「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2014年12月22日

日本で最近人気があるらしいアメリカ人の「ジャーナリスト」(?)について、ほんの少しだけ。

Twitterの画面を見ていたら、法華狼さんのはてなダイアリーの記事が流れてきた。
「マイケル・ヨン」が予想通りに「テキサス親父」の後を追っている
http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20141220/1419128491

*via @zu2

法華狼さんのブログに書かれていることから、自分がメモしたいことを、Twitterの制限字数内に落とし込んだのが下記である。(はてなブックマークを使っている時期だったら、こういうことをブクマのコメント欄に書いただろう。)




はてなブックマークではみなさんこんな感じ:
http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20141220/1419128491

で、これらのブクマコメントのいくつかと、法華狼さんのブログ本文、およびコメント欄を見て、次のようなことを思ったので、本稿を書いている次第だ。
極右・ネトウヨ界隈が彼を「発見」したのとは関係ないと思うが、彼を最初に日本語圏に持ち込んだひとりはたぶん私だし(2010年のバンコクでの赤シャツデモ: http://togetter.com/li/21932 )ずっとフォローしてるし、少し書くか
http://b.hatena.ne.jp/nofrills/20141222#bookmark-236650322


マイケル・ヨン氏 (Michael Yon):
https://twitter.com/Michael_Yon/
Michael Yon is an author, columnist and war correspondent. Currently in Thailand

Joined July 2009


ウィキペディアのエントリもあるということを今知った。例によって、「ヒットを飛ばしたわけでもなく、さほど有名ではない個人についてのページなのに、やけに詳しい」(「有名」とは、例えばジョン・ル・カレのような人をイメージ)。記述も、売り込みの企画書みたい(「著名な新聞が彼についてこう言った」みたいなのが多い……)。ウィキペディアにはよくあることだけど。
http://en.wikipedia.org/wiki/Michael_Yon
Michael Yon (born 1964) is an American writer and photographer. He served in the Special Forces in the early-1980s, and he became a general freelance writer in the mid-1990s. He focused on military writing after the invasion of Iraq. Yon has been embedded on numerous occasions with American and British troops in Iraq, ...

このウィキペディア、ヨン氏について「ジャーナリスト」だとは言ってない。「ライター(著述家)」と書いてある。一方でTwitterでは "war correspondent" と名乗っていて、correspondentは通常「現場に取材に行くジャーナリスト」だから、彼が「ジャーナリスト」なのかどうかもかなり曖昧だということになる。が、通常、"war correspondent" といえば「戦争を取材し、それについて書くジャーナリスト」のことだから(ロバート・キャパとか)、「ジャーナリスト」、あるいは日本語圏でいう「ノンフィクション・ライター」と考えてよいだろう。いずれにせよ「取材」をして「事実を事実として提示すること」は不可欠な仕事だ。私は彼のしていることをcorrespondentの仕事と認識しており、それには日本語では「ジャーナリスト」の語を宛てている。

「彼を最初に日本語圏に持ち込んだ」と私が述べているのは2010年5月のタイ、バンコクでの「赤シャツ」デモ(タクシン支持派による座り込み)が、政府当局による武力での排除・鎮圧という形になってしまったときのことだ。今年の香港のデモがずいぶん日本語圏のTwitterでも「実況」されていたようだが、同じようなことが、2010年5月にはタイのバンコクについて、英語圏で起きていた。2011年のいわゆる「アラブの春」で「ねこも杓子もTwitter」の状況が始まる前のことで、2009年のイランの動乱で「Twitterってこんなこともできるんだ」と気づいていた人たち(主に英語圏の若いジャーナリスト)がTwitterという「場」に集まりつつあったころのことだが、そのときには既に2008年のムンバイ(インド)でのテロ攻撃の現場からのツイート(中にはニセモノもあったが)で衝撃を受けたベテランのジャーナリストの何人かも、Twitterを使って「現場からの実況」をし始めていた。

「ジャーナリストが現場から実況ツイート」することがすっかり当たり前になっている今から見れば「昔話」のように感じられるが、当時はまだまだ、英語圏のメディアも「たかが140字に切り刻まれた報告」に、価値を認めようとはしていなかった。一部ではむしろ「140字なんて短文では事態を単純化してしまうだけだ」という警戒感が高かったかもしれない。

