シリア内戦への英国による軍事介入計画(断念)の存在が、BBCの調査報道で明らかになった。
Secret UK plan to ‘train 100,000 Syria rebels’ exposed http://t.co/TKxgrY1aFO via @AlArabiya_Eng 元はBBCのNewsnightなのだがBBC News webは注目してなかったよね。
— nofrills (@nofrills) July 4, 2014
この「英国政府の極秘計画」をBBC Newsnightが報じたのは木曜日(3日)。NNでスクープがあるときはたいがい当日の朝(現地時間)にBBCトップページに出るが、この件は出てなかったと思う(他に中東情勢、仏サルコジの件などがあったとはいえ)。今もBBC Newsトップにはない
— nofrills (@nofrills) July 4, 2014
BBC newsトップ3件は今は、中東情勢と米国のスパイ活動(スノーデンのリーク)、英国内犯罪ニュース(著名人による性暴力)。ついでながら「今週の話題をクイズで振り返る」ところに例の泣いてばかりいる県議ちゃんの写真が(右肩)。 pic.twitter.com/VDhOEAjxhZ
— nofrills (@nofrills) July 4, 2014
今のBBC NewsのMiddle Eastのトップページには、既に下のほうで見出しの文字列だけになってしまった状態で、当該の「英国政府の極秘計画」についての記事がある。 http://t.co/Gr6ls7evGd pic.twitter.com/dibYi0hINK
— nofrills (@nofrills) July 4, 2014
記事はこれだ。
Syria conflict: UK planned to train and equip 100,000 rebels
By Nick Hopkins Investigations correspondent, BBC Newsnight
3 July 2014 Last updated at 21:30
http://www.bbc.com/news/uk-28148943
冒頭に、5分半以上の映像が埋め込まれている。Newsnightの番組で流されたクリップそのままだろう。
シリア内戦は、2013年の夏に「欧米」が軍事介入の方向で動いていたが、英国の議会で否決されてその方向がつぶれたことは、まともな人ならご記憶だろう。(「反米一筋○十年」のいわば「反米バカ」は「ぜんぶアメリカがやった」と思っているので、こういうものすごく重要な基本的事実の認識をまったくしていないかもしれないが、ここでは連中には構わないことにする。「CIAが洗浄済みの情報を真に受ける帝国主義者」と呼びたきゃお呼びなさいw)
シリア内戦に関して、軍事介入であれ軍事支援であれ「反アサド側」に立っていたのは、アメリカ(バラク・オバマのlead from behind主義www)である以前にフランスであり、イギリスである。これは2011年以降情勢をまともに見ていた人なら誰でも知っている通りだ。私はフランス圏はあまりまともに見られる言語能力がないのだけれど、イギリス圏は「毎日とりあえず見るのはBBC」である。国会での審議と採決を前に、「化学兵器使用」を口実とした「軍事介入」へのムード(あれは「ムード」だった)が高められる中、BBCの「武装組織に密着、最前線からの報告」みたいな報告(ポール・ウッド記者)や、「記者が見た内戦の悲惨、病院にあふれる負傷者、政権側はナパーム様のものを使用」という報告(イアン・パネル記者)があったころのことは一部ではあるがメモってある。(なお、このときにイアン・パネル記者が訪れたアレッポ地域の病院が、閉鎖の危機に瀕しており、マイクロ・ファンディングのサイト、JustGivingで支援を求めている。病院の運営をしているのは在英シリア人が避難民支援のために立ち上げた英国のNGOで、Twitterは@hands4Syr。)
We have the surgeons. We have the hospital. We just need the money https://t.co/HNa8GpoGFq #SaveAtarebHospital pic.twitter.com/Tx1KFBxT6v
— Hand in Hand 4 Syria (@hands4Syr) July 6, 2014
閑話休題。
BBC Newsnightがすっぱ抜いた内容は下記の通り。
http://www.bbc.com/news/uk-28148943
The UK drew up plans to train and equip a 100,000-strong Syrian rebel army to defeat President Bashar al-Assad, BBC Newsnight can reveal.
英国は、バシャール・アル=アサド大統領を打ち負かすため、シリアの反政権側の軍勢10万人に訓練を施し、装備を与える計画をまとめていたことが、Newsnightの調べでわかった。
The secret initiative, put forward two years ago, was the brainchild of the then most senior UK military officer, General Sir David Richards.
