![]() | わたしはマララ: 教育のために立ち上がり、タリバンに撃たれた少女 マララ・ユスフザイ クリスティーナ・ラム 金原瑞人 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() by G-Tools |
「頭が押さえつけられ、スカートのすそがふんずけられている状態」に置かれている現場の女子にはね、「イスラームだから」だろうが「世の中そういうものだから」だろうが「親が保守的で」だろうが、違いはないんですよ。「私は勉強したい」んです。「医者になりたい」、「先生になりたい」、「研究者になりたい」、「弁護士になりたい」んです。「なんでもいいから勉強がしたい」んです。
「オウベイガー」、「スパイガー」厨がうるさいんですが、そんなの、彼女たちの問題じゃありません。そもそも「問題」なのかどうかもわかりませんが、そうであるとして、それは彼女たちを抑圧している側の問題です。彼女(たち)が明確に指摘した「抑圧」を無視し、放置すること、あるいはその「抑圧」を積極的に継続することにおいて必要とされる「言い訳」は何か、という問題です。
Hatred of Malala reveals the truth about Pakistan's chattering classes. Excellent article. http://t.co/t4fscRIuQ2
— Bina Shah (@BinaShah) 2014, 10月 11
抑圧している側の論理・言い訳なんか、どうでもいいんです。
「女の子が学問ができると苦労する」、「あんまり偏差値が高くなると、お嫁にいけなくなるんじゃないかしら」……ブログやツイッターやってればやってるで「今まであなたのことを女性だと思っていませんでした。ごめんなさい」とかいう、それが「どうでもいい」ということ自体が理解もできなければ前提すらしていない善意の人たち(笑)からの心底どーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーでもいい話に付き合わされることが非常に多い私自身、実の親からそう言われ続けてきたし(そして最後には道をふさぐという妨害をされた。私も親に洗脳されてたから、当時はそれを「大した問題ではない」、「親を理解できない私が悪い」と思っていました)、そう言われている年下の女子の話をじっくり聞く立場になったこともあります。昭和30年代の話とかじゃないですよ。昭和50年代にもあったし、平成に入ってからもある(実際には「年代」の問題ではなく、「親の思想」の問題です。今になって社会のメインストリームに出てきたような「思想」や「思想運動」は、ずっと以前からあった)。
マララさんがすごいのは、何よりもまず、自分が「そういう女子」のひとりであるというところに立ってあの活動・発言を行なっているということです。そして、ただでさえ「女に教育はジャマ」という思想がデフォのこのクソのような社会で、いろんな理由付けをしては彼女の行動について「一方的に解釈」してくる周囲を意に介さずに、自分のすべきこと・自分のできることをするという強さ。
世界のどこででも、彼女がいてくれること、ただそれだけで勇気付けられている人は(たぶん女性に限らず)大勢いるし、特に「女は結婚して男の言うなりになり、家事をして子供を産むのが仕事、それ以外のことはするものではない」という《文化(笑)》が根強い地域の(まだ結婚させられていない)10代女子は、彼女を同じ時代を生きる「仲間」として持てていることで、きっと心強い思いをしているでしょう。世代が違っても、彼女に向けられた卑劣な暴力を知り、彼女の活動や発言を見てきた人たちはきっと。
マララさんに守ってもらうのではなくて、彼女を守れるように社会を変革させていく、その主語は「私」だ。
— 小菅信子(いやがらせされ放題) (@nobuko_kosuge) 2014, 10月 10
んで、マララさんについて「スパイだーーー」とうるさい人が、こういうの↓は「欧米のスパイじゃないから」支持できるというスタンスであるとすれば(「このsisterたちは正しいことをしている」とかいう感じの)、それは単なるプロパガンダですよ。日本語圏でそんな人がいるかどうかは知らないけれど。(パキスタンからは、英語圏でも、いろんな話が流れてはきます。はい)
Video: Recruiting Western Schoolgirls for Jihad - AP https://t.co/BPkO98z2v5
— Zaid Benjamin (@zaidbenjamin) 2014, 10月 10
マララさんの活動について知り、支援したいと思ったら支援するには:
「ノーベル平和賞」の価値は微妙だと思うが、今回の受賞で「マララ基金」への寄付が増えれば、さらに活動の規模が広がるはず。ナイジェリアのボコ・ハラムに誘拐された女子学生の救出支援を含め、本当に精力的かつ戦略的な活動をされていて、年齢とは無関係に深く尊敬できる同時代の人物。応援する。
