「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2015年02月04日

ヨルダン軍パイロットのカサスベさんの惨殺映像が公開され、何がいつ起きたのかもわからない中、「自爆要員(自称)がツイッターで日本語で交流」とかいう一件について。

今日は映画を見に行くつもりで前から予定していたのだが、到底そんな気分ではなくなってしまった。

ヨルダン空軍のカサスベ中尉がものすごく残忍な形で殺害されたというビデオが出た。
http://matome.naver.jp/odai/2142299391898956401


これがもう、真っ黒な話。

まずその殺害方法があまりにひどい。

そのことについてNAVERまとめの見出しではぼかして書いたら、なぜか、「扇情的」という妙な言われ方をした(そもそもそう述べるその人は「扇情的」という言葉の意味を知っているのだろうか)。根本的には、これはある種の言語学系ではおなじみの話で、ざっくり言えば「事象が破廉恥であるときに、それを描写する言葉を破廉恥扱いする《良識派》」というやつで、そろそろ世界はそういう《良識派》にうんざりしているんじゃないかと言われて10年は経過しているはずだが(というかコソヴォ空爆のときにすでに言われてたかも)、バカな振る舞いをする人や動物を見て「バカだなあ」と口にする娯楽が不滅なように、こういう《良識派》も不滅であるようだ(何しろ新聞がそういう「消毒されたこぎれいな情報」のみを流布することを率先して鼓舞しているわけで)。

ただし本件では、「破廉恥な事象を破廉恥なままに描写した言葉」が問題とされたのではなく、「破廉恥な事象をかなり消毒してやわらかく描写した言葉」が問題とされているので、私にはわけがわからない。「現実の認識」と「煽情」とは全く違う。その区別もせず、「ショッキングな現実」を受け止めることもできないのだろうか。「ショッキング」なのは「誰かの言葉が扇情的だから」なのか。ありもしないことを当方が盛りに盛って書きたてているかのような言われ方をして腹立ちがおさまらない。ぶっちゃけ、腹というより中指。イタリアのネオ・レアリスモの映画でも見てからどうぞ、だ。




まあ、そんな話は殺されたカサスベさんの件とは別のことだ。

で、今日のこの話、何が黒いって、このビデオが公開された後で、ヨルダン政府は「カサスベさんはとっくの昔、1ヶ月前の1月3日に殺されたと考えられる」とか言ってるという件。

ここらへんで、いつ何があったかを整理しておかないとわけがわからなくなる。

カサスベさんの乗っていた戦闘機が墜落し、彼が捕虜になったのが12月24日。月末(年末)に出たISISのプロパガンダ誌では「インタビュー」もされていた。

一方、ISIS戦闘員と湯川さんと後藤さんのビデオ(「クソコラ」の素材になったもの)が出たのが1月20日。

そして、湯川さんの痛ましい写真が世界に見せられた。そのあと、後藤さんの音声メッセージに唐突にカサスベさんのことが出てきたのが1月27日。

27日の音声メッセージで、後藤さんは、「私とリシャウィを交換しろ」と言い、「時間的猶予は24時間だ」と言い、「要求に応じないと私より先にカサスベが死ぬことになる」と述べていた。

そして「予告された時刻」を前に日本政府の動きがばたばたしてメディアが「誤報」(勇み足)を連発し、そのドタバタが終わったころには、話はいつの間にか、後藤さんというよりカサスベさんが中心になっていた。アルジャジーラ・イングリッシュの報道もそうだ。

英語圏では当初、後藤さんの読み上げたメッセージを、「後藤さんとカサスベさん」を「リシャウィ死刑囚」と交換するという意味に取った報道がちょこちょこ出ていた(見出しやツイートを見ただけだが)。私もそれに釣られた気はある。

しかし、メッセージでは明確に「後藤さん」と「リシャウィ」の交換だと言っている。実際、日本の報道機関のいくつか(共同通信など)はこの箇所 (me and her) を「1対1」と意訳していた。そうだとすると、「ヨルダン人パイロット」は……?


