「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2007年05月02日

実証:The Sunやらデイリー・メイルやらを信用してはいけない理由。(笑)

はてブで知ったJ-CASTさん記事:
http://www.j-cast.com/2007/05/01007316.html
「プードルと偽って羊販売」 「珍報道」世界を駆け巡る
2007/5/ 1

 日本人数千人が、プードルと偽って羊を売られていた――そんな「珍報道」が世界中を駆け巡った。発端は、女優の川上麻衣子さんがテレビ番組で「プードルとして届いたはずが羊と分かった」という「噂話」を披露したことに始まるようだが、本人もこの「珍騒動」にはビックリのようだ。一体、何でこんなばかげた話が誕生したのか。

J-CASTさんの記事では、以下、「何でこんなばかげた話が誕生したのか」を検証している。それによると、「珍騒動」の火元は4月26日付のThe Sun、同日付のMETROらしい。

ソースとして信頼できるかと問われたらNoと言わざるを得ないメディアが2つ並んでいるではないか。(^^;

The Sunとその日曜版のNews of the Worldは基本的に「書いてあることを鵜呑みにしてはならない」メディアの筆頭格である(ちなみにマードック組)。(ただし時々すごいタレコミがある。イラク南部で英兵がデモ隊をボコっているビデオは、最初、このメディアにタレこまれた。)

METROはロンドン地下鉄の駅に置いてあるフリーペーパー(無料新聞)の草分けだが、中身はThe Sunよりさらに信頼できないかもしれないデイリー・メイルだ。(METROはメイルを発行する企業、Associated Newspapers Limitedが作っている。)

どうせタブロイドのデタラメ記事だと思いつつ、まあ一応確認のためにと思ってMETROのサイトを見てみたら、この記事、「最も読まれている記事」のトップを独走している。(<ほんとに「独走」しているかどうかは知らん。書き方をタブロイドっぽくしてみただけ。念のため)
metro-fleece.png

Dog owners 'fleeced' in poodle scam
Thursday, April 26, 2007
http://www.metro.co.uk/news/article.html?in_article_id=46730&in_page_id=34

んで、METROの記事は「ソースはthe Sun」と明記されちゃってるような記事であるばかりでなく、内容もめちゃくちゃだ。エイプリルフールはとっくに過ぎ去っているのに、こういう都市伝説を製造して何が楽しいんだろう。
Maiko Kawakami, who starred in the Japanese thriller Violent Cop, showed photographs of her pet on a television talk show only to be told it wasn't a dog - but was in fact a lamb.
日本のスリラー映画Violent Copに出演した川上麻衣子さんは、テレビのトークショーで自分のペットの写真を見せたところ、それは犬ではなく羊だといわれた。

The discovery prompted hundreds of women to contact the police with similar problems and the authorities believe as many as 2,000 people have been conned.
川上さんの犬が実は羊だったことが判明したことで、数百人の女性が同様の問題を警察に相談、当局は詐欺にあったのは2000人ほどもいるのではないかと考えている。

'We launched an investigation after we were made aware that a company was selling sheep as poodles,' a police spokesman told The Sun.
警察のスポークスマンは「ある会社が羊をプードルとして販売していることを知り、捜査を開始しました」とThe Sunの取材に答えた。

'Sadly, we think there is more than one company operating in this way.
「残念なことに、このようなことをしているのは1社だけではないようです」

'The sheep are believed to have been imported from overseas - Britain and Australia.'
「プードルの代わりに渡されている羊は海外から輸入されているようです。英国やオーストラリアからです」

Poodles are famously used by the rich and glamourous on the continent but are extremely rare in Japan, with many people having little idea what they look like.
プードルは大陸(<どの大陸だろう)ではゴージャスでセレブな人たちに人気だが、日本では非常に珍しく、多くの人はプードルがどのような外見であるのかを知らない。

The company, which translates as Poodles as Pets, sold the 'poodles' for £630, about half the cost of a normal poodle but is now understood to have been shut down.
問題の会社は、英訳すれば「ペットにプードルを」という社名で、その「プードル」を£630で販売していた。通常のプードルの半額ほどである。現在その会社は閉鎖されているようだ。

特に下から2パラ目、「プードルは日本では非常に珍しく、多くの人がプードルとはどのような外見であるのかを知らない」というのは、デタラメもいいところである。うちの近所で散歩してる犬を観察してみやがれってなもんだ、べらんめぇ。

というわけで段々楽しくなってきたので火元のThe Sunも見てみた。プードルっぽくトリミングされた羊の写真と川上麻衣子さんの写真が並んでいるさまはなかなかシュールである。

Ewe've been conned ladies
By VIRGINIA WHEELER
April 26, 2007
http://www.thesun.co.uk/article/0,,2-2007190295,00.html

記事見出しのEweというのは「メスのヒツジ」のことで、発音はYouと同じである。つまり言葉遊び。

記事から:
THOUSANDS of rich women were conned by a firm into believing LAMBS were valuable miniature POODLES.
数千人の金持ちの女性が、ある会社によってだまされた。子羊を価値の高いミニチュアプードルだと信じ込まされていたのだ。

