「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2007年04月10日

トニー・ブレアの10年間

[コード消去・2016年5月]

seesaa利用者にはAFPさんの写真がワンクリック(いや、2クリックくらいかな)で引用できるようになったとのことで(→解説記事@「メディア・パブ」さん)ちょっとやってみた。

→【2016年5月修正】AFP BBのこの機能が2016年6月末でサービス終了とのことで、2016年5月に修正。下記のように表示されていた(下記画像内のリンクをクリックすれば、参照している記事に飛べます)。


←【修正ここまで】

というわけで、AFP記事中の「8日付のオブザーバー(Observer)紙が発表した世論調査結果」とは下記。

Britain delivers damning verdict on Blair's 10 years
Exclusive poll: public says PM has failed to improve country
Gaby Hinsliff, political editor
Sunday April 8, 2007
http://observer.guardian.co.uk/politics/story/0,,2052546,00.html

この世論調査はオブザーヴァーの「特集、ブレアの10年間」という内容の別冊のために行なわれたもので、調査対象は成人、サンプル数は2000以上(more than 2,000 adults)、具体的には2,034で、質問項目数は40以上であり、3月16日から19日にかけて行なわれた。(記事末尾に、The BPIX poll of 2,034 adults was taken from 16-19 Marchとある。「BPIX」というのは、検索してみたところ、bpix.co.uk、つまりBritish Polling Indexのことだ。このサイトは工事中で何ら情報がないが、ukpollingreport.co.ukのブログに詳しいことが書かれている。)

オブザーヴァーの記事ではなく生のデータで見たいところだが、とりあえずは記事から。(生のデータはここにあります。)

その前に、ブレアの退陣の時期だが、今年の9月までのいずれかの時点。5月8日に北アイルランド自治政府(ストーモント)が再始動するので、それを最大の実績として華々しく語り倒して幕引きにするだろうが、再始動して数週間でまたストップという事態になることも、可能性としては極めて低いかもしれないが、完全に否定はできないので(歴史が語っている通り)、そっちがあんまりごちゃごちゃし始めないうちにさっぱり、という風になるような気が、なんとなくしている。まあ、どうがんばってもサッチャーの11年という在任記録は抜けないことが確定しているのだから、適当に時期を選んで退くのだろう。

ちなみにもうひとつの大きな「問題」となっているスコットランド自治議会選挙は5月3日だ(ウェールズでもイングランドでも地方選があるが、最も注目されているのはスコットランド)。

選挙前の調査では、スコットランドの分離独立(というかイングランドとの「連合」=Unitedの状態を解消すること)を党是とするスコットランド民族党(SNP)が極めて元気だという情勢であると伝えられている。

Poll gives SNP 12% election lead
Last Updated: Sunday, 8 April 2007, 11:17 GMT 12:17 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/scotland/6536765.stm

SNP sees amicable split to union
Last Updated: Monday, 9 April 2007, 08:53 GMT 09:53 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/scotland/6538007.stm

で、オブザーヴァーの記事はスコットランドの選挙という「問題」をかなり意識した/意識させる構成になっている。まあ、次の労働党首は固いといわれるゴードン・ブラウンがスコットランド人だから(それゆえに「英国(British)」なるものにこだわっているのだと思うが)、そういう方向で記事がまとめられることは自然なことだと思う。
The poll ... will increase concerns among Labour's high command that the party is facing electoral defeat in the crucial national elections in Scotland and Wales and the local elections in England next month. It could also mean that Gordon Brown, if he wins the subsequent leadership election, will be handed an almost impossible political legacy to deal with.

an almost impossible political legacy to deal with という書きっぷりがすごい。

ともあれ、ブレアについての世論調査結果。

- 半数近くが、ブレアは現実を把握しておらず(out of touch)、信頼できず、スピン(spin)にかまけすぎだと答えた。

- 57パーセントが、ブレアはあまりに長く首相の座にあったと答えた。

- 半数以上が、政府は医療・保健に巨額の資金を投入したにも関わらず、NHSはまったくダメダメのままだと答えた。このことはこれまで労働党が強みとしてきた分野がぼろぼろになっていることを示唆している。(うにゃ、それはそうですね。)

- 政党支持率としては、保守党が労働党を11ポイント上回っている。

- ブレア政権下での公共サービスの「改革」(あたしゃこれにはカギカッコつけるよ)については、有権者は特にすごいとかは思っていない。

- ブレア政権では反対を押し切って反社会的行動への取り締まりを強化してきたが、それでも有権者はブレアは犯罪に対してソフトすぎると思っている。(というか、「イスラム過激派のテロという脅威」に必死で対処している一方で、今までどおりのドメスティックな犯罪――ニュースになるような殺人事件、ヘイト・クライムのほか、日常的なひったくり、空き巣、ヴァンダリズム、ドラッグなどの類――はむしろ増加しているか、あるいは増加しているという印象がある、ということだと思う。)

