日本においては「右翼」という言葉に対する嫌悪感がすごすぎていかんともしがたいのだが(例えばマーガレット・サッチャーの保守党はright wingであるということを「右翼」という言葉で表すと、眉をひそめられる)、日本を含む(含めていいよね)「西側」世界では、長く、「右翼と左翼」という対立軸で物事が考えられ、分析されてきた。英語ではrightとleft (right-wingとleft-wing)だ。10年ほど前に流行った「ポリティカル・コンパス」でも基本はそれだ。
その「右と左」の対立軸で、最も右に位置する人々を「極右 far right」、最も左に位置する人々を「極左 far left (extreme left)」と呼ぶ。その用語法には、両者は一番遠く離れていて共通点はない、というイメージがある。実際、「極右」からイメージされる「肉食ってビールばっかり飲んでそうなマッチョなハゲ(スキンヘッド)」と、「極左」からイメージされる「全身黒ずくめで本はやたらと読んでるヒッピーみたいな長髪」とは、買う服も行く店も見るテレビ番組も好きな音楽も、何もかも違っていそうだ。
私自身、そういう認識の中でずっと過ごしてきた。イングランドでパキスタン人を侮蔑的な用語で呼び、店を襲撃したりしている「極右」は、「左翼の労働党支持者」より「右翼の保守党支持者」に近いだろう、という直線的なイメージ。図で示すとこんなふう。
[極左(SWP)]―――[左翼(労働党)]―――[右翼(保守党)]―――[極右(C18)]
けれど、それは本当にそうなのだろうか?
いったいなぜ……英極右のあの男がシリアに行った理由
http://matome.naver.jp/odai/2141752716877725401
BNPを追放されたニック・グリフィンが、またシリアに行っていたそうだ。破産宣告された人物、旅費もないだろうに、誰が飛行機代を支払ったのだろう。誰がホテル代を支払ったのだろう。誰が……という疑問が噴き出すと同時に、そこにある「陰謀論」と「無知」(あるいは「選択的な現状認識」か)の渦巻きに放り込まれてめまいがする。
その渦巻きの中は、あまりにぎゅうぎゅう詰めで同時にあまりに何もないので、何も始まっていなくてすべてが終わっている。
イギリスの極右活動家が、ロシアの国家が関与する放送局を推奨する、などということは、25年前にあの「壁」が崩壊する前は考えられなかったのではないか。私たちの知っている「歴史」は、終わっているのではないか。
いや、その「壁」が作られる前ならどうだ。ヤルタ会談の写真を見れば、チャーチルとスターリンが仲良くしているではないか。私たちの知っている「歴史」とは、そもそも「歴史」ですらなかったのではないか。
私を「帝国主義者め〜」と罵ってきたような人たちは、彼らの考える「反帝国主義」のリーダーのひとりであるバシャール・アサドを「公平に」見ている(と主張している)ニック・グリフィンのことは罵るだろうか。罵らないだろうか。
ああ、すべてがばかばかしい。
流されている血など、ないかのごとく。
ガーディアンの記者がアレッポに入っていた。
Back from 48 hours in #Aleppo Recent barrel bombs have destroyed most places where civilians gather, esp market stalls & X-roads.
— Martin Chulov (@martinchulov) December 1, 2014
#Aleppo ctd: route from north is over muddy field, which regime failed last week to close. City vulnerable. But fall not imminent
— Martin Chulov (@martinchulov) December 1, 2014
#Aleppo ctd; Islamic Front has solid control in city. Al-Nusra active in north countryside. Close co-operation between them.
— Martin Chulov (@martinchulov) December 1, 2014
#Aleppo ctd: Destruction in north-east & inner east immense. Estimate 50,000 civilians max still in opposition half. #Syria
— Martin Chulov (@martinchulov) December 1, 2014
#Aleppo ctd: Battle for Shia town of Zahraa still raging. Jabhat al-Nusra in lead role for oppn. Regime artillery thundering.
— Martin Chulov (@martinchulov) December 1, 2014
#Aleppo eerily silent. Bombs shells sirens & generators only sounds amid largely empty expanse of ruins & empty homes #Syria
— Martin Chulov (@martinchulov) December 1, 2014
#Aleppo ctd: road from border largely under control of Islamic Front, but Jabhat al-Nusra also present. #Syria
— Martin Chulov (@martinchulov) December 1, 2014
‘Hell is never far away’ - the female medic risking her life for #Aleppo #Syria http://t.co/s0B6My6Uuo
— Martin Chulov (@martinchulov) December 2, 2014
![]() | 週刊ニューズウィーク日本版 「特集:ベルリンの壁崩壊25年 世界の現在地」〈2014年 11/18号〉 [雑誌] ニューズウィーク日本版編集部 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() by G-Tools |
※この記事は
2014年12月03日
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