「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2007年05月03日

タブロイド報道とBPトップの辞任と「彼氏」への変な支払い

「羊をプードルの代わりに」というガセニュース騒動@4月末でThe Sunのサイトを参照したときに、BPの社長だか会長だかが「男娼と淫らな夜」(<タブロイド調)だとかなんとかいうゲイ・バッシング基調のトンデモな記事があることを確認していたのだが、そのBPのボスが1日に辞任した。

BP chief executive Browne resigns
http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/6612703.stm

Profile: Lord Browne
http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/5212824.stm

他の企業ではなくBP(旧称British Petroleum)である。どうせボスが辞任するなら「マーガレット・サッチャーの影」とか「月曜クラブ」とか「サウジとの密約」とか、いっそ「世界規模の陰謀」とか、つまりポリティカルなニオイがぷんぷんするような話で辞任していただきたい企業のナンバーワンだが、残念なことに今回の辞任は非常にパーソナルなことがきっかけだ。

このボス氏、ゲイであることを隠してはおらず(積極的にアピールはしていないにせよ)、男性専用の大人の出会い系サイト(エスコート・サーヴィス)で出会った若くて美しい男性とパートナーの関係にあったのだそうだ。そのサイトが違法サイトでなければ、別に問題にはならないことだろう。BBCは "his private life" という書き方をしており、ボス氏のパーソナルな行動自体は問わない方向で固めている。ただし右翼タブロイドはゲイ・バッシングがメシのタネだからそれを書き立てる。今回ことが公になったのも、右翼タブロイドがそれを記事にすることを差し止める請求をボス氏が行ない、負けたことがきっかけだ。

問題は、ボス氏がそのことについて法廷で嘘を述べたことだった。具体的には、ほんとは出会い系で会ったのに「バタシー・パークでジョギング中に会った」と述べたことがいかんかったのだそうだ。これで偽証という行為になってしまって、ボス氏は辞任した。(ガーディアン記事にそういうことが書かれているのだが、法的な判断の基準がよくわからない。perjuryで起訴はされてないんだよね?)

ここまでだったら「ふーん」なのだが、それで終わらない。

Paper paid substantial sum for Browne story
Owen Gibson and Ian Cobain
Thursday May 3, 2007
http://www.guardian.co.uk/oil/story/0,,2071114,00.html

つまり、ボス氏の「彼氏」について熱心な報道を繰り広げていた右翼タブロイドのひとつ、デイリー・メイルの日曜版のサンデー・メイル(ロンドンのイヴニング・スタンダードとも同じグループ)が、その「彼氏」にたっぷりとカネを払っていたというのだ。

ガーディアン記事いわく、メイルは取材報酬を支払っただけでなく、「彼氏」が外国に行く費用も負担していた。何でも自身の主張を固めるための証拠を集める必要があって旅行していたのだそうだ。完全に意味不明だ。さらに、「彼氏」はボス氏と別れたあといろいろ大変で仕事ができなかったので、今年1月からの「彼氏」の生活費は、メイルが出していた。

あまりに古典的で笑ってしまう。こんなベタベタな「行き過ぎた取材」、フィクションではありえないだろうけれど、リアルだ。

この記事は、あとは基本的に「ガーディアン対メイルの戦争」なので(ガーディアン、本気の記者2人で書いてるし)、言葉遣いを味わいながら読めばよろしいかと。

メイルの言い分としては「BPのボスが職権を利用してやったことは、BPの株主や社員にとって重要な経済ニュース」と考えて一生懸命に取材をしたらしい。「彼氏」への支払いはリーズナブルな範囲だと言っている。しかしボス氏は半ばオープンリー・ゲイ(隠しもせず語りもせず)で、「彼氏」とは4年間続いていた。メイルはほんとは単にゲイ・バッシングがやりたいだけなんでしょ、nudge nudge, grin grin.