そういうころから、Twitterを積極的に使っているジャーナリストがいて、マイケル・ヨンさんはその一人だった。(ジャーナリズムで「140字」を積極的に使ったということは、いわゆる「アーリーアダプター」以上の意味があると思う。)

2010年5月のバンコクから、後に「ライヴ・ツイート」と呼ばれる方式で「現場からTwitterで伝えていた」のは彼だけではない。英BBCの Alastair Leitheadさん、英インディペンデントのAndrew Buncombさん(彼はこのデモ取材中に脚を撃たれている)、カナダのグローブ&メイルの Mark MacKinnonさんなど、何人もが現場からツイートしていた。人数は多くはなかったがタイのブロガーも何人か、現場から英語でツイートしていた。私が最初にMichael Yonさんを知ったのは、そういった人たちの誰かがRTしていたのがきっかけだったと記憶している(そしてそれっきり、フォローしたままである)。外国人が多く滞在しているホテルが武力行使の対象となり、その様子をヨン氏はリアルタイムで実況していたのだ。私はそれを次のように日本語圏に導入した(View数は多くないが)。

戦場ジャーナリストが伝えるバンコク
http://togetter.com/li/21629


このときにヨン氏がやっていたのは、ホテルの上層階の部屋の窓から撮影した写真(「断りなく使ってくれてかまいません」という注意書きつき)や、下記のような銃撃の生々しい報告をネットにアップするということだった。彼の報告は、別のジャーナリストの報告とも矛盾していないようだった。




この後数日間の、ヨン氏を含むタイの現地報告のログは下記(クリッカブル)。





なお、ヨン氏は当時から、主にFacebookに投稿したものをTwitterにフィードするという形をとっていたが、それは今も変わらない。

というわけで、2010年5月のタイの動乱をきっかけに私はこの人をフォローし始めて、そのままフォローしっぱなしなのだが、自分でよほど興味・関心のある分野であれば別として、ジャーナリストの個人的なフィードは、いちいちリンクをクリックしないと記事が読めない(ツイートだけで完結しない)ものは見ないことも多い。ヨン氏のはFBからのフィードなのでTwitterでは冒頭部分しか出ていないのだが、ログを見返しても2011年以降はほとんど見ていないかな……。2011年以降、「読むべきアカウント」が増えたので、押し出されたに違いない。この人のところでなければ読めなさそうな報告(アフガニスタンなど)は何度か見たはずだが。

タイは2010年のあとも何度か「動乱」と呼べる事態になっているが、2010年5月のあとのものは、不思議と、この人のツイートは記憶に残っていない。バンコクの街中からは、ジャーナリストではない現地在住英語話者の写真報告が来るのを何度もRTしたりしているが、ヨン氏が拠点としているはずのタイからの報告には記憶に残っているものがない。私の見方が雑なだけだろうか。

で、2010年当時から、彼は「ネットで活動する独立ジャーナリスト」だった。日本ではあまりなじみのないスタイルかもしれないが、米国では2004年には既にこのようなスタイルで活動するフリーランス・ジャーナリストがけっこういた。大手(ABCやCNNなど)にコメントを求められればコメントするし、発注があればそこの仕事をするが、基本的に自分のウェブサイトやブログを報告・発表の場とし、活動資金は本を書くほか、読者からのdonation(寄付金)を募っている、という活動形態の人たち。

「ブログ運営者への寄付」は、英語圏ではずっと以前からよく見たもので、一般的なことだ。パソコンのソフトでも、シェアウェア、フリーウェアのほか、「ビール代(コーヒー代)を投げ銭する」感覚のドネーション・ウェアというのがあるが、ブログもそういう感じの運営がなされているところは多いし、もっとはっきりと、ウィキペディアのような「運営費ご協力のお願い」があるところもある。私がよく読んでいるブログでは、北アイルランド政治について非常に優れたグループ・ブログのSlugger O'Tooleも右サイドバーにボタンがあるし、MENA情勢について英語で解説してくれるThe Arabist(エジプト)にもボタンがある。マイケル・ヨン氏のサイトも、私がそのサイトの存在に気がついたときからずっと右肩に「寄付ボタン」がついていた。



