kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2007年04月18日

セラフィールド、不審死した職員の遺体の一部を密かに保存

「セラフィールド」が18日ガーディアンのウェブ版のトップ記事になっている。

セラフィールドなどの核施設で不審死した職員の「遺体の一部」が、30年にわたり、医学的検査のために、遺族の了解を取らずに密かに保存されてきたとの問題が浮上したのだそうだ。英国政府は独立調査委員会(an independent inquiry)を立ち上げる。

Sellafield kept body parts of dead workers
Michael White
Wednesday April 18, 2007
The Guardian
http://www.guardian.co.uk/nuclear/article/0,,2059694,00.html

本題に入る前に「セラフィールド」について。セラフィールドはイングランド北西部、カンブリア(Cumbria)にある。カンブリアといえば風光明媚な「湖水地方」が有名だが、セラフィールドはアイリッシュ海に面した、というか海岸沿いの地域。風光はたぶん明媚なのだが(イングランドのずーっと平坦な海岸線)、ここは核再処理工場があるので「風光明媚な観光地」にはカウントされない。この場所で物騒なものの製造が行なわれるようになったのは第二次大戦のころ(あるいはその前から)で、そのころはTNT火薬を作る工場があったのだが、第二次大戦後に旧連合国のみなさんが我も我もと原爆・水爆をお作りあそばした競争の時代に核物質プラントになったそうだ。
http://en.wikipedia.org/wiki/Sellafield

なお、Sellafieldという名称は、わりと近くにあるSpringfields(ウラン濃縮施設)と混同しかねないためにWindscaleという名称に変更されて、その後またSellafieldに戻されたという経緯がある。理由は私は知らないが、事故とか火事とかがいろいろあって、「Windscale」といえば「アブナイ」というイメージしか浮かばないようになったからだとさえも言われている。

で、このセラフィールドではたびたび「事故」が発生しているのだが(事故などなくてもアイリッシュ海にいろんなものをがんがん流しているので、アイルランド共和国からは「閉鎖要求」を出されたりしている。海流に乗ってノルウェーまで汚染が広がっているから、ノルウェーも何とかするように要求している)、最も新しいところでは2005年の「溶液ダダ漏れ事故」がある。

この事故については私よりずっと原子力問題に詳しい方がネットで活発に記録・発言(@日本語)されていたので、「セラフィールド 事故 2005年」といったキーワードでネット検索を。私がメモしていた分のまとめ(一覧)は下記:
http://ch00917.kitaguni.tv/e151053.html

で、セラフィールドにある「再処理施設」というのが何をするところかというと、使用済み核燃料からまだ燃える物質(ウラン、プルトニウム)を取り出すところで、メインはプルトニウム。その「再処理」の過程では不要の物質が生じるのだが、それが放射性物質だからそう簡単に片付けられない。が、とりあえず高い煙突を作って大気中に排出するとか、沖のほうにパイプを伸ばして海水中に排出するとかすれば薄まるから大丈夫、という話だ。というかそういう話をなさっている大学教授の表情(顔と声と言語の表情)をドキュメンタリー映画『六ヶ所村ラプソディー』で拝見したら、大学の時に資料として見た高度経済成長期のニュース映像かドキュメンタリーで化学物質垂れ流して公害病の原因を作った企業側の研究員さんの表情によく似ていて、心底「うむむー」と思ったのだが、私は。

(なお、『六ヶ所村ラプソディー』という映画、単におもしろいです。「おもしろい」といっても「娯楽」という意味ではなく、静かな刺激にあふれているという意味。近くで上映される機会があればぜひ。)

というところでガーディアン記事概要:
過去30年にわたり、セラフィールドをはじめとする核施設で不審なかたちで死亡した職員の遺体の一部が、医学的検査のために、遺族の了解なく、密かに取り去られていたとする問題で、政府は独立調査委員会を立ち上げることになった。

遺体の一部というのがどのようなものか――皮膚だけなのか、あるいは四肢や組織なのかなど――は現時点ではわかっていない。遺体の一部の保存は1960年代から行なわれており、90年代初めに停止された。この30年ほどの期間で一部を取り去られた遺体は70体近くになるのではないかとの示唆もある。

18日、アリスター・ダーリング貿易産業大臣(Alistair Darling, the trade and industry secretary)が下院で、真相を究明し報告書をまとめる独立調査委員会の長となる法律家を任命することを約束する見込み。