#ガーディアンがつかんだ金額がガセでなければいいのだけど、もしそれが意図的なガセだったら「メイルがガーディアンを訴える→ガーディアン敗訴」みたいな最悪のシナリオもありうる。それはちょっとだけ心配。(反戦をやりすぎてガセ写真をつかまされたミラーのことがあったからねぇ。。。)

ボス氏は今回辞任はしたけれども社には残るということになったようで(ガーディアン)、また、「経営がガタガタだったBPを立て直した優秀な経営者」としての評価は今回の辞任の影響は受けていないらしい。まあ、シティがホモフォビアにかぶれるようではほんとにおしまいだと思うけど。

で、このボス氏、元々今年7月末に退任することになっていたようで(下記)、その時に決まっていた後任の人が今回ボスに就任だそうです。

BP's Browne to stand down in July
Last Updated: Friday, 12 January 2007, 17:53 GMT
http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/6256935.stm

何かよくわかんないけど、頭の中でRight Said Fredが無限ループで自動再生され始めたので、ショック療法のためビデオを見てみる。

http://youtube.com/watch?v=ipZDG6__Zfc


あはは、I'm too sexy for my shirt, so sexy that it hurts! ボス氏にはI'm too sexy for my jobとでも歌ってさしあげたい。



トラックバック:
日本語と英語での報道記事を丁寧に拾っておられるHODGE'S PARROTさんに送信します。
「英BPトップ、男性との交際報道をめぐり辞任」@2007年5月2日
http://d.hatena.ne.jp/HODGE/20070502/p3

それと外国メディアの報道で目に付くのは、ブラウン氏がブレア首相と懇意にしていた、という記述だ。

まさにこの点で、私も今回「BPトップが辞任」というのを最初にヘッドラインで見たときは、それ系の話(cash for honourスキャンダル関連とか)なのかと思いました。ただ、だとしたら「あと少しでブレア退陣」というときになってからというのはタイミングが遅すぎる。

あと、BPといえば下記のような関連も。

Claiming the Prize: War Escalation Aimed at Securing Iraqi Oil
By Chris Floyd, Information Clearing House
Posted on January 12, 2007
http://www.alternet.org/story/46602/

Iraq Labor vs. ExxonMobil, BP and Shell
By Kathlyn Stone
OpEdNews
Wednesday 21 February 2007
http://www.truthout.org/issues_06/022207LA.shtml



少し関連する話題で、つい先日もテッド・ヒースが政治的キャリアのために自身の性的指向をひた隠しにしていたのではないかという話がメディアに出ていた。この件はHODGE'S PARROTさんで詳しく取り上げておられる。
http://d.hatena.ne.jp/HODGE/20070502/p1

テッド・ヒースといえば北アイルランド紛争が一番ひどくなっていく時期の英国の首相(保守党)で(在任1970〜1974年)、インターンメントもブラッディ・サンデーもヒース政権の時期に起きている。首相としてのヒースは、いろいろあったあとにIRAと秘密会合を開いてサニングデール合意をまとめ、その結果としてUUPからボイコットを食らう(それでマクミランの労働党に負けた)など、ちょっとおもしろい人だ。(サニングデール合意は確実に状況を悪化させたのだが、その原因は「英国の首相がIRAと秘密会合を開いた」ということにある。でもGFAはこれのアップデート版なんだよね、基本的に。)ただしそういうこととセクシャリティとは関係ないと思う。

このころのNI保守派(ユニオニスト)とブリテンの保守派(保守党)とのつながりは、丁寧に見てみるとすごく興味深いのだろうなあと思う。コモンウェルス全体でそういうつながりがあったのだし(南アとかでも)。ついでに書いておくとこのヒース政権で教育大臣をしていたのが「鉄の女」だ。

ヒースが亡くなったときのエントリ@2005年7月:
http://ch00917.kitaguni.tv/e167434.html



アップデート:
「BPボスの辞任をめぐるメディアの動き(メイル惨敗)」@5月6日
http://nofrills.seesaa.net/article/40998488.html

※この記事は

2007年05月03日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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