また、北アイルランドでは、警察は「犯罪捜査と犯罪防止」に特化し、「カウンター・テロリズム」はすべて警察ではなくMI5の担当とする、という方針が決まっている(もう具体的に動き出しているのかもしれないが、細かくは追っていない)。その「犯罪」と「テロ」という境界線はどこにあるのだろう。例えば、デニス・ドナルドソン射殺は「犯罪」なのか、「テロ」なのか?
その「言葉」があることによって、それが「自明のこと(説明するまでもないこと)」だと思い込んでいるということは、案外多いんじゃないかと思う。
長崎市長銃撃事件は、偶然にも、米国のヴァージニア州立大学での銃乱射とほとんど同じタイミングで起きた(日付は、世界各地それぞれだろうが)。それゆえなのかどうか、私がちょっと拾い読みした何本かの英語の記事(AP通信のとかメジャーなもの)では、「日本における銃犯罪」という切り口になっていた。「死亡」が発表されたあとにアップデートされたBBCのAsia-Pacificのカテゴリでは、完全に「ギャングの犯罪」の扱いだ。
「日本では銃の所持は法律で厳しく規制されている」ということは知れ渡っている。ただしそれは「日本では銃の所持はゼロ」ということを意味しない、ということはそれほどは知れ渡っていない。そりゃアメリカに比べれば銃の所持は全然少ないのだが――一般の商店とか一般の家庭に「護身用」の銃がある、なんてことは日本ではありえない――「法律で厳しく規制されている」という「言葉」を何となく、あるいは雑に受け取った人は、それを勝手に「ゼロ」あるいは「ゼロに近い」という意味に解釈してしまう。
ちょうど「○○の証拠は見つからない」といった「言葉」を、「○○は存在しない」と解釈するのと同じように。(先日、1974年のダブリン・モナハン爆弾での「アイルランド共和国警察と北アイルランドのプロテスタント系武装勢力の癒着」について「証拠は見つからない」との正式な結論が出されたばかりだ。実際には事件発生直後にその「証拠」とやらは廃棄処分になっているはず、という内容の注釈つきだったが。)
長崎市長を銃撃した実行犯は、動機について「犯罪であってテロではない」という内容の供述をしているそうだが(個人的に市制に恨みがあった)、ほんとのところではどうなのだろう。今の供述内容が「ほんとのところ」だということで決まりなのだろうか。
こういう、「ほんとのところ」が何なのかわからない、という漠然とした不安をばらまくエクストリームな暴力は、過剰なくらいに心配しておいていいんじゃないかと思う。
I got my propaganda, I got revisionism
I got my violence in high def ultra-realism
-- Nine Inch Nails, Survivalism
http://yearzero.nin.com/survivalism/survivalism.pdf
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市長は背後から撃たれていた。背後を守るという意識はなかったということだ。それは別に特別なことではないのだろう。ただ、そのことから、北アイルランド関係のニュース映像などで、ジェリー・アダムズの前後左右ががっちり固められている(大統領とか首相ほどではないが)のは、やはり「特殊」なことなのだろう、と改めて思う。
……体内からは銃弾2発が見つかった。右の背中から右の心室を貫き、心臓が裂けていた。1発は胸骨で止まり、もう1発も近くから見つかった。
伊藤市長が病院に運ばれたのは17日午後8時10分ごろ。既に心肺停止状態で、人工心肺装置をつけるなど救命措置を取った。手術は午後8時49分から約4時間にわたり、その後、集中治療室に入ったが、出血は止まっていない。
最終更新:4月18日2時31分 時事通信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070418-00000014-jij-soci
17日夜、仕事しながらネットでニュースサイト見てたら「長崎市長が銃撃された」というニュースが出た。あわててつけたテレビの画面の写真をflickrにアップロードした。私のcontactには日本にいる英語話者がけっこういて、どこで誰が撃たれたのかといったことだけでもはっきり英語で書いてあれば少しでも役立つだろうと思ったからだ。
アップロードしたらすぐに、ときどき互いにコメントをつけあう仲の西洋人@日本在住(英語話者)からコメントがついた。「今、David E. KaplanのYakuzaという本を読んでいるのだけど、極右とミリタント・ウルトラ・ナショナリストとヤクザの歴史はつながってて、どれがどれと区別がつかないと書かれている」のだそうだ。
amazon.co.jpで見てみたら、この本は「中身の閲覧」ができるようになっている。第一章のさわりだけだが。
Yakuza: Japan's Criminal Underworld David E. Kaplan Alec Dubro Univ of California Pr 2003-01 by G-Tools |
ともあれ、「ミリタント・ウルトラ・ナショナリスト」なんて海外のニュースでしか接したことのない語だから、よくよく考えればそれが日本に存在することは知らないわけではないのだけれど、それでもやはり一瞬、非常に戸惑った。「それ」をそういう「言葉」で表すことは、私の日常の中にはないからだ。
※この記事は
2007年04月18日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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