そして27日のこのメッセージのあとさらにもう1本、短い音声メッセージが出され、31日に最悪の知らせが入ったのだ。

だが、これらの出来事はこれらの日付に起きたわけではない。最初のビデオ(「クソコラ」の素材にされたもの)は1月20日より前に撮影されていただろう。27日の音声を含め、その後の静止画と音声のメッセージについてはわからない。1時間あれば撮影し、編集してアップロードできるような簡素なものだったからだ。だがそれらは「遅くとも」という話にすぎない。例えば1月1日にすべて録画・録音されていたとも考えられる。というより、私たちには何も判断材料がない(ヨルダンや米国、英国の諜報機関は詳細をつかんでいるでしょうけれども)。

そういったことはこれから明らかになることを期待するよりない。このままでは湯川さんも後藤さんも、カサスベさんも、あまりに気の毒だ。真実が語られる必要がある。

一方で、この「謎」について多くの人が語り「ISISの行為」を多くの人が話題にすることは、彼らの思う壺でもある。「炎上マーケティング」というか、どんな形でも人の口に上ることで、彼らが存在することを人々は認識させられるのだ、ということを彼らは十二分によく知っている。認識されるうちに、「国 State」が既成事実化されていくということも考えているだろう。

だからなるべく話題にしないほうがいい。

いいんだけど、まあちょっとこれ見てよ。

カサスベさんが惨殺されたことについての「NAVERまとめ」のページの下部。



同じく、サイドバーはこんなふう。



今、「NAVERまとめ」で「イスラム国」のタグをつけると、もれなくこんなのが表示されてる状態。もうほんと、どこまで破廉恥なのかと。

「煽情的」っていうのは、こういうののことを言うのだ。特に「閲覧注意」とか言ってるやつ。見てないけど、こんなの、絶対許容できない。フォーリーですか。ソトロフですか。あるいは両方?

(「まばたき」云々は、ごめん、私はどうでもいいです。でも「デマ」ですよ

そして、サイドバーのほうの一番下、「(自称)自爆要員」つまり「戦闘員」の「ツイートのまとめ」。

「NAVERまとめ」(株式会社LINE)は、「テロリストのプロパガンダの拡散」にここまであからさまに加担して、恥ずかしくないんでしょうか。何人もが、(銃撃の巻き添えなどではなく)拉致され拘束された後に斬首されるという直接的な暴力で、殺されているというのに。。。

ということは措いておいて、この「自爆要員(自称)」のアカウント、話題になっていたときは私はアカウントの存在すら知らなかった。「まとめ」も見かけていなかった。私が英語圏にほぼ閉じこもっていた(というよりその外に出る余裕がまったくなかった)ので日本語情報にほとんど接していなかったからだが、どなたかがRTしたか何かで見かけた言葉で、こういうアカウントが存在しているということは知っていた。が、いろいろ書くの省くけど、とにかく「ばかばかしい」の一言だと思っていた。

が、今日になってYo Okada-Howellsさんの下記のツイートを見て、まずは「アカウント検証まとめ」というのをなんとなく読んでみた。そしてびっくりしたのだ。




ISIL(イスラム国)とハーデス君に関する事項
http://togetter.com/li/777241










これら詳細は、両記事をお読みいただきたい。

ISISがターゲットとしているのは、主にティーンエイジャーの「純粋まっすぐ君」タイプ、情熱的で「騙されやすいがパワーだけはある」ような若者だと現地の様子に詳しい人から聞いた。(40歳以上の人は、20年前に日本にいたなら、必ず「オウム真理教」を思い出すはずだ。)そうしてリクルートした15歳の子供に自爆攻撃をさせるということも多いという。

確か1年ほど前、アレッポから「息子が自爆した」ことをたたえるツイートが英訳されて回ってきたことがある。「美少年」としか形容できない見目麗しいその少年は14歳だというがもっと幼く見えた。大きな目がきらきらと輝き、軽くカールした栗色の髪が顔を縁取っていて、まだひげの生えていない「子供」だった。

アレッポが地元の人のようだったが、父親が息子を自爆させるなんて、どういうことだろうと思った。2011年に始まったこの事態がまだ「内戦」化していなかったころに、政府がえらい勢いで反体制派をつぶしまわる中、息子とはぐれてしまって憔悴しきった父親のもとに、親戚が探し出した息子が帰ってきたときの一部始終を、市民ジャーナリストが携帯電話のカメラで撮影した映像が「心あたたまる感動ビデオ」的に回覧されていたことを思い出した。(父親が息子を進んで死なせるなんて「文化」はここにはない、と思った。)(←日本語圏はマララさんの銃撃についても「文化」で語ろうとするのでこういうことを書いておく。)

私はたまたまそういうことにずーっとオンラインで接してきたのだが(大半は英語のおかげで)、そういう人はごくごく少数だろう。(少数だろうが多数だろうが、私自身は構っちゃいない。というか気にしてない。)

だが、と私は考えてみた。自分がそこについて何の予備知識もなく、「あそこでは父親が息子を進んで死なせる文化があるのです」なんてことをもっともらしく言われたら、「ああ、そうなんだ」って思ったかもしれない。善意の市民が簡単に「洗脳」されてしまっているという光景は、あのおぞましい「自己責任」の連呼やら、「ザイニチトッケン」なるデマの流布やら、「(分子1つでも危ないんだから)子供を守れ」の大合唱やらで見てきたわけで。

