie is running scared after the Met police in London issued his picture from CCTV images of the racist incident in Paris.

He was one of three faces flashed around the globe on Friday with the message that police wanted to speak to the men...

つまり、あの騒ぎで被害者のスレイマンさんを突き飛ばしている疑いがかかっていて、警察がCCTV(監視カメラ)映像の顔写真を大々的に公開した3人のひとりがこの男で、名前はリチャード・バークリー、年齢は50歳。元RUCの警官。彼は平日は世界規模の人権組織のディレクターとして人種差別撤廃を訴え、週末になるとチェルシー・ヘッドハンターズの中に混じって人種差別を展開するという二重生活を行なっているという。

また、RUCをやめた状況も、どうやら酒に絡んだ問題行動だったようだとサンデー・ワールドは報じている。

There is a long history of middle-class professionals indulging in soccer hooliganism at the weekends. But by any standard Barklie, who sources say is a season ticket holder at Stamford Bridge, leads an extraordinary double life.

Having left the police force in Northern Ireland he studied law and became a campaigner for human rights around the world.

He is a director of the World Human Rights Forum, a global network of campaigners, and has worked with organisations who help victims of the Troubles.

いわく、平日は専門職として働くミドルクラスの人物が、週末になるとフーリガンとして行動するという事例は昔からあるが、バークリーの場合は並外れている。彼はRUCを辞めたあとで法律を学び、世界規模で人権活動を行なうネットワークのディレクターのひとりとなり、北アイルランド紛争の被害者を支援する組織(複数)でも仕事をしている。

彼がディレクターをつとめているネットワークはWorld Human Rights Forumといい、見てみると南アジア(インド亜大陸)からMENA, アフリカのメンバーが多い。中でもチュニジアやヨルダン、エジプトの人が目立つ。連絡先として、キャリックファーガスの住所が挙げられているが、これがバークリーの事務所(もしくは自宅)だろう。

サンデー・ワールドの記事は続く。
Barklie can be seen online in a video taken in March 2013 that is in stark contrast to his Paris metro viral.

In it, he addresses a session of the World Human Rights Conference being held in Kerala, India. The man at the centre of the Chelsea race storm quotes the teachings of Martin Luther King and Gandhi in an appeal for racial tolerance.

He preaches to an Asian gathering: “We must all keep working with a sense of compassion for each other in our hearts, with a sense of justice and equality we should banish from our hearts and minds prejudices of creed, colour, religion and gender. When we do this we will conceive a more harmonious and peaceful society.”

The well-travelled activist adds: “I campaign for human rights, try to raise the awareness of human rights around the world on behalf of the World Human Rights Foundation. I would like to thank the people of Kerala for what has been the warmest welcome I have received in my many visits across the world. The lush and fertile nature of this beautiful land is complemented by the warm and endearing nature of the people.”

いわく、2013年3月にインドのケララで開催された「世界人権会議」の席で、バークリーはマーティン・ルーサー・キングやガンジーを引用しつつ、「人と人の互いの思いやり」とか「区別と偏見ではなく正義と平等を」とか「共存共栄」とかいったことを語り、「ケララのみなさんに暖かく迎えていただいたことに感謝します」といったことを述べている。

一方、テレビニュースで映像を見てすぐにバークリーだとわかったという元同僚は、「驚きはしなかった」と言い、記事の最後はバークリーとRUCの過去についてさっくりと書かれている。

Barklie served in west Belfast, where he was involved in springing RUC Special Branch informer Sandy Lynch who was being held captive by the IRA.

A native of Carrickfergus, he also worked in north Belfast and for a while in Derry.

Former police colleagues claim that it was during his days in the Maiden City that he switched his football allegiances from Glasgow Rangers to Chelsea.

Once based at Woodburn RUC station on the Stewartstown Road, Barklie was transferred under a cloud to Tennent Street in the staunchly Protestant Shankill area.

He was later eased out of the force on medical grounds after his disciplinary record became too much of a headache for his police bosses.