なので、法華狼さんのブログにある下記のくだりは、私の考えすぎかもしれないが、深読みする必要はないところを深読みしているように見える。英語圏ではこういった「寄付ボタン」は保守派だとかリベラル派だとかいったことには関係なくついているもので、それを単に流用しているのだと思う(ボタンをつけておけば、見た人が寄付してくれるかもしれないし、無駄にはならない)。誰かが助言してつけたボタンだとしても、さほど深い意味はないだろう。ただし、会計報告があるのかどうか、ヨン氏の拠点での税務申告はどうなのかなど、気になるところはある。投げ銭されてるのがほんとにコーヒー代程度なら税金の問題にはならないと思うが。
また、日本語ブログの最新エントリを見たところ、寄付をつのっていた。Michael Yon JP: 寄付について (Donation)
……(以下略)


なお、ヨン氏の日本語サイト開設はごく最近のことだ。




blogspot (Blogger) は、閲覧者がどこからアクセスしているかによりURLの末尾が変わる。ヨン氏がここで blogspot.jp のURLを示しているということは、日本からblogspotにアクセスした場合のURLを示しているということだが(blogspot.comならアメリカからのアクセス)、その辺は、別に読まなくてもいいところを読んでる気もしなくもない。

で、ヨン氏がいきなり日本語のツイートをしだしたのに気づいたとき、私は「???」となったのだ。だが、話題が私が全然コミットしてもいないものだったので、ただ「見た」というだけで、しばらく後になってその背景が少しわかったときのツイート。




「小山さん」=エミコヤマさん。在米の研究者さんだ。




以下は下記の15時台:
http://twilog.org/nofrills/date-141118/asc

コヤマさんのブログより(12月11日付):
http://macska.org/article/414
ここまで見てきて分かるように、マラーノ氏は評論家を名乗るほどの知識も見識もないただのテキサスのオヤジに過ぎないが、それでもかれの存在には注意する必要がある。それは、かれ自身がどうというのではなく、かれに続いて「日本の味方」を自称するアメリカ人「評論家」がこれからも出てきそうな雰囲気だからだ。……

いま、そうしたポスト「テキサス親父」に一番近いのは、米軍出身のジャーナリスト、マイケル・ヨン氏だろう。かれはこの数ヶ月、世界中を周って一次資料を集め検証した結論として、「慰安婦」問題はまるまる虚偽であり、米国の同盟国である日韓を離反させるための中国など敵対勢力による詐欺的陰謀である、とまでソーシャルメディアで言い切っている。ここのところ『産経新聞』にも何度か登場しているから、お馴染みかもしれない。

米軍に極めて近い立場のヨン氏が、「慰安婦」問題による日韓の離反を懸念していることはよく分かる。しかし、だからといって「慰安婦」問題について「一部誤解されている」どころでなくまるっきりの虚偽だと言い出すのにはどういう背景があるのか気になっていたのだが、……根拠は、やはり一九四四年の米軍報告書、そして八月に朝日新聞が吉田清治氏の記事を撤回したことだった。

せっかくの機会なので「あなたは世界中を飛び回り一次資料を収集したと言うのに、どうして日本で少なくとも二十年以上前から論じ尽くされた論点しか提示できないのか、あなた独自の取材で見つけた新事実なり、新たな論点がないのか」と聞いてみたが、「自分が事務所を置くタイでは慰安婦は問題になっていない」「慰安婦問題は米国の戦略を妨害しようとする工作だ」と言うばかり。いったいどこでどのような取材をして、どのように議論の深化に自分が貢献できると思っているのか分からないが、保守系メディアではもてはやされつつある。

http://macska.org/article/414


ヨン氏が日本に絡む前から元々「保守派」だったのかどうか、私はまったく把握していない。個人的にFacebookはやっていないし、既に述べたとおり、ツイッターでもろくに読んでいない状態だからだ。ただ、氏は「元軍人」という経歴から米軍エンベッド取材を多くしており、その取材をうけて書かれたものは「軍人」に歓迎されるようなものらしいということは、2010年にサイトを確認したときに思った覚えがある(著書の内容が、説明文によれば、「間違いだと攻撃されまくっているイラク戦争についての本当のこと」というようなトーンだった)。イラク戦争やアフガニスタン戦争について、私が読んできたものとは全然語りのトーンが違うし、まあ、深入りしてもしょうがないっしょ、というところだが。

と、やけに長いウィキペディアのエントリを見てたら、ああ、Instapunditとのつながりがありますね。つまり、パジャマメディア。思い出すと頭が痛くなる、約10年前の英語圏でのオンライン・バトル。(歴史修正主義を扱う人は、パジャマメディアについては見ておいたほうがいいかも。)