貿易産業省では「第一に配慮すべきはご遺族の心情です。調査が必要な事例は1960年代にまでさかのぼり、かなりの数であることは確かです」とコメントしている。

昨日、the GMB union【「連合」のような団体だと思う】が調査を求めると公言した。その4日前に、セラフィールドのあるカンブリア地域選出のトニー・カニンガム(Tony Cunningham)、ジェイミー・リード(Jamie Reed)両議員(労働党)がこの問題を初めて聞き、the Nuclear Decommissioning Authority (NDA)【核施設のクリーンアップなどを担当する公的組織で現在のセラフィールドの所有者】の責任者からの調査を求めていた。議員側はセラフィールドの13,000人の職員のほとんどを代表する。カニンガム議員は昨夜、次のようにコメントした。「非常にひどい話で、わたしたちは既に徹底的な調査を要求しています。いかに昔の話であろうとも、親族の方々には正確に何が起きたのかを知る権利があります」

疑われているのは、例えば若い男性が心臓発作で死亡といったようにセラフィールドで不審死が発生した場合、専門の医師が検死を行なって、何らかのサンプルを取っていたのではないか、ということだ。また、セラフィールド以外の核施設(Aldermaston や Harwellなど)でも同様のことが行なわれていたのではないかとの指摘もある。しかしこの役目に当たったとされる医師(1名)と2人の検視官は既に死亡している。

ガーディアンらしい、ちょい遠まわしな危なっかしいトーンの記事だ。「遺族の了承も得ずに勝手に検体にするなんて、グロテスクな」という方向でまとめられていて、セラフィールドの何がそのような状況を引き起こしたかはあえて触れない。大人だからだろう。(<こら。)

記事のこのあとの部分によると、この件が明らかになったのは、ある科学者が新たな研究のために、これまで蓄積されてきたデータを見るということになったときに、そのデータはどのようにして得たのだろうかと尋ねたからだそうだ。つまり、その科学者さんがその研究をしておらず、そのデータを閲覧していなければ、まだ闇の中に放置されていた。亡くなった方々は、身体の一部を知らん間に切り取られて墓の中、という状態のままで15年から30年以上。それを議員は「グロテスク grotesque」(あえて日本語でいえば「生理的に受け付けない」とかいう感じ)という言葉で語っている。

一方でセラフィールド側、British Nuclear Fuels Ltd (BNFL) 【日本でいう「原燃」に相当】は、検体は「適切に保存」し、研究のために現存はしていないと述べ(<ここは「グロテスク」に対する受けの記述だと思う)、問題は「過去の話であって現在はそのようなことは行なわれていない」と強調したそうだ。
「病理/検視解剖の素材のサンプルを取るということは1960年代に始まり、90年代初めには行なわれなくなっています。セラフィールドについては65例のファイルがあります。データを精査すると、これらのうち56件ではサンプルを取ったのは検視官の解剖ないし検視と関連してのことです。またこれらのほかの5件では、ご遺族の弁護士といった法的に正当なところからの指示で行なわれていました。残り4件では、ファイルには指示ないし同意について一切の記載がありません。だからといって適切な手続きが取られなかったということにはなりませんが」

「現在、解剖に必要だったサンプルのことが取り上げられているのは、新たな研究を裏付けるために過去の研究データを再検討したいという申請があったからです。この申請はthe Westlakes Research Institute to the Westlakes/NDA Research Governance Groupのものです」

「分析を待つサンプルは適切に保管されていました。時には数ヶ月保存していたこともあります。サンプルは分析の過程で失われてしまいました(ので現存していません)。現在、この場所に保管されている組織サンプルはありません。また放射線学的分析のためにサンプルをとるという慣行は、1992年を最後に行なわれていません」


GMBでは「ご遺族がどうお感じなのかが問題と考えます。会社側からの情報が必要です。早期に、どういうことがあったのかを明確にしていただきたい」とコメントしている。

……とのことで、ガーディアン以外のメディアの記事:
BBC
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk_politics/6565409.stm

The Irish Times
http://www.ireland.com/newspaper/breaking/2007/0418/breaking23.htm