つまり、RUC時代に西ベルファスト(リパブリカンの最大の拠点を含むエリア)で勤務した彼は……うは。

さらっと書かれてるけど、サンディ・リンチって……ですよねー。この辺になると何が本当だかわからない世界だが、このときに有罪にされたダニー・モリソンはその後、判決が覆ったんではなかったか(→その通りだった)。

ああ、あとこれか。「何かやってるなと思ったら全員インフォーマーでした」事案。2007年4月のSlugger O'Toole(ラスティ・ネイル氏執筆):
http://sluggerotoole.com/2007/04/22/another-informer-rerevealed/

ともあれ、バークリーは西ベルファストだけでなく北ベルファスト(アードインなどがある)やデリーでも勤務しており、元同僚は、バークリーは元々グラスゴー・レンジャーズのサポだったが、デリー勤務のときにチェルシーのサポになったのだと主張している。

西ベルファスト時代、Stewartstown RoadのWoodburn RUC station(IRAによく攻撃されてたところですね)から、シャンキル地区(プロテスタントしかいないところ)のTennent Streetに異動になったが、その状況ははっきりしていないという。

やがて、警察上層部にとって規律違反が目に余るようになったあと、医学上の問題により、警察から退いていったという。

こういう人物のこととなると、時間が経過して警察の手続きが進めば少しは明らかになるだろうが、最終的にはいろいろと闇の中に置かれることがたくさんあるのではないかと思う。

IRAのインフォーマーのハンドラーだったのならなおさら。

しかし、「紛争後の社会」にポジティヴな貢献をしていると思われた「元・中の人」が実はぐだぐだだった、というのは、マイケル・ストーンもそうなのだけど(あの人の場合、どこからどこまでが本当でどこからどこまでが妄想なのかがわからないらしい。UDA筋のそういう発言がある)……うーん。



ここまで書いて、次の動きは現地月曜日の朝になってからだろうなと予想して、リチャード・バークリーが2012年11月にアイルランドのThe Journalに書いたコラム、The Troubles may have quietened, but the trauma lives on (北アイルランド紛争はおさまったかもしれないが、トラウマは消えているわけではない)に目を通していたら、アイリッシュ・タイムズのフィードが来た。記事自体はアイリッシュ・タイムズではなくPAの配信記事だが、既にバークリーが声明を出しているとの内容だ。




A former Northern Ireland police officer who is one of three men sought in connection with an alleged racist incident involving Chelsea football fans on a Paris Metro train has apologised for his involvement.

But Richard Barklie (50) insisted he is not a racist.

... On Sunday night, Mr Barklie issued a statement through his lawyer in which he admitted involvement in an “incident” that resulted in Souleymane S being “unable to enter part of the train”.

He said he had an account he wanted to provide to police that would explain the “context and circumstances”.

Mr Barklie denied singing any racist songs; said he travelled to the game alone; insisted he did not know any of the other individuals captured on video footage of the incident; and said he has never been part of any “group or faction” of Chelsea fans. The statement was issued by Belfast solicitor Kevin Winters.

“We act on behalf of Mr Barklie identified as one of the people sought by authorities investigating an incident on the Paris Metro on 16/2/15 ,” it said. ...







(・_・)



同じことを伝えるBBC Newsはちょっと見出しが変ですね。

Chelsea fan sorry over Paris Metro incident
http://www.bbc.com/news/uk-31575913


キャプチャ(オーバーレイの何かが変な位置に来てますが、それは無視してください)





アップデート(24日):





※この記事は

2015年02月23日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 06:00 | TrackBack(1) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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サッカーとレイシズム……"我々はすでにその戦いに勝利したと油断してしまっていたのかもしれない"(ベン・メイブリーさん)
Excerpt: パリにチェルシーのサッカーの試合を見に行ったらしい英国人がメトロで黒人男性を突き飛ばして乗車を妨害し、「人種主義が俺らのやり方、その何が悪い」みたいなチャントをした件は、「うー 」とならずにはいられ..
Weblog: tnfuk [today's news from uk+]
Tracked: 2015-02-25 22:29

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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