「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2014年03月31日

"I'm married." と言えるステータスをあらかじめ拒まれているという状態に、終わりが来たということ。

英国は、広く知られているように、イングランドとウェールズとスコットランドと北アイルランドで構成されている。国防や外交など「国家」レベルのものは別として、人々の日常生活に直接かかわる多くの法律は、イングランド&ウェールズで共通していて、スコットランドはスコットランド自治議会が、北アイルランドは北アイルランド自治議会が制定するようになっている。(ウェールズも自治議会はあり、条例的なものは策定している。という話になると、「イングランドも自治議会を」論が出てくるのだが、現実としてイングランドについてそれを主張しているのは、地方分権論者というよりは極右である。ああ、ややこしい)

イングランド&ウェールズは、昨年夏、同性カップルの「結婚」を認める法律ができた(宗教組織は基本的に同性結婚にはかかわらなくてよいという形になっている)。スコットランドも同様の法律は成立している。北アイルランドは……何も聞かないで (^^;)

そしてこの3月29日、イングランド&ウェールズのその法律が施行され、午前0時に各地の自治体の登録オフィス(英国では「結婚」は、信仰心がある人は宗教施設で儀式をするが、信仰心がなかったり、カップルで別々の宗教を奉じていたりする場合は自治体のオフィスで行なう、というのがざっくりとした説明)で男性同士、女性同士の「結婚したカップル」が次々と誕生した。

「その瞬間」を挟んで、現地報告を記録した。

イングランド&ウェールズで、同性結婚開始(現地写真を中心に)
http://matome.naver.jp/odai/2139611375282310601


英国ではこれまでにも同性カップルは認められていた。2005年に制度がスタートした「シヴィル・パートナーシップ」だ。しかしこれは「結婚」ではない。キリスト教圏において宗教的な意味合いを有する「結婚」を、同性同士の結びつきに認めるわけにはいかない、という宗教界の抵抗が、21世紀になってもまだまだ強かったため、次善の策というか妥協点として「結婚とは違うんだけど、まあ、結婚みたいなもの」という制度を考え出したのだ。

これにより、同性カップルは財産や税金などについて、異性カップルと同等の待遇を受けられるようにはなったが、"Are you married?" と聞かれた場合に "Yes. My husband works in London." などと答えることはできない、という微妙な立場におかれた。それでもよしとしていた人たちもいたが、あくまで、異性カップルが "I'm married" と言えるのと同じように "I'm married" と言えて当然、という考えの人たちもいて、彼ら・彼女らの「闘い」は2005年以降も続いていた。それが、2013年夏に一応決着した形だ。

「一応」というのは、「結婚の平等」を求めて妥協せずに闘ってきた活動家であるピーター・タッチェルが指摘しているように、「ヘテロのカップルの結婚は普通の結婚で、同性カップルの結婚は特別に法律が制定されている」状態になっているからだ。その不平等な状態も今後解消していきたいという考えらしい。

一方で、「結婚」という制度そのものに懐疑的な立場もあり、そういう人たちからは「結婚、結婚」とやかましい彼ら・彼女らの活動は「伝統秩序を強要する古臭い世の中の価値基準を推進するもの」と受け取られてきた。が、「結婚をあえて選択しない」立場と、「結婚などということは不可能、はなからありえない」立場とは根本的に異なり、「結婚制度に反対する(から結婚できるかできないかはどうでもいい)」云々以前に、その(おそらくは自覚されていない)不平等は解消されねばならないわけだ。

さらにまた、伝統的に(といっても60年代末からだと思うが)、「ゲイ(LGBT)の権利」(もしくは「セクシャル・マイノリティの権利」)を推進しようという人々は、「左翼」や「人権派」であるという思い込みがあり、ゆえに「右翼」や「保守主義者」は「ゲイ(LGBT)の権利」には無関心であるか反対である、というセット思考が蔓延している。

個人的に、そういうセット思考の人と話をしてげんなりしたことがあるが、それこそ「キャメロンは保守党だから、ゲイ・ライツ推進である同性結婚の進展はキャメロン首相のもとではありえない」みたいな単純化をして、何も疑わないわけだ。

そうではなく、保守主義者は保守主義者の理屈で、「結婚」という制度に賛成するという立場で、同性カップルの「結婚」を推進している。その非常にわかりやすい例が、こちらの1ページ目の下の方にある。セット思考にとらわれている人にとっては、目からうろこが落ちるようなものだと思う。

ともあれ、これでイングランド&ウェールズは一歩前進したわけで、2週間もするころには「同性結婚」なんてニュースにもならなくなっているだろう(「シヴィル・パートナー」での「同性カップル」がニュースにならなくなったのも、すぐだった)。

スコットランドももうすぐそうなる。

問題は……うむ。あそこはね、「アルスターはブリティッシュです!」と絶叫してる人々が、ブリテンの現代の価値観を受け入れないからね。ある意味、極右思想(「伝統」への執着)のワンダーランドの地で。

アイルランド共和国も、教会さえなければ、遠からず同性カップルの社会における権利の平等はどんどん獲得されていきそうではあるけれども……ううむ。

なお、イングランド&ウェールズの人と(性別を問わず)結婚する予定の方は、spouseのステータスでヴィザの手続きをすることになるので、それを前提にいろいろ調べてみてください。(制度はころころ変わるので、常に最新情報をチェックしてください。)

※この記事は

2014年03月31日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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