RTE(アイルランド国営放送)
http://www.rte.ie/news/2007/0418/sellafield.html

ロイター(スコッツマン掲載)
http://news.scotsman.com/latest.cfm?id=597602007

※ここらへんでは「遺体の一部が無断でサンプルとしてとられたのは1960年代から70年代にかけて死亡した人々」という文面になっているほかは、ガーディアンとあまり変わりないように見える(スキャニングしただけですが)。

The Irish Examiner
http://www.irishexaminer.com/breaking/story.asp?j=92650580&p=9z65x88z&n=92650960
※労組(GMB)の別の人のコメントが詳しく記載されている。
In a letter to BNFL it (=the GMB) said the only way to counter concerns was for the company to clarify its policies and actions at an independent public inquiry.

General secretary Paul Noon said: "We don't want to rush to judgment but we do want the facts.

"Removal of organs from deceased radiation workers without consent would be ethically, morally and possibly legally wrong. Whatever the motives it should not have happened."

Mr Noon said there should be an independent inquiry, and the issue treated in an "open and transparent way" to protect the interests of the affected families and employees across the nuclear industry.


テレグラフ
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2007/04/18/nsellafield18.xml
※ガーディアンとだいたい同じだが、読みやすい。

AP(IHT掲載)
http://www.iht.com/articles/ap/2007/04/18/europe/EU-GEN-Britain-Body-Parts.php
※大臣が独立調査委員会をオーソライズした後に書かれた記事で、なおかつ英国人でない人向けに説明多めで書かれている。ああ、読みやすい。

この話題、やっぱりオオトリはインディペンデントでしょう・・・と思ったら肩透かし。多分この後にもっと詳しい記事が出るのではないかと。
http://news.independent.co.uk/uk/health_medical/article2458921.ece

なお、英国では何年か前に、病院が子供の遺体をサンプルとして、やはり遺族に告げずに勝手に保存していたというケースがあり、今回のこれもそれとの連想で語られている場合が少なくない。(ガーディアンもそうなんだけど、概要からはカットしました。)

※この記事は

2007年04月18日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 19:42 | Comment(1) | TrackBack(0) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
インクワイアリーの責任者には、リヴァプールの病院で乳幼児の遺体の一部が遺族に無断でサンプルとして保存されていた件のインクワイアリーを担当した法律家(QC)が任命されたとのこと。

また、スコットランドのDounreayでも同様のスキャンダルがあるらしい。
http://en.wikipedia.org/wiki/Dounreay

Body-parts inquiry call at Scots nuclear power sites
GERRI PEEV
http://news.scotsman.com/scotland.cfm?id=600102007

PRESSURE mounted on ministers last night to launch investigations at all Scottish nuclear power sites to establish if body parts were taken from dead workers without the permission of their families.

...


The operator of Dounreay, in Caithness, has also begun checks on whether body parts were removed without the consent of their families.

The UK Atomic Energy Authority said it was looking into whether there was any connection between the Sellafield controversy and Dounreay.

...

The Green Party and the Prospect union demanded that the investigation is widened to include Scottish nuclear sites.

Chris Ballance, the party's principal speaker on nuclear issues, said he had been blocked for three years in his quest to obtain statistics for childhood leukaemia in areas around Sellafield in Cumbria and Chapelcross in Dumfriesshire.

"That this could have happened only confirms the two things we have long known about the nuclear industry; it is both secretive and inherently dangerous. Why else would they be wanting to check tissue samples from their workforce after their death?" he said.

The Greens are calling for inquiries at Chapelcross and Dounreay and demanded to know if and when the practice had stopped and whether workers had died from radiation exposure. "Nothing less than a full public inquiry will suffice, and if Alistair Darling will not order one, we will be calling for a thorough investigation of whether this entirely unacceptable practice was, or even still is, policy at nuclear sites across Scotland," said Mr Ballance.

Ministers moved quickly after feelings of "shock and outrage" were expressed over the disclosure that in 65 cases at Sellafield, tissue was taken from people, which was then analysed for traces of radiation.

Mr Darling warned that the records kept by Sellafield were patchy, adding it was a difficult situation covering events nearly half a century ago. "Nonetheless, we owe it to the families as well as to the general public to find out what happened and why," he told MPs.

Greensが調査を要求しているチャペルクロスについては:
http://en.wikipedia.org/wiki/Chapelcross
Posted by nofrills at 2007年04月21日 12:15

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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