スコットランドは「独立」するのか、「連合」に残るのか? ついに運命の投票日(2014年9月18日)
http://matome.naver.jp/odai/2141103213080105301
Here's a flavour of some of the #indyref newspaper front pages #tomorrowspaperstoday #bbcpapers pic.twitter.com/8HZcJgKvfE
— Nick Sutton (@suttonnick) September 17, 2014
日本時間で19日午前3時(現地では18日午後7時)現在、まさに投票が行なわれている。結果は19日に判明する見込みで、時差が8時間ある日本でも、19日中には結果がわかると思われる。ただし開票と集計の作業に手間取った場合は土曜日以降になるかもしれない(別にコメディランド的なことが起こらなくても、「票の数え直し」ということはよくある。特に「僅差」の場合はそうだ)。結果判明の目安として示されているのは下記の通り。
#indyref スコットランド独立可否レファレンダム、本日18日(木)投票。結果は早ければ現地19日(金)早朝。予想時刻の一覧(日本時間に換算するには+8時間。表の2:00=日本の10:00) via @CarolCampbell4 pic.twitter.com/6lIu7bA3QU
— nofrills (@nofrills) September 18, 2014
Twitterではこのレファレンダムについては #indyref というハッシュタグが使われてきた(Independence Referendumの略)が、投票当日になって #ScotlandDecides と #VoteYesScotland, #VoteNoScotland が #indyref に代わって出てきた。
それらのハッシュタグを見ていれば、非常に民主的で実りの多い今回のこのディベート(スコットランドの人たちはどれほど真剣に考え、言葉を交わし、熱意を伝え、理性を強調し、希望を語り、現実を見て、考えをまとめたことだろうか)についての心からの賞賛でほんわかほかほかしていられるのかもしれない。
実際、私はそのつもりだった。
しかし投票前日、というより数時間前になって突然「No陣営(連合支持派、独立反対派)のやり口に閉口したので翻意した。独立にYesだ」とTwitterで宣言したスターが現れて(そこまではいいんだ)、それに対し、「われらこそブリテン」面をしている「イングランド」からのくだらない、それこそ「ソーシャルネット」がダメになった100の理由としてまとめられそうなくらいにダメな「通りすがり」の反応を見てしまい、結局、いらいらしている。
イングランドの最もいやな面を拡大鏡で見ているような、そんな感じ。
それも「まとめ」に入れてある。3ページ目ね。
http://matome.naver.jp/odai/2141103213080105301?page=3
とにかく、アンディ・マレーに対して「ダンブレーン事件で死んでればよかったのに」と言うのは一線を越えている。
そしてそれ以前に、anti-Britishなる概念が当たり前に語られるようになっているこのウェブ空間。
10年前のイラク戦争のときはアメリカがやたらとanti-American云々といっては人の言論を封じようとしていた一方で、anti-Britishといのはほとんど見かけなかった。私は少し調べてみたのだが、当時、ウェブ検索でひっかかるそれの用例は、歴史的なもの(アイルランド、インド、中東、エジプトなどでの植民地支配への抵抗運動の文脈)か、北アイルランド紛争関連のものだった。
それが今、非常にカジュアルに、「スコットランドの独立(自立)」というただの「政治的意見」を表明したスポーツ選手に向けられている。
しかもそれを、大手メディア(デイリー・テレグラフ)が煽っている。
映画Children of Menの冒頭で描かれた英国の自己愛というか、Only Britain Soldiers On的な世界観と、それのもたらしたディストピアは、確実に、あんなにスタイリッシュではない形で現実になっている。
UKIPがメジャーな政党になったって、別に驚きじゃない。お似合いだよ。
さて、「スコットランド独立」が「UKの全国ニュース」としてまともに扱われるようになったのは、投票のわずか2週間前だった。それは急に来た「パニック」だった。
And if you missed #tomorrowspaperstoday here's a flavour of some other front pages http://t.co/P1MCUzPA1W #indyref pic.twitter.com/ThVZzZJGtD
— Nick Sutton (@suttonnick) September 8, 2014
下記のようになっていると、「パニック」具合がより鮮明だ。
It's an #indyref #tomorrowspaperstoday montage. http://t.co/N67CdsIS7R #bbcpapers pic.twitter.com/LSbEXY9Li5
— Nick Sutton (@suttonnick) September 7, 2014
「スコットランド独立」になんて、それまではロンドンでは関心が示されなかった。2週間前になってからデイリー・ミラーに「スコットランドの外にいても、スコットランド独立問題は大事」みたいな記事が出ているが、有権者登録が締め切られた(9月2日)あとに出るような内容ではない(しかもその記事、レファレンダム推進派の出したホワイトペーパーなどは見てもいない。「恐怖」を煽る学者のコメントだけを連ねている)。
