Student fined for driving car without any doors, lights or bonnet http://t.co/aMyYvtO7BP (Pic: Raymonds Press) pic.twitter.com/Q73pJJY5xO
— The Telegraph (@Telegraph) April 3, 2014
この10年以上、毎年何らかの形で、英国のエイプリル・フールについて記録してきたのだが、今年はやらなかった。特定秘密保護法とかシリア内戦とか、北アイルランド警察によるボストン・カレッジのオーラルヒストリー・プロジェクト潰しとか、家族内の性暴力スキャンダルやら自身の過去やらの問題に見舞われてもなぜかびくともしていない「くまちゃんあひるちゃん」とか、エクストリーム交渉ブンブンファイヤーマッシヴとか、エジプトのあのザマとか、NSAによる監視とその後の米国政府のおたおたっぷりといった現実の奇妙さが、自分の感覚のある部分を蝕んでいるのだと思うが、4月の魚祭りへの関心がまるで持てなかった。去年も不漁だったしね……。
その上に、英国時間で4月1日になってから最初に見た「4月馬鹿のジョーク」が……まあ、そのときは別なことをやってたから記事は読まなかったんだけど、見出しで「怪しいな」と思った……、唖然とするほどクサくて(政治臭が強すぎる上に、枠組みが古い)、今年は不作だなあ、などとサン・セリフ島のビーチリゾートで、ぼけーっとしていたのである。真顔で。
翌日になって見た英語ブログでの日本のエイプリル・フールのまとめなどを見ると、ダジャレ部としては無視できない秀作もあり、きっと世間では例年のごとく盛り上がっていたのだろう。
でも「見逃した」感が全然ない。なぜか。
サン・セリフ島から帰ってきても、私の目の前にはコメディランドが広がっているからだ。4月1日なんぞ関係ない恒常的コメディ同時多発地帯が。
BBC News - Stun gun used by Derry man 'for back pain' http://t.co/GLJasY0LBU さすがコメディランド、4月1日関係ない。'Bizarre to say the least' まったくだよ。
— nofrills (@nofrills) April 3, 2014
いわくデリーでスタンガン不法所持で起訴された56歳の被告、法廷で有罪を認め、所持理由について「ひどい腰痛持ちなのだが、腰痛には電気パルスが効くということなので、スタンガンを患部にという治療法を思いついた。何度か実行した」。判事は「スタンガンをそういう用途で使うことは推奨できない」
— nofrills (@nofrills) April 3, 2014
いろいろと、すべてがどうでもよくなるような話だが、かのコメディランドのキチガイじみたフィクションの喜劇のどれかに出てきても違和感はない。隣のおじさんが昔「大学」にぶち込まれて以来の腰痛持ちで、スタンガンでセルフ・メディケーションしてるよ、みたいな。
コメディランドで起きたこととしては、投票済の投票箱がなぜか水にぬれ、ドライヤーで1枚1枚乾かしてからじゃないと開票作業ができなくなった挙句、その投票用紙を置いた机ががくんってなって用紙が床にぶちまけられ、選挙後のBBC開票特番の数時間の間に1議席も決まらなかったことが思い出される
— nofrills (@nofrills) April 3, 2014
「ドリフ」的な展開を見せた2011年北アイルランド自治議会選挙開票速報(であったはずのもの)のログ: http://t.co/9UAxU0PXzA (下の方の「続きを読む」で展開してください)/現地ジャーナリストなどのログ: http://t.co/rMKWtzQhnX
— nofrills (@nofrills) April 3, 2014
本エントリ冒頭の「ドアもボンネットもない車を運転して罰金」のツイートに、コメディランドの人が応答している。
@Telegraph thats notthing new i live in belfast
— cathy creighton (@Ruby6918) April 3, 2014
私も約20年前、ロンドンで知人の車のドアの1枚があの状態であるのを経験している。ドアの代わりに、黒いビニール袋がガムテープで貼りつけてあった。別の知人の車はヘッドライトが片方壊れたままになってて、夜間に高速を走っていたら警察に止められた。吉祥寺のバウスシアターのさよならプログラムでスクリーンに帰ってくる(奇跡的!)20世紀最大の名画(である!)、『ウィズネイルと僕』の世界(ゴム長靴がないのでスーパーのレジ袋を履いて歩く)と共通する、英国の文化のかたちである。それは、「お金がなくても豊かな」云々というロマンチックな話ではない。
一方で、4月1日に日本語圏で「エイプリル・フールじゃないの?」的に話題になっていた件があるのだが……うーん、もうこの、自分の中では「どうでもいいニュース」について時間使うのいやだから説明は割愛。特に根拠なくmayやcouldで「匿名の当局者が述べた」ような話が、完全に一人歩きしている。
「夏時間へ切り替え忘れた間抜けが"自爆"しちゃった」件(共同通信報道)は《事実》なのかを検証する。
http://matome.naver.jp/odai/2139644345984711501
この件を日本語記事で報じるかどうかは、まあ、一つの判断だ。しかしとにかく「地元メディアによると……報じられている」という形式の日本語記事の書き方が不誠実なことだけは、明確に根拠を示して指摘しておかないといけないと思った。
というか、よく読むと「地元メディアによると」と「報じられている」は別々なんだけど。
地元メディアによると、車体の裏側には時限爆弾が設置されており、逃走した男が犯人とみられている。夏時間で1時間進んだことを男が失念しており、予定よりも早く爆発してしまったのではと報じられている。
つまり、「地元メディア」が報じているのは「犯行の詳細」で、「報じられている」というのはどこで報じられているのかが明示されていない。
これ、長い文章を誰か原典に当たってない別の人が編集して、結果的にぐだぐだになっちゃったのかも。
……と、あれ? 「地元メディア」が「車体の裏側に時限爆弾が設置されて」なんて書いてたかな……。「時限爆弾」なんて言ってる記事は見てないよ。。。「軍の爆発物処理班が詳細を調べている」ばっかりで。
あーあ、またこのどうでもいいニュースに時間を使うことになるのか。。。
もうやだ。
※共同通信が記事と見出しにしているような内容は、事件が起きたアイルランドのメディアは、まともなメディアもタブロイドも報じてないし、報じていると確認できるのはアイルランドではなく英国のタブロイド。英国はアイルランドではない。
※この記事は
2014年04月04日
にアップロードしました。
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