- 40パーセントが、ブレアは「疲れて」いて、アイディアも浮かばない状態だと考えている。

- ブレア政権は概してよくやってきたと考えているのは25パーセント強に過ぎない。

- 61パーセントが、1997年と現在を比較して、英国が「より住み心地のよいところになったか」という問いには否定的な答えを返している。

- 69パーセントが、英国は以前よりもっと危険になったと回答している。

- 58パーセントが、英国は以前よりもっとハッピーになったとの問いにノーと答えている。

- 45パーセントが、教育について、ブレア政権を「悪い」または「非常に悪い」(poor or very poor)と評価している。

- 60パーセントが、交通について、ブレア政権を「悪い」または「非常に悪い」(poor or very poor)と評価している。

- 地域社会(community)の中には労働党政権でよくなったところがあるとの意見は強い。

- 51パーセントが、エスニック・マイノリティにとっては英国は前よりよくなったと回答している。(んー、英国人は「英国テスト」とか受けなくていいからね。)

- 61パーセントが、ゲイおよびレズビアンにとってはよくなったと回答。(これは妥当な話。Section 28の正式な撤廃は2003年だし、civil partnershipは2004年だ。いずれもブレア政権下でのことだが、「ブレアだから」なのかどうかは私にはわからない。まあ、保守党ではこれはありえなかったかもしれないが。)

- イラク戦争については、58パーセントがブレアの最大の失敗だと考えており、3分の2以上が「アメリカに追随しただけ」と考えている。(私は「ブレアはアメリカに追随した」という言説はいかがなものかと思うのだが。)

- 一方でブレアの最大の成功は北アイルランド和平、次に成功しているのはイングランド銀行の独立、という回答結果。

オブザーヴァーが言うに、このような調査結果は、労働党執行部、というかブレアの取り巻きに冷や水を浴びせた。前にこのブログで書いたが、昨年9月に「退陣の予定」が明らかになった時点では、ブレアの退陣は「どこの将軍様ですか」と言いたくなるような、あるいは「シナトラの公演の終わり方」のような、「人々が『私たちは首相が大好きです、まだ辞めないで』と思いたくなるような」儀式を伴う形に、という計画があった。(まったくばかばかしい。)つまり、「選挙に負けて惨めに去る」とかいうのは、この男にはふさわしくない、的なことだ。(まったくばかばかしい。)

だが、今回の調査の結果からは、その思惑はうまくいかないということが読み取れる、というのがオブザーヴァーの意見。(オブザーヴァーに限らず誰でもそう読み取ると思うが。)

で、労働党内では、ブレアが個人的な名声欲のために党全体のイメージを汚しているとの怒りを新たにする向きもあり、5月の選挙の前にさっさと辞めちゃってくださいという意見もまた再燃してくるだろう、というのがオブザーヴァーの意見。

ケン・ローチとかあのへんのがっちがちの左派を「君らもう古いから」という態度で邪険に扱ったあたりは、まだ話としてはわかったのだが、「もう昔の労働党では時代に対応できない」ということで支持をしてきた人たちまであきれ返らせるような個人的な名誉追求心が、すべてをぶち壊すという「現実」は、にわかには信じがたい。ここ数年のブレア(イラク戦争の「根拠」がデタラメであったことが事実として証明されて以降特に)は、まさに労働党にとって「スクラップ・アンド・スクラップ」でしかなかったというのに、自分は本当に「ヒーロー」「救世主」「偉大なる再建者」だと思い込んでいたし、取り巻きもそう思い込んでいた。事実は小説より奇なり。

イラク戦争の「根拠」のときに「私はそれが事実であると信じていた」のだから「私は間違ったことはしていない」と無邪気プレイに興じていたが、あれはその場はとりあえず乗り切れたにせよ、本質的に人々を納得させられるものではありえない。それなのに、あれもこれもその論法で対処できたとでも思っていたのだろう。(BAEのこととかサウジ・アラビアの件とか、トライデントのこととかも。)

オブザーヴァー記事に戻ると、労働党内はブレア派とブラウン派の対立がはっきりしてきている(setting)。5月3日のスコットランド、ウェールズの議会選とイングランドの地方選で労働党の大敗が予想されており、その責任は誰のものなのかで両派が対立しているのだそうだ。ある意味「取らぬ狸の皮算用」をしているわけだが、ブラウン派は「野党各党が反ブレア的気分につけこもうとしている」と警戒をしているのだそうだ。

んなこと言ってる間に「ゴードン・ブラウンはこんなに優秀」とかってキャンペーンでもかませばいいのに。無理なのかな、93年の密約とか知れ渡っているし。

引き続き世論調査から。

ニュー・レイバーを再生させる(reviving New Labour)にあたり、ブラウンよりもよい人材が党内