— 山崎 雅弘 (@mas__yamazaki) 2014, 10月 11
「マララ財団」のサイトには、彼女が暗殺の危険を承知でヨルダンやケニア、ナイジェリアを訪れ、女子教育や児童教育の支援活動を続ける姿が紹介されている。「史上最年少」や「17歳」などの属性を太文字にする報道は、どうも的外れに思える。一人の人間として、彼女が行ってきたことへの評価だろう。
— 山崎 雅弘 (@mas__yamazaki) 2014, 10月 11
「マララ基金」の活動には大手の広告代理店も関与しているが、大規模な実務運営には膨大な資金が必要なので、そのための効果的な宣伝に代理店を使うのは何も問題ないと思う。虚像のイメージを膨らませているようには見えないし、欧米的価値観に迎合しているわけでもない。活動の「実質」を伝えている。
— 山崎 雅弘 (@mas__yamazaki) 2014, 10月 11
パキスタンの部族地域に比べれば、日本は「教育環境」が行き届いているとされるが、例えば物事を長い時間軸で考える、あるいは別々に発生したように見える出来事が互いに関連し合っていることを認識するための「歴史教育」が、きちんとなされているだろうか? 「まずは教育」という彼女の言葉は重い。
— 山崎 雅弘 (@mas__yamazaki) 2014, 10月 11
マララの一番すごいところは「それ以前のところ」に同輩とともに立つということなんです。実質「女に学問はいらん」と言われ続けてきた(「この子はこんなに勉強ができて大丈夫かしら。お嫁にいけないのでは」と親に言われた)人ならわかるはず。男性でも「農家に学問は〜」など言われた人はいるだろう
— nofrills (@nofrills) 2014, 10月 11
このカートゥーン。2012年の銃撃事件のときのものだが、彼女が対峙する相手が「タリバン」と書かれているのが、今の文脈では的外れになっている。彼女を銃撃したのはタリバンだけれど、彼女の銃撃を極めて消極的な形で歓迎し、今彼女のノーベル平和賞受賞に「オウベイガー」厨になることで防御的に反応している「一般大衆」は、(既に悪魔化されている)タリバンじゃない。「保守的な価値観の一般人」だ。
Superb! RT:@Nick_Anderson_
My 2012 cartoon about #NobelPeacePrize winner #MalalaYousafzai pic.twitter.com/YI72mzAdVj
— Lotte Leicht (@LotteLeicht1) October 11, 2014
実際、彼女が教科書をつきつけているのは「タリバン」じゃない。過去、多くの女の人たちがそれを指摘しては嘲笑され、侮蔑されてきた「土着の文化」「伝統」ってやつだ。戦時性暴力に関する国際的な取り組みで、「武器としての性暴力」がここ数年ようやくフォーマルに認知されてきたけれど、それを認知させる過程では、しつこく、必ず、男たちによる暴力の正当化のために、「(西洋とは異なる)土着の文化」だの「伝統」だのが語られてきた。中にはほんとに「文化」、「伝統」というものもあるだろう。しかし多くは「ただの言い訳」だ。「戦利品」として獲得した「女」は、「飯炊き女」として奴隷とする、などということが、戦闘が近代化している中で、「昔からの文化」「伝統」として許容されうるという主張は、法廷では通るものではない。
略奪結婚(誘拐してきた女子を強制的に誰かの配偶者にしてしまう)なんかは、今もまだ「文化」、「伝統」で語られてる。FGMもそう。実際に大勢の健康が危険にさらされているのに、「文化」扱いされている。そういうのを「文化」扱いするのは、男にもいるし女にもいる。「反対していない女がいる」ことは「女一般が反対していない」ことを意味しないんだけど、なぜか「女が支持している」ように語られる。マララさんにもそういう「敵」が大勢いるだろう。
マララさんを支持するならば、少なくとも、そちら側に与してはならない。
で、「あれはアメリカのスパイだーーー」説を支持する日本語話者が、マララさんについて「(利用された)ガキ」とかいう口汚さを発揮しているのは、ありゃ何なんですかね。
で、「利用されたガキ」さえいなければ、彼女たちへの抑圧もなくなるんでしょうか。全部「欧米」が悪いんでしょうか。そもそも女に教育を与えるなどという発想がおかしいんでしょうか。
そうだと言う方、回線きってクソして寝てたほうがいいと思いますよ。
ゴミ。
Pakistan's Taliban spokesman reacts to Malala's Nobel with threats. Scared of a world with educated girls : pic.twitter.com/cVAMZLxJVb
— Bruce Everiss (@Bruciebabe) October 11, 2014
※この記事は
2014年10月11日
にアップロードしました。
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