この極秘のイニシアティヴは2年前に進められたもので、当時の英軍トップ、デイヴィッド・リチャード将軍の発案である。
It was considered by the PM and the National Security Council, as well as US officials, but was deemed too risky.
当該の案は英首相と国家安全保障委員会によって検討され、米国の当局者の検討も経たが、最終的に危険性が高すぎると判断された。
The UK government did not respond to a request for comment.
英国政府はBBC Newsnightからのコメントの依頼に反応していない。
Lord Richards, as he is now, believed his proposal could stem the civilian bloodshed in Syria as rebels fought troops loyal to Mr Assad.
リチャーズ将軍(現在はリチャーズ卿)はこの提案で、反政権側の軍勢がアサドに忠実な軍隊と戦闘を繰り広げているシリアの一般市民の流血を止めることができると考えていた。
The idea was considered by David Cameron and Dominic Grieve, the attorney general, and sent to the National Security Council, Whitehall sources said.
将軍の案はデイヴィッド・キャメロン首相とドミニク・グリーヴ司法長官が検討し、NSCに送られたとホワイトホール筋は語った。
It was also put to senior figures in Washington, including General Martin Dempsey, the US's most senior military officer.
またワシントンの上級当局者にもこの案は渡された。その中には米軍トップのマーティン・デンプシー将軍も含まれる。
デイヴィッド・リチャーズ将軍は、リチャード・ダナット将軍のあとを受けて2009年から10年にChief of the General Staffをつとめ、その後、2010年から13年にサー・ジョック・スターアップ(この方は空軍)の後を受けてChief of the Defence Staffをつとめた。現在は軍からは退いている。
http://en.wikipedia.org/wiki/David_Richards,_Baron_Richards_of_Herstmonceux
1952年生まれ。ということは20歳のときに北アイルランド紛争が大爆発していることになる(1972年1月30日のデリーの「ブラディ・サンデー」)。リチャーズ将軍は1974年にカーディフ大で学位を取得し(国際関係学)、その後極東やドイツなど英国外の英軍基地で長く過ごし、北アイルランドでの作戦にも何度か参加。その名が知られるようになったのは2000年のシエラレオネ内戦での在留英国人や外国人の身柄の保護を行ったばかりでなく首都防衛に積極的に関わった件。いや、なかなか興味深い「人道的軍事介入」主義者のようだ。このほか経歴などについて詳細はウィキペディアを参照。
このリチャーズ将軍がシリア内戦について、2012年(「2年前」)にどういう計画を立案し、提案していたかはBBC記事をご参照いただきたい(そこまでタダで日本語にすることはできないのですみませんが)。ざっくりいうと、現地に派兵はせず、隣国で訓練をほどこし……という計画で、それはね、「傀儡」っていうのよ、としか反応できない。
将軍の計画についての分析:
Professor Michael Clarke, of the Royal United Services Institute think tank, added: "We have missed the opportunity to train an anti-Assad force that would have real influence in Syria when he is removed, as he will be.
"I think there was an opportunity two or three years ago to have become involved in a reasonably positive way, but it was dangerous and swimming against the broader tide of history… and the costs and the uncertainties were very high."
He said it was now too late for the West to get involved.
だけどBBCの同じ記事の中には、今頃になってアメリカがなんちゃら、ということも書かれている。
正直、もうそんな「専門家が分析する」ような話はどうでもいい。いつまでこの流血と破壊が続くのか。これが止まったところで、すでに破壊されたものは元には戻らないのだが、だからといって止まらなくていいということにはならない。
Free Syrian Army fighters during a break in #Aleppo #Syria (#Reuters photo) pic.twitter.com/OQfVCoZUMi
— Ibrahim al-Assil (@iAssil) July 5, 2014
Meanwhile in Syria, the regime is close to retaking Aleppo. Sheikh Najjar is back in government hands. pic.twitter.com/qbubPt9KNt
— Liz Sly (@LizSly) July 5, 2014
Friends in Ghouta of Damascus still under siege saying no water/electricity for over 40 days. Water being smuggled in. Ramadan v difficult
— Rose Alhomsi (@tweets4peace) July 2, 2014
Family in Homs saying no electricity most of Ramadan so far & water is cut most of the day. Includes dangerous checkpoints&already displaced
— Rose Alhomsi (@tweets4peace) July 2, 2014
Thinking of our loved ones spending a second or third and some their first Ramadan in Assad dungeons underground amidst torture & rape.