いずれにせよ不思議なのは、私が2010年の5月に氏のアカウントをフォローし始めて軽く4年半は経過しているのだが、その間、私が他にフォローしている英語圏のジャーナリストが、ヨン氏の発言を参照したり、RTしたりしていた記憶が私にはない、ということだ。

「元米軍人のジャーナリストやアナリスト」は私がフォローしている中にも何人かいるが、ワシントンなどにいる彼らが、アフガニスタンの米軍を取材しているヨン氏の発言を参照していたこともなかったと思う。アメリカに住んでる人ならテレビで見たりすることもあるのかもしれないが、私の場合は、Michael Yonの名前はTwitterの外ではまったく見ない(私の見ている範囲は、主に、BBC, ガーディアンなど英メディアと、Foreign Policyなどの米国の外交系の論説だ)。

それに、「イラク戦争を現場で取材し、伝えた」人ならば、今頃はISISについていろいろ書いていて妥当なはずだが、その形跡もない。米軍の戦闘については本が書けてしまうほどなのに、スンニ派武装勢力は専門ではないのだろうか。ヨン氏がエンベッドしていた米軍部隊が戦ったのはまさにスンニ派の武装勢力だと思うが(地域的に、シーア派の地域でもクルディスタンでもない)。そもそもそれなら、第二次大戦中の敵国の行為について書けているというのは、何なのだろうか。2000年代の米軍の戦闘とはカケラも関係ない。ご本人、1980年代に特殊部隊にいたとのことだが、第二次大戦中の敵国の行為と関係ないのは同じだ。

検索してみたら、2008年のNYTの記事が見つかった。「ブロガーであってジャーナリストではなかったが、ジャーナリストとしての活動も始めた」的なことが書いてある。
He insists that he still does not really know the rules of journalism, but says he has recently, grudgingly, accepted that he has become a journalist.

...

Like most bloggers, Mr. Yon has an agenda, writing often that the United States’ mission to build a stable, democratic Iraq is succeeding and must continue. He rarely disparages those who disagree, though, and he does not shy away from describing the disturbing things he sees.

He sometimes criticizes United States forces, their Iraqi allies, and even decision makers in Washington; lately, he has warned that while the American focus is on Iraq, Afghanistan is being lost.


と、ウィキペディアにこんなことも書いてあるな。。。
http://en.wikipedia.org/wiki/Michael_Yon
He started general freelance writing in the mid-1990s despite having no background in the field. Notably, he covered the Aghori, an obscure Hindu cult that eats human flesh to supposedly gain magic powers. Yon believed that he had located an American cult member and passed his suspicions on to the FBI. He began writing about the occupation of Iraq after the death of two of his army friends, one of whom he had known since high school.

こりゃ、ジャーナリストとして扱われないのは当然だ。

だけど、法華狼さんのところやコヤマさんのところのブログ・コメント欄にソースも示さずにコピペされているような話も、鵜呑みにしちゃいけないと思うけどね。

さほど興味のある話でもないので、こんなところで。

あと、「調査ジャーナリスト」としての実態がヨン氏にあるかどうかというと、私の観測範囲では、Noである、ということもはっきりさせておきたい(「戦場ジャーナリスト」と「調査ジャーナリスト」はやることが別なので……)。

調査報道とはどういうものかというと:

アメリカの卑劣な戦争―無人機と特殊作戦部隊の暗躍〈上〉アメリカの卑劣な戦争―無人機と特殊作戦部隊の暗躍〈上〉
ジェレミー スケイヒル Jeremy Scahill

アメリカの卑劣な戦争―無人機と特殊作戦部隊の暗躍〈下〉 アメリカ最強の特殊戦闘部隊が「国家の敵」を倒すまで NO EASY DAY ブラックウォーター――世界最強の傭兵企業

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※この記事は

2014年12月22日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 07:00 | TrackBack(1) | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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[ネット][報道][トンデモ]マイケル・ヨン氏が、櫻井よしこ氏と谷山雄二郎氏を批判したり、花田紀凱氏に欠席裁判で批判されたり、アルジャジーラに接触されたり、日本政府に推奨されたらしかったり
Excerpt: マイケル・ヨン氏とは、軍事ブロガーとして活躍していたが、最近の日本では従軍慰安婦問題の否認で知られている。 「マイケル・ヨン」が予想通りに「テキサス親父」の後を追っている - 法華狼の日記 インター..
Weblog: 法華狼の日記
Tracked: 2015-05-22 12:39

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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