「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2014年10月05日

役目を終えて休眠状態に入ったはずのTwitterアカウントが、なぜか復活して、本来の活動とは関係なさげなことをしている。

#Gablegate を覚えていらっしゃるだろうか。-gateという接尾辞は、「ウォーターゲート事件」にちなんで使われるようになった英語圏の「疑獄」、「疑惑」、「騒動」を表す表現だ。

Cableは、2010年、初夏の「コラテラル・マーダー」、秋の「アフガニスタン戦争ログ」と「イラク戦争ログ」に続いて、ウィキリークスによってウェブに「放流」された米外交公電のこと。戦争の記録とは異なり、公電の多くは機密指定外だったが、「世界各地の米外交官がこんなことを本国に書き送っていた」ということがおおっぴらにされて、米国は赤っ恥をかいた。大量の公電の公開にあたり、ウィキリークスと組んでいたのがガーディアン。プロのジャーナリストとして、人に情報を伝える際に必要な「情報の整理」などをサポートしたのだが、いろいろあってウィキリークスのジュリアン・アサンジを怒らせてしまい、アサンジが反ユダヤ主義丸出しの妙な言いがかりをつけるなどして完全に決裂。そこらへんのことは書籍としてまとめられ、日本語化もされている。「内幕もの」として時間が経過してもおもしろいので、未読の方はぜひ(公共図書館にも入っているはず)。

さて、その #Cablegate のときに、膨大な情報を整理して見出しをつけて流すという報道のスタイルに、Twitterが非常に適役だった。ガーディアンでは見出しや要点をフィードするためにTwitterのアカウントを開設した。 @GdnCables である。このアカウントからは、リークされた公電についての報道記事の見出しや要点だけでなく、関連ニュースもツイートされた。リーク元の(当時の名前でいう)ブラッドリー・マニング上等兵(現在はチェルシー・マニング)に関するニュースや、ジュリアン・アサンジのスウェーデンへの身柄引き渡しに関するニュースなども多く流された。例えばこんなふうだ。




このアカウント、ジュリアン・アサンジの奇妙としか言いようのない行動のあとウィキリークスの活動も彼らへの注目度も下火になり、またそれ以上にガーディアンがアサンジに嫌われてウィキリークスについて以前よりずっと少ししか書けない・書かない状態になってからは、活動は止まっていた。だから私も、このアカウントの存在すら忘れていた。

そのアカウントが、いきなりまたしゃべっているのに気づいたのは、つい先ほどだ。

@gdncablesのツイートのキャプチャ画像

ここでツイートされているニュースのトピック(エボラ、アラン・ヘニングさん殺害)はどちらも、ウィキリークスの「ケーブルゲート」とは関係ない。

いや、ひょっとしたらCablegateの公電の中に「エボラ」に関する重要な情報があったのかもしれない。アラン・ヘニングさんを殺害した集団(「イスラム国」を自称している)は、元は2004年のファルージャ包囲のころにイラクで組織化されたジハディ集団なので、それに関する情報が公電の中にあるのかもしれない。しかし、そうであるにしても関係が薄すぎるし、こんな長い間休眠していて、覚えている人が何人いるか……というアカウントが再稼動していたら、真っ先に「乗っ取られた(ハッキングされた)のではないか」と疑ってしまう。

実際、ツイートされているURLは安全なのだろうか。




ISISなんていうものが出てくるずっと前から、シリアの蜂起/革命/内戦に関連しては「サイバー空間での戦争」が行なわれていた。もう覚えている人も少ないかもしれないが「シリアのエレクトロニック・アーミー(シリア電子軍: SEA)」の活動だ。

彼らはTwitterでは広報的なというか、「このサイトをハックした」的な声明を出したり、「欧米」の報道機関を挑発したりといった活動をしていたが、そういうこととは別に、他人のサイトにマルウェアを仕込むようなこともよくやっていた。