— Rose Alhomsi (@tweets4peace) July 2, 2014
Mahmoud & Mahmoud my cousins both detained at 16 years are spending their 3rd Ramadan inside Assad torture dungeons.
— Rose Alhomsi (@tweets4peace) July 2, 2014
Abu Abdo my dear friend is spending his first Ramadan in Assad dungeons. His brother Mukhtar only lasted 3 hours due to the torture.
— Rose Alhomsi (@tweets4peace) July 2, 2014
My uncle is spending Ramadan without his 3 boys all under the age of 18. All detained, held and tortured with no charge. Whereabouts=unknown
— Rose Alhomsi (@tweets4peace) July 2, 2014
My other uncle is spending Ramadan with his son detained and held with no charge. Whereabouts are unknown. Also a child.
— Rose Alhomsi (@tweets4peace) July 2, 2014
My dear friend Wesam from the Damascus coalition spends his second Ramadan in one of the worst branches in Damascus.
— Rose Alhomsi (@tweets4peace) July 2, 2014
Hundreds of thousands of forgotten Syrians endure hell daily via torture both physical & mental, rape, starvation, abuse etc. Pray for them
— Rose Alhomsi (@tweets4peace) July 2, 2014
以下、本稿の「導入部」として書いていたんだけど、これを導入にするといつまでたっても始まらないので最後に置くことにした。
6月から7月になった数日間の私の見ているTwitterの画面は、まったくひどいものだった。一番ひどかった(今もひどい)のは中東(狭義の)で、少し前に拉致されていたイスラエル不法入植地の入植者3人(いずれも10代)が「パレスチナ」の側で死体で見つかった後、イスラエルの過激派(極右シオニスト)によるアラブ人(パレスチナ人や、国籍はイスラエルにあるアラブ人)に対する暴力の極大化が懸念されていた。ぶっちゃけ、ジェノサイドや民族浄化が起きる心配があった(「プライスタグ攻撃」で「皆殺しにせよ!」というスローガンが書かれ、オンラインでも極右シオニストの間でそれが盛り上がった)。そんな中、殺されたのが10代の少年、ムハンマド・アブカデールである。彼は拉致され、暴行を受け、生きたまま油をかけられて焼き殺された(検死結果より)。エルサレムでの出来事だ。今流行のツーブロックの髪型をした彼は華奢な体つきで、16歳、17歳という年齢より幼く見える。
Selfie of Mohammed Abukhdair, the Palestinian teen who was kidnapped and tortured to death by Israeli settlers. RIP. pic.twitter.com/C45aytknEk
— Faress (@farGar) July 3, 2014
"Revenge!" - past few days has seen spread of such photos calling for the killing of Arabs https://t.co/rRc3ywKEdT pic.twitter.com/oJ2HeMum4H
— Middle East Monitor (@MiddleEastMnt) July 4, 2014
القدس #مسافة_السكة pic.twitter.com/eis0B15OWQ
— الاشتراكيون الثوريون (@RevSocMe) July 4, 2014
جثمان الشهيد محمد أبو خضير محمولًا على الأكتاف والآلاف من المقدسيين يستعدون لتشييعه.
#القدس #فلسطين
#القدس_تنتفض pic.twitter.com/T0UvNNVjm4
— مُنتصر (@MuNt90) July 4, 2014
A Palestinian Child was Kidnapped,Tortured,Killed&Burned by Israeli Settlers today
RIP Moh.abuKhdir #Dontburnourboys pic.twitter.com/pOdJ8fJ2U5
— Palestine Social (@PalestineSocial) July 2, 2014
西岸地区では彼のような「子供」が、いや、彼よりもっとずっと小さな、それこそ10歳にも満たぬような子供が、イスラエル当局によって逮捕され、連行されていっている。そういったこともどんどん、写真で報告されてくる。
パレスチナは、それでもまだ「報じられている(情報が外に出ている)」。シリアでのムハバラトの活動がどうなっているかなど、さっぱりわからない。ただ、上で見たローズさんのツイートのような報告がある。何ヶ月も前に逮捕されて行方がわからなくなった人権活動家や市民ジャーナリストがどうなったのかなども、わからない。
この地について、「だってあそこは昔っからああだったじゃない」という理由付けをした上での無関心も、かなりはびこっているだろうと思う。
※この記事は
2014年07月06日
にアップロードしました。
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