実はこれまで世論調査では、ほぼ一貫してNo (独立反対、連合維持) がYes (独立賛成) を上回ってきた(BBCのサイトに世論調査結果のまとめのページで誰でも確認できる)。ウエストミンスターの主要政党はもちろん、メジャーなメディアも大手企業も、みんな「No陣営」(独立反対、連合維持)。そのNo陣営は資金力も政治力もありあまるほどある。だからある意味楽観的な、「結果なんか見なくたってわかってるよ」というムードが漂っていた。いわば、2010年総選挙で一瞬だけ盛り上がった「選挙制度改革(小選挙区制などという前近代的な制度からの脱却)」という課題についてのレファレンダムと同じような扱いだった。
ぶっちゃけ、ウエストミンスターは「スコットランド独立」などというunthinkableは「一部の過激派」が騒いでいるだけ(「適当にガス抜きさせておけばいいんじゃないかな」)程度に見てきたわけだ。
それが、投票まで2週間を切った段階で "finally take it seriously" という状態になったのは、これまで「ありえないこと、可能性はゼロ」と思われていたことが、「ひょっとしたらあるかもしれない」というレベルになったからだ。(今回のテニスの全米オープン男子シングルスでも、大会開始時は誰が錦織圭が決勝に進むと思っていただろうか。「ひょっとしたら決勝に行くんじゃないか」的な「期待」が出て、メディアでの扱いが大きくなったのは、4強以降、早くとも8強以降だっただろう。そういうことが政治ニュースでも起きている。)
2週間前になって、(いくつもある世論調査のなかのひとつで)YesがNoをわずかにでも上回るという結果が出た。
Sunday Herald front page - "Yes surges ahead" #tomorrowspaperstoday #bbcpapers #scotpapers #indyref pic.twitter.com/cfNyiugY7N
— Nick Sutton (@suttonnick) September 6, 2014
David Cameron's future as prime minister could hang on the outcome of Scotland's referendum http://t.co/pMY8RodyZl pic.twitter.com/9V9l2gxIZa
— Financial Times (@FT) September 9, 2014
People asking me tonight how on earth Yes is ahead in Scotland and truth is Westminster never took it seriously until it was too late.
— Recurve (@curexcomplex) September 8, 2014
こないだまで「4対6、いや、3対7に近い」とタカをくくっていたのに、「51対49」という数値が出るほどに両派拮抗してきた状況に、ウエストミンスター(ロンドン)は「パニック・モード」になってしまったらしい。No陣営を率いている労働党のトップは、「スコットランドが独立したら、国境(英語では国境であれ県境であれ州境であれborderといい、その語自体には『国』であるかどうかは関係ないが)に警備隊を置くことになるのか」というスコットランド版のメイル・オン・サンデーの釣り質問に、何を血迷ったのか、「それも検討せねばならなくなるだろう」とかいう発言をして、彼がこれまで「スコットランド」をまじめに考えてこなかったということを露呈してしまった(独立派はボーダーの封鎖は考えていない。イングランドが一方的に封鎖したら、それはロンドンの判断でしかない)。ここまでものすごいshoot themselves in the foot事案は珍しい。
そこらへんのことは、別に「まとめ」てある。
スコットランドの「独立」、Yes or No? 投票直前で盛り上がってきました!
http://matome.naver.jp/odai/2141006655528101401
と、ここらへんは塩漬けになってた下書きを復活させたものだ。本当はもっといろいろ記録して、いろいろ書きたかったのだが、イアン・ペイズリーが死んでしまうという予想外のことがあって、完全にオーバーロードしてしまった。無念である。
が、Braveheartの Freeeeeeeeeeeeedooooom! がアイルランドではやはり来るのだということは確認できたし(あの映画、史実がかなりデタラメで、スコットランドでは評判がよくないという)、Free Derry CornerはFree Scotlandを祝い、ボグサイドにSt Andrews Flagがはためくという変な光景が実現したようで、やっぱりあたしのアイドルはアイルランドだ、癒される〜♪
ところで夏に流行った「氷バケツ」、Derry ice bucketで検索するとあいあーるえーごっこも見られます。バラクラバに迷彩に(水)鉄砲。昔ならそんなおちょくるみたいなことははばかられたんじゃないだろうか。和平プロセス和平プロセス。ほっほ。
※この記事は
2014年09月19日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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