NYTのアンソニー・シャディード記者がシリアに潜入して取材中に急病死(アレルギー発作)した直後、彼を悼むメッセージが、ある在米のジャーナリスト団体のサイトにアップされたのだが、そのサイトがマルウェア(トロイの木馬)にやられてて、閲覧するとやばかったことがある。おそらくSEAのしわざだろう。

また、Twitterで、(特にt.coが導入される前に)人々が多用していた短縮URLを使って、閲覧者がどんなサイトに行こうとしているのかを隠して誘導するようなこともよく行なわれた。短縮URLを多重に使うこともよくあった。今は(これでも)Twitterのほうでかなり対応してくれているので「何を踏まされるかわからない」という警戒は前ほどしなくなっているが、それでも、bit.lyやow.lyといった短縮URLは、信頼しているアカウントがいつもそれを使っている場合は別として、「うっかり踏んでしまった」ということのないようにしている。

というわけで、突然復活していた @GdnCables のアカウントがツイートしていたURLも、「ガーディアンの記事をツイートしているふりをして、変なのを踏ませようとしているだけではないか」ということを真っ先に疑った。そこで、短縮URL(圧縮)を長いURLに解凍してくれるサイトで確認してみた。(というか自分の環境では拡張入ってるんだけど。)

先ほどのキャプチャ画像で、アラン・ヘニングさん殺害の見出しフィードについていたURLを解析:
http://longurl.org/expand?url=http%3A%2F%2Ft.co%2FNz3aZyjVEh
これの元のURLは
http://www.theguardian.com/world/video/2014/oct/04/alan-hennings-brother-in-law-i-thought-alan-would-make-it-home-video?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter
で、問題なくガーディアンの記事だ。(しかしCablegateとはまったく関係ない。)

もうひとつ、ダラスのエボラ罹患者についてのフィードに入っていたURLは:
http://longurl.org/expand?url=http%3A%2F%2Ft.co%2FRjNUbqwNCo
これも問題なくガーディアンの記事だ(が、Cablegateとは無縁)。
http://www.theguardian.com/world/2014/oct/04/dallas-ebola-patient-could-face-charges-two-aid-workers-recover-europe?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter

というわけで、このフィードは問題ない。ただし #Cablegate を付加すべき理由はどこにもなさそうだ。何が目的なのだろう。機械的に何らかのアルゴリズムで勝手に反応してフィードしているのか、特に意味なくランダムにハッシュタグをつけて記事をフィードして動作確認でもしているのか……。

いずれにせよ、もう4年も前の話題についてのアカウントだし、当時は「最新ニュース」をフォローする上でとても便利だったがもう役割は終えている。関係のないハッシュタグを撒き散らかされるのもノイズの発生という点で迷惑だ。

というわけで、ニュースの最盛期にはとてもお世話になったアカウントだが、心置きなく、さくっとフォローを解除した。

ちなみに、このアカウントが活動を停止したのは2011年11月下旬。Cablegateから1年後のことで、そのころにはブラッドレー・マニング(当時の名前)のことや、(まだ活動していた)ウィキリークスのことをフィードしていた。その後は2012年と2013年に合わせて3度、ジュリアン・アサンジに関する話などのフィードがあるが、「復活」したのは22時間前、2014年10月4日のことだ。

これが「休眠」に入ったころのフィードのキャプチャ。

@gdncables

現在はこう。関係のないハッシュタグでこれだけ「しゃべっている」というこの活発さが、ちょっと薄気味悪い。今は問題のないURLをツイートしているけれど、そのうちにマルウェアしこんだURLをツイートしたりしないとも限らない。

キャプチャ
※クリックで文字が読める大きさに。

私がフォローしている英語圏ジャーナリストのアカウントがまだまだずいぶん多く(30アカウント以上)フォローしっぱなしになっているので、みんなフォローしていることすら忘れているのだろうなと思う。

※この記事は

2014年10月05日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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