Entire flocks were imported to Japan from the UK and Australia then sold by the internet company as the latest "must have" pet.
羊はすべて英国とオーストラリアから日本に輸入され、ネット会社によって最新の「絶対に買うべき」ペットとして販売された。

The bizarre scam was rumbled when Japanese movie star Maiko Kawakami complained on a talk show that her new poodle refused to bark or eat dog food.
この奇妙な詐欺事件は日本の映画女優、川上麻衣子さんがトークショーで、自分が最近買ったプードルは吠えないしドッグフードも食べないと語ったところから発覚した。

She showed photos of the animal and was devastated when told that it was a lamb.
川上さんはそのペットの写真を示したが、それは羊だと指摘されがっくりと肩を落としていた。

J-CASTさんによると、川上さんが「プードルを買ったはずなのに羊が」と語った番組はフジの『ごきげんよう』だそうだが、この番組ってゲストが巨大さいころを転がして出たテーマでちょっと話をするって番組でしょ。どういうテーマで川上さんがその話をしたのかわからないけど、たぶん「びっくりした話」とかそういうのだよね。で、「ネイルサロンで聞いたんですけど」とかいう話に司会者の小堺かずき(<漢字がわからん)と客席がいちいち「おー」とか「きゃー」と相槌を入れたんだろう。で、「その羊はイギリスとかオーストラリアから輸入されている」ということがどっかから出てきて、The Sunの記者が食いついたんだろう。つか「イギリスとオーストラリア」といえばマードック組ですな。。。The Sunでぶちあげておいて、The Australianで修正報道をする、というパターンそのまんまじゃん。(笑)

そんなものに乗っかるAssociated Newspapers Limited(METROのほか、デイリー・メイル、イヴニング・スタンダード)、本気で大丈夫か。しかもThe Sunでは
Bosses took advantage of the fact sheep are rare in Japan and most people do not know what they look like.

とある部分を(羊は日本では珍しいので、ほとんどの人は羊の外見を知らない)(<それ自体めちゃくちゃだ)、METROでは
Poodles ... are extremely rare in Japan, with many people having little idea what they look like.

と、大胆すぎるリミックスをほどこしている(プードルは日本では非常に珍しいので、多くの人はプードルの外見を知らない)。

で、The Sunの記事でもMETROの記事でも、読者コメントを見ると、真に受けている人はあんまりいなさそうな気がする。まあ、マードック組のお遊びに付き合わされた代わりにちょっと笑わしてもらった、というところじゃないかと思います。

こんなことでメディアのインタビューの時間を割いた川上さんやマネージャーさんや警察の人には、おつかれさまですと言いたい。

あ、METROの記事見出し、Dog owners 'fleeced' in poodle scamも言葉遊び。fleeceは衣料品の「フリース」(ポリエステル繊維)のことでもあるけれども、元々は「羊毛」などの意味で、羊の毛を人間が横取りしてしまうことから「だます」の意味が派生した。
http://dictionary.reference.com/search?q=fleece



日本ではシリアスなニュースが続いたあとに「季節の話題」や「ちょっと微笑ましい話」を置いて気分を和ませるという形式が多いように思うが(例:新聞記事での「芝桜が見ごろ ○○市の○○公園」というもの、テレビでの「アメリカの動物園で珍しいホワイトタイガーの赤ちゃんがお披露目されました」)、ネットで見ている限り、英国のメディアはこういう「ほっと一息」のところで先鋭的な笑いを狙ってくることがけっこう多い。ReutersとかでOddly Enoughというコーナーに入るような「本当にあった変な話」という、ニュースにもならんようなニュースだ。例えば「ブラジルで泥棒が窓枠にはまりました」とか、「キリストの顔が浮かび出たトーストが高値で落札されました」とかいうようなもの。ネタになるのは「海外の珍ニュース」のこともあれば、「英国内の珍ニュース」のこともある。「アナグマが人を襲撃」とか。

で、このOddly Enough系のニュース(日本語のポータルサイトではexcite.co.jpの「世界びっくりニュース」というのがある)はBBC NEWSのサイトでも毎日定位置で掲載されている。トップページの右コラム、OTHER TOP STORIESの下にあるALSO IN THE NEWSのところ。

ちなみに、今日のALSO IN THE NEWSは、「日本でテレビ番組で手品のネタばらしをされたことで手品師が提訴」だ。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/entertainment/6612507.stm

で、これはBBCの記事であるが、あんまり厳密に作られていないことが、記事にくっついている写真を見ればわかると思う。



で、こんなことでThe Sunのサイトを開いてみたら、相変わらずゲイ・バッシングでお盛んなのね、このタブロイドは。。。ついでに見つけたんでメモしておくけど、川上麻衣子さんの話の記事を書いたウィーラー記者は、「あの大物が男娼を集めて淫らなパーティー」とかいうようなどうでもいい記事に添えられている「上院議員の疑獄の数々」みたいな囲み記事も書いているんで、日本にいる記者さんじゃないと思います。トークショーからThe Sunの編集部に行くまでに、途方もない「伝言ゲーム」が発生したんだろうな。
タグ:メディア

※この記事は

2007年05月02日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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