まあ、とにかく、そういう無防備な人がさくっと取り込まれちゃったりするのだろう。そこに「憧れのシリアに行きたいあなた、私が相談に乗りますよ」と親切な笑顔を浮かべた、信頼できそうな大人が立っていればなおさら。

ともあれ、「自爆要員(自称)」の件である。

上で見たYo Okada-Howellsさんのツイートにあった「画像」のリンクは、@takaokaさん(高岡謙太郎さん)のツイートだ。


ブログ記事がHuff Poにある。

イスラム国戦闘員アカウントとの自動翻訳による対話の嘘(高岡謙太郎)
http://www.huffingtonpost.jp/kentaro-takaoka/islamic-state_b_6602976.html


高岡さんのこのブログ記事を見る前に、私もその「自爆要員(自称)」の使っているアバターをGoogle画像検索してみた。





高岡さんが見つけたのと同じ人物についての、別のメディアの報道記事だ。シリアに行ってしまったカナダのジハディストについての報道である。

ほかにもあの「自爆要員(自称)」のツイートにはおかしなところがたくさんある。あんなふうに結果を返してくれる機械翻訳はないと断言できるし(高岡さんがブログで指摘されている点もおかしいが、ほかにもほんとにもういろいろと! 詳細は言いませんけど)、あの日本語は「日本語話者が考えた、たどたどしい日本語」のように見える。それに……やめておこう。

全22ページ

01 https://archive.today/G1vjV
02 https://archive.today/KTqil
03 https://archive.today/P6JlO
04 https://archive.today/3X3zb
05 https://archive.today/xL11j
06 https://archive.today/yOG10
07 https://archive.today/1z0tr
08 https://archive.today/rdkSN
09 https://archive.today/uljUS
10 https://archive.today/6NjwU
11 https://archive.today/aXXzG
12 https://archive.today/ZbXnH
13 https://archive.today/HTU3T
14 https://archive.today/IWz4A
15 https://archive.today/bHTv1
16 https://archive.today/BldVn
17 https://archive.today/11dlq
18 https://archive.today/36xmO
19 https://archive.today/VswcU
20 https://archive.today/A2uQ1
21 https://archive.today/Ls6XX
22 https://archive.today/0m6b1

はてブ:
http://b.hatena.ne.jp/entry/matome.naver.jp/odai/2142222254072200701





こんなので「感動」したり「切ない」とか感じちゃったりしてる人、目はついてますか。

この本とか読んどくといいんじゃないですかね、文庫化されたようだし。
4794221061文庫 戦争プロパガンダ10の法則 (草思社文庫)
アンヌ モレリ Anne Morelli
草思社 2015-02-03

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あと、何度も言いますけどこの本ですよ。
B005HDK4SSThe 9/11 Wars
Jason Burke
Penguin 2011-09-01

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追記。

池内恵さんの本をようやく書店で見て購入しました(10日で3刷行ってますよ。メインは中高生向けマンガ・学参と女性誌という「駅前の書店」のような店で、新書コーナーで平積み)。これは読むべき本。
4166610139イスラーム国の衝撃 (文春新書)
池内 恵
文藝春秋 2015-01-20

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それと、「自称自爆要員」とやらのツイートを「まとめ」ているNAVERユーザーについて。ほんとに要注意です。ネットというのはこういうところです。



ここでリンクした "【要注意】palezio氏によるユダヤ関連のNAVERまとめのトンデモなさ" というページでは、ユダヤ研究の直立演人さんがpalezio氏のページを分析・検証したツイートがまとめられています。



※「日本的」でもありますが、「ホロコースト」や「人種主義」と切り離して「ファシズム、ナチズムを政治思想として相対化する」ようなことは英語圏でもけっこう見ます。20年前にもあったので最近のことでもないかと。米国のことは何も知らないけれど、英国ではヘイト団体が表に立つことによって、そのような「学問」の体裁をとったネオナチの存在感はメディアなどでは見えない状態になってるかもしれません。



それと、バアス党について。お手軽にウィキペディアに書かれていたことを少し抜粋しておきます。(「バアス党ってなあに」という方は基礎知識が足りてませんから、それを補ってからどうぞ。)








UARというのは、かつてシリアとイラクとエジプトが連合して「ひとつの国」を名乗っていたこと。
http://en.wikipedia.org/wiki/United_Arab_Republic

2016年(来年)はサイクス・ピコ協定から100年なんですよね。(私にとっては何より「イースター蜂起から100年」なんですけれども。)






※この記事は

2015年02月04日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 20:30 | TrackBack(0) | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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