「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2015年02月20日

人種差別をやらかした「チェルシーのファン」がUKIPの熱烈な支持者だったり、撮影されているということの意味もわからない17歳だったり。

チェルシーは19日、目撃者の話などからチームのサポーター3人について本拠地のロンドンのスタジアムへの入場を一時停止すると発表しました。

この問題を巡っては、フランスとイギリスの警察が状況を調べており、チェルシーは3人の当時の行動が確認されれば、生涯にわたり入場を禁止する方針だとしています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150220/k10015603171000.html
(or https://archive.today/fBcbk )


チェルシーにくっついてる人種差別主義者がパリで大騒ぎした件は、延焼しまくっている。現状、まずはUKIP、そしてコリン・スタモアスタン・コリモアだ。後者については次項で扱う。

UKIPに延焼していたのは日本時間で19日の夜のこと。画面を見るとちょうど、"玉木「政治に対しての信頼をどう確保するかという話をしてるんです」 安倍「じゃあ日教組どうすんだ!日教組!」 議長「いやいや総理……ちょっと静かに」 安倍「日教組どうすんだ!」 議長「総理総理ちょっと」" というありえない光景(首相が議場でヤジって議長にいさめられて、なおヤジをやめない。ヤジの内容以前、あの国会は幼稚園か。自民党に投票した人は、自分が支持した議員に「おたくの党総裁の議場での振る舞いはおかしい」と苦情入れてください。あれは正常な民主主義の光景ではありません)の件が流れてきていて、その中にナイジェル・ファラージがいた。




これはファラージの「オウンゴール」というよりまったくの予想外で、あえていえばゴールキーパーが蹴ったボールが審判に当たってそのまま向こうのゴールマウスに吸い込まれていったくらいのことだと思う。上のキャプチャに含まれているのはデイリー・テレグラフ(今いろいろ大変。改めて書く)だが、ここではこんなおいしいネタに無表情で食いついてむしっているガーディアンを見ておくべきだろう。

Chelsea fan in Paris Métro video posed in picture with Nigel Farage
http://www.theguardian.com/politics/2015/feb/19/chelsea-fan-in-paris-metro-video-posed-in-picture-with-nigel-farage



いわく、パリのメトロで黒人男性に対してひどいことをした、チェルシーのサポーターということになっている人種差別主義者集団の中にいたJosh Parsonsという21歳の男が、UKIPのナイジェル・ファラージと仲良く写真におさまってますよー、という話だ。

見出し見ただけで、UKIP陣営が「政治家なんだから、誰とだって写真は撮る」ときぃきぃ言い出しているのがわかる(日本でも稲田氏とか高市氏とかの恥ずかしい写真のときにきぃきぃ声が上がっていたが)。

UKIPが極右中の極右と仲良しであることは既に明らかになっている。隠蔽しようという頭もないのでダダ漏れなのだが、極右中の極右であるBritain Firstが、形式的に自分たちの候補を立てておきながら、支持者にはUKIPの投票を呼びかけるという形でUKIPに協力していた(BFの候補には数十票入るようにしてある)。



ともあれ、ガーディアンの無表情な記事だ。
http://www.theguardian.com/politics/2015/feb/19/chelsea-fan-in-paris-metro-video-posed-in-picture-with-nigel-farage

淡々と事実を伝えるという形式の見出し(Chelsea fan in Paris Métro video posed in picture with Nigel Farage)のこの記事は、次のように書き出されている。
A Chelsea fan filmed while racist chants were shouted on the Paris Métro was a “vocal” supporter of Ukip, even posing with the party’s leader, Nigel Farage.

パリのメトロで人種差別の文言が大声で唱和されているときに姿を撮影されたチェルシーのファンは、UKIPを「声高に」支持し、党首のナイジェル・ファラージと一緒に写真を撮ってもいた。


(・_・) Keep calm and carry on.

