「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2014年07月06日

70年代の日本のロボットアニメと、イラクの人々

前項の続き。というか、予定外の「続き」(「番外」と言うべきか)。「ハロー・キティのノートを机に置いてる武装組織コマンダー」の件を、「保守速報」とかが騒ぎ出し、本当にうるさくなりそうでうんざりしていたところ、ふと、誰かがRTしているツイートのアバターが気になった。

risingtruth2.png




全然詳しくないのでわからなかったが、これは「グレンダイザー」というロボットアニメのロボットだとご教示いただいた。(調べてみると、年代的に私も子供のころに見ていたはずなのだが、さっぱり記憶にない。)よく見てみると名前も「カリフ・グレンダイザー」となっている(ただこのアカウント、前は違う名前だった。後述)。








日本語版ウィキペディアのこの記述は、アジアプレスの坂本卓さんの文章を元にしている。




坂本卓さんの文章は、2008年5月28日 20:46のタイムスタンプだ。
http://www.asiapress.org/apn/archives/2008/05/28204604.php
日本のアニメはアラブ世界でもひろく放送されてきた。フセイン政権下の80年代、2つのチャンネルしかなかったイラク国営テレビ。ひとつは、政府のニュースや公式番組専門、もうひとつは、アニメやドラマを中心とした娯楽系チャンネルだった。そこで1982年から放送されるようになったのがグレンダイザーだ。

当時、放送時間の夕方6時になると、イラク中の路地から子供たちの姿が消えたというほどの人気で、男児だけでなく、女児もがテレビの前に釘付けになったという。日本のガンダムファンが、他のアニメとは違う格別の思いとこだわりをガンダムに寄せるように、イラク人にとってグレンダイザーは特別である。マジンガーZの延長線上にグレンダイザーがあるはずなのだが、ストーリー性、キャラクターのデザイン性でグレンダイザーに勝るものはなかったという。

確かに、ウィキペディアでストーリーを読むと「平和に共存していた隣国が変質し、侵略者に……」といった展開は、うちら「平和ボケ」になることが許されていた日本人にとっては「フィクションとしてよく書けている」とか「アメリカのSF映画の《設定》と比べてああだこうだ」とかいった反応を導き出すようなものと思うが、中東・アラブやバルカンでは「めっちゃリアル」な寓話として、大人になってからも何度も思い出し、心の中で参照するようなものではなかろうか。

このイラク・グレンダイザー伝説は、放送時に幼年時代だった現在の30代〜40歳代限定である。その下の世代はまた別だ。20歳代から下は、ちびまる子ちゃん、キャプテン翼、ポケモン、名探偵コナンと続く。

サマワで日本が供与した給水車にキャプテン翼(アラブ名キャプテン・マージド)のキャラクターをペイントしたのも、イラクでの日本アニメ人気を知っていたからだろう。

だが、「幸福の黄色いハンカチ」がイラク派遣自衛官の家族の「無事帰国を願うキャンペーン」として使われ、山田洋次監督が違和感を表明したように、政治に結びつく使い方は慎重であるべきだ。キャラクターが著作者の意図を離れて一人歩きしたり、国策に利用されることもある。いずれにしても、グレンダイザーを嫌いというイラク人はいないので、政治を背負わせない形で、なんらかの活躍をしてくれることを個人的には期待している。

http://www.asiapress.org/apn/archives/2008/05/28204604.php


そして坂本さんがこの文章をアップしてから6年後、「グレンダイザー」はネット上で「カリフ・グレンダイザー」として、英語で情報の流れを作るという活動に従事している。

さて、この「カリフ・グレンダイザー」のアカウント、トップの背景画はなかなかにきつい(きついので直接貼りはしないが、キャプチャも取ってあるのでもし変更されていたら参照)。「イスラエル」の形をしたナイフが子供の胸に突き立てられ、ナイフに飛び散った血がガザ地区と、そしてイスラエルによる不法な入植地の建設と隔離壁の建設のためにもはや原型を留めていない西岸地区をかたどっている。ナイフを突き立てる手の背景にはイスラエルの国旗。

残念ながら、この「グレンダイザー」は政治を背負いまくったグレンダイザーだ。

アバターは初めて見たが、アカウントのページで確認してみるとツイート数は6000件を超えているし、写真・ビデオも180点以上投稿している。Favも6000件以上あり、結構前からあるアカウントだろう。ただしこの「カリフ」云々という命名は、つい最近の元AQIこと元ISIS/ISILことISが「カリフ制を設立しますた」と勝手に宣言した(そしてエジプトのカラダウィ師やヨルダンの偉い人などからスカンとスルーを食らっている)ことを受けてのものだろう。

と、調べてみるとまずアカウントの解説は2013年12月の末。@RisingTruth1(たちのぼる真実)というアカウント名で検索してみると、最近まではアカウント名は Truthseeker だったことが確認できる。

risingtruth.png

ツイートを見たところ、基本的に、ISなるものの「カリフ制」なんちゃらや独裁・圧政に明確に反対しているスタンスで、ニュースとしてもかなり質が高い。問題は、ボム攻撃の現場の写真などをそのまま載せているところだ。私はすでに一度、別のアカウントが平気でツイートしてくるひどい流血写真を見ることの限界を超えてパニック発作を起こしているので、このアカウントはフォローできないが、それが大丈夫な人はフォローしてみるとよいのではないかと思う。



ちなみにフランスではこういうタイトルだったとの由。
http://fr.wikipedia.org/wiki/Goldorak

※この記事は

2014年07月06日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 08:00 | TrackBack(0) | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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