アイルランド共和国では女性の堕胎(妊娠中絶)は非合法だ。避妊も離婚も「婚前交渉」も、宗教的戒律(カトリック)のもとで、とうてい「西欧先進国」らしくない状態にあるが、堕胎は特にすさまじい状態で、病気で生命の危機にさらされている妊娠中の女性を救うには堕胎するしかないというケースでも病院が堕胎を拒んだために女性が死んでしまったことがあるし(しかもその女性がインドからの移民で、カトリックではなかったというのがあまりに悲惨)、もっと最近では、妊娠中の女性が脳死状態に陥って、胎児を死なせないためにその女性を生命維持装置につないでいるとかいうことが起きて、議論だけは「国民的議論」が起きているらしい。しかし……この話続けていると不要な不機嫌を生じさせるだけなのでこの辺にしておく。本題じゃないし。
そんな保守国家だが、同性間の性的関係については、今は比較的オープンだ。2013年の調査では73%の人々が「同性結婚は憲法の下で許可されるべき」と考えており(ちなみに「結婚」はキリスト教のもとでは宗教的なものである)、既に2010年には同性カップルの「シヴィル・パートナーシップ」が始まっているが、2015年にはさらに「結婚」を認めるかどうかのレファレンダムも予定されている。90年代以降じわじわと社会的認知が拡大してきているさまは、ウィキペディアに端的に述べられている。(なお、流れを変えたのは2009年に33歳の若さで急病死したポップスター、スティーヴン・ゲイトリーだろう。1999年にやむなくカムアウトしたのだそうだが。)
http://en.wikipedia.org/wiki/LGBT_rights_in_the_Republic_of_Ireland
法的環境を変えたのは、2011年の大統領選挙に立候補していたデイヴィッド・ノリスだ。ゲイであることをオープンにしていた彼が1980年代にたくさん尽力したことで、ずいぶん環境が変わったのだそうだ。
そんなアイルランドで、先週末、またひとり政治家がカムアウトしたということが大いに話題になっていた。
Leo Varadkar on Radio 1: "I am a gay man, it's not a secret but not something everyone would necessarily, necessarily know."
— Gavan Reilly (@gavreilly) January 18, 2015
Good on Leo Varadkar. Visibility is empowering for others; now we need to ensure gay folk can come early out and be able progress a career.
— Mick Fealty (@mickfealty) January 18, 2015
Leo Varadkarという名前を、私は知らなかった。彼のカムアウトを伝えるツイートのいくつかから、「閣僚の一人だ」ということは把握したのだが、失礼ながら変わった名字なので、「きっと東欧系の移民の子で、FGではなく連立パートナーの労働党の人じゃないか」くらいの雑な第一印象を抱いていた。
全然違ってた。
自分の先入観を恥じるばかりだが、Leo VaradkarさんはFGの政治家だ。(FGといえば、映画『Jimmy's Hall』でジミーをいびっていたオキーフらの「青シャツ」だ。いつまでもこれを言うのはフェアではないのだが。。。)
http://en.wikipedia.org/wiki/Leo_Varadkar
Leo Varadkar (born 18 January 1979) is an Irish Fine Gael politician who has served as Minister for Health in the cabinet of Taoiseach Enda Kenny since 2014.
1979年生まれ、現在36歳という若さで、昨年エンダ・ケニーに抜擢されて保健大臣。将来的にはFGのトップに、と期待される若手だそうだ。選挙区はダブリン・ウェスト。「変わった名字」なのはお父さんがインド系だから(インド系の一般医とアイルランド人女性の夫婦に生まれた息子で、自身も医師である)。
そのヴァラドカー大臣が、誕生日である1月18日にRTEのラジオのトーク番組に出て、自身がゲイであるということを公にしたのだそうだ。
Leo Varadkar is discussing his childhood, career and personal life on Sunday With Miriam http://t.co/TgEM9GqgwY pic.twitter.com/Ip5A3IitlM
— RTÉ News (@rtenews) January 18, 2015
Minister for Health Leo Varadkar has said he is gay
— RTÉ News (@rtenews) January 18, 2015
Refreshing honesty. Well done @campaignforleo .
— Rosita Boland (@RositaBoland) January 18, 2015
Well done Leo Varadkar; brave politican, good man.
— PeterMurtagh (@PeterMurtagh) January 18, 2015
Kudos to @campaignforleo for coming out on RTE, no matter what your political persuasion it takes guts to put your personal life out there.
— Laura Byrne (@LauraByrneStory) January 18, 2015
I think we probably should wish @campaignforleo a happy birthday.
— David Cochrane (@davidcochrane) January 18, 2015
Oh, and fair play Leo Varadkar, although the nicest thing is, it hardly seems to be causing any storm.
— Dara Ó Briain (@daraobriain) January 18, 2015
Leo Varadkar: 'Some people get rejected by their families [for being gay], but I have been very lucky' http://t.co/P1ucUkidbS #LeoVaradkar
— Independent.ie (@Independent_ie) January 18, 2015
"It's not something that defines me": Health Minister Leo Varadkar on being gay http://t.co/wOKtrwYdEh pic.twitter.com/5JeY6CfJXt
— TheJournal.ie (@thejournal_ie) January 18, 2015
この「(ゲイであることは)私を定義するものではない」という発言は、ウィキペディアに引用されている。
http://en.wikipedia.org/wiki/Leo_Varadkar
During an interview on national radio on 18 January 2015 (his 36th birthday), Varadkar spoke publicly for the first time about being gay. He said: "it’s not something that defines me. I’m not a half-Indian politician, or a doctor politician or a gay politician for that matter. It’s just part of who I am, it doesn’t define me, it is part of my character I suppose".
「私はインド人のハーフの政治家ではないし、医師の政治家でもないし、ゲイの政治家でもありません。それは私という人間の一部に過ぎません。その一部が、私を定義することはないのです」
For anyone that wants to listen to @campaignforleo speaking to me this morning, here is the link http://t.co/7tU4eTN32o
— Miriam O'Callaghan (@MiriamOCal) January 18, 2015
Residents in Leo Varadkar's constituency respond to his announcement http://t.co/qE0uORHpcF
https://t.co/JyykfCzhgT
— RTÉ News (@rtenews) January 18, 2015
んで、人々は「大臣がゲイだなんて」と驚くより、「えっ、まだ36歳だったの」と驚いているというのが、アイルランド可愛い。
また、リパブリカン筋(反FG)は「重要なのは、性的指向なんかより、病院運営の能力じゃないの」と文句を言ってる(通常運転)。
A lot of people more interested in Leo Varadkar's sexual preferences than his ability to run our hospitals. Something wrong there.
— IrishRepublicanNews (@repnews) January 19, 2015
同性愛についてこんなにオープンになれるんだから、女性の「選ぶ権利」も、いつかは……と思いたい。Pro-lifeの活動家(の一部)の過激な主張とどぎついプラカードを見るとこっちが病気になりそうな状況だけれども。
でも「結婚」はそうすんなりとはいかないかもしれない。イングランドでも、「シヴィル・パートナーシップ」と「結婚」とでは、宗教界の対応はまるで違っていた……「結婚」には明確に反対していた(が、最終的には、宗教は政治から置いてけぼりになることを選んだような形だった)。
Ahead of #Ireland's vote on marriage equality, Minister for Health Leo Varadkar comes out as gay man: http://t.co/r70iCEnlx3 #NOH8Worldwide
— NOH8 Campaign (@NOH8Campaign) January 18, 2015
と、そんな深刻な側面もありつつ、これですよ、これ。
#Sexualorientation trends on Twitter after Senator Fidelma Healy Eames uses odd hashtag on tweet to Leo Varadkar http://t.co/H1ycEHHqMP
— Independent.ie (@Independent_ie) January 18, 2015
#Sexualorientation trends after Senator Fidelma Healy Eames uses odd hashtag on tweet to Leo Varadkar http://t.co/2bMl4AbvHJ なぜこの展開にw アイルランド
— nofrills (@nofrills) January 19, 2015
や、このハッシュタグの使い方、別に変じゃないですよね(ぎこちないことはぎこちないけど)。なぜまぜっかえされているのかよくわからないけど、アイリッシュの「まぜっかえし芸」は笑える。いかに「意味」を出さないかをよく考えてる。(笑)
The Journalの概観記事。
With Leo Varadkar becoming Ireland's first openly gay Minister, we take a look at the history of Irish LGBT rights http://t.co/aVWqgj8FWC
— TheJournal.ie (@thejournal_ie) January 19, 2015
大臣のカムアウトを伝える新聞一面の特集:
http://www.broadsheet.ie/2015/01/18/de-monday-papers-87/
アイルランドの大臣のカムアウトが日本語の記事にもなっててびっくり。
アイルランド保健相が同性愛を公表、与党の次期党首候補 http://t.co/PMIStn5wcP 世界の最新ニュースはこちらから→ http://t.co/89EqvzhcyZ pic.twitter.com/qvQmPrOFgi
— AFPBB News (@afpbbcom) January 19, 2015
※この記事は
2015年01月20日
にアップロードしました。
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