いわく、この男はジョシュ・パーソンズという名前で21歳。チェルシーのシーズンチケットを持っている。彼は4ヶ月前に自身のInstagramのアカウントに、ビールを手に、ファラージと並んで撮った写真をアップしていた。"UKIP BOYS! What a geezer" という賛辞とともに……。

パーソンズはパリの地下鉄での騒ぎのビデオに写っていると何人もから指摘され、InstagramやFacebook, Twitterのアカウントを削除している。

UKIPはガーディアンの取材に対し、パーソンズは党員ではなく、「その人のことは聞いたことがない」と回答、写真はロンドンのパブの前で撮影されたものと述べている。また党の広報の担当Gawain Towler氏は(こういうところでちゃんと個人名出すのが英語圏の常識。日本語圏はそれをしないので「情報を隠蔽している」ように見えている)、「ファラージ党首は毎日毎日、支持者も反対者も含め大勢の人々に写真を撮影され、一緒に写真におさまっている」と述べた上で、「UKIPもファラージ党首も、パリのメトロでの一件は不面目なことで、この国もチェルシーFCもあのおかげで恥をかかされたと考えている」とあのような行為を一切支持しないことを明言し、「騒ぎの当事者が誰であるのかが明らかにされ、全面的に法の下で裁かれることになるのを喜ばしく思う」としている。

また、パーソンズの勤め先(記事には企業名が出ている)は人種主義は全面的に否定するとした上で、「パリでの一件について調査を行なっており、それが終わるまでは、彼は仕事には戻らない」と述べている。

記事はここで問題の映像と、パーソンズが映像の中でどういう服装をしているかといったことを挟んで、最後に「学友」に話を聞いている。

こういうときに「学友」が出てくるということは、いい学校に行ってたんだなと読み進めると、学費が年に£30,000もかかるような名門校(サマセット州にあるミルフィールドという私立学校)だ。男女共学で、卒業生にはリリー・アレンとか、ビンラディン家の長兄とか、労働党のルース・ケリーとかいった名前がある。

で、その「学友」いわく、ジョッシュ・パーソンズと弟のビーノ(弟も問題の騒ぎのときに同じパリの地下鉄の車両にいたと考えられる)は学校時代にもUKIP支持者として知られていたという。「個人的に、仲がよかったというわけでは全然ないのですが、非常に強力にUKIPを支持していたというのが興味深いですよね」と。記事の書き出しにある「声高な」支持者というのは、この「学友」氏の発言から取っている。いわく、そういう人は学内に4人か5人しかいなかったし、暴力的だったり無理強いしたりするタイプではなかったが、とにかく声が大きかったと。なお、取材に応じたこの「学友」は人種主義は軽蔑しており、学校全体はそんなふうではないと述べている。

興味深いのは、ナイジェル・ファラージが同じようにイングランド南部の名門校に行って、大学に進まずにシティで仕事を始めているという点も。(ジョッシュ・パーソンズの勤め先は金融の会社。)

一方、記事のこの下には、例の列車に乗っていた17歳のチェルシーのファン、ミッチェル・マッコイという人物が複数のメディアに対し、別に悪いことしてませんけど、と語っていることが報告されている。

これが、正直まったく意味がわからない。
Mitchell McCoy, a 17-year-old Chelsea fan who was also on the train, has spoken to a number of media outlets defending the incident, claiming there was no racism involved. He told LBC: “The carriage was full up, there was no room for him to get on and he tried to force himself on. He was really aggressive, pushing himself. I’d say it was self-defence, pushing him off.”

Asked whether the pushing and chanting were connected, he said: “No of course it wasn’t connected. The press are trying to make something out of nothing.”


ロンドンやパリのような大都会の地下鉄で、あの程度の混雑で「さらに人が乗ってきたら危ない」なんて反応になることはないんじゃないですかね(ビデオを見る限り、立ってても隣の人と体が触れるか触れないかの程度の混み具合)。

この17歳男子、パリからこんなツイートをしてて、あとで消して、アカウントもかぎかけたとか。
(・_・)




そして新聞記事に……




この17歳男子もシーズン・チケット・ホルダーですってよ。




チェルサポでいるのって、大変そうだなー。
(いや、ほんと、クラブがもうちょっと毅然と、人種差別主義者は「客」扱いしないようにすべき。80年代、90年代から何も学んでないのだろうか)








自分とこのサポのアカウントに対してもこの悪態ですよ。




この17歳男子については……




うちは少しは自重しなさいw




ああいうのが本当の「サポーター」ではないことは、2002年に「フーリガン」についての脅威論でマスコミが大騒ぎしている中(データベース検索すると、2001年から02年に「フーリガン」について大量の書籍や記事が出ていることが確認できるはず。テレビのワイドショーもすごかった。おどろおどろしい音楽に資料映像、みたいなのが)、イングランド(やアイルランドやメキシコやブラジルやカメルーンや……)から大勢の「楽しい人たち」が日本に来て楽しんでってくれたことでうちらは直接見ている。こんなことが「ニュース」になることが今後ないように祈るばかり。


※この記事は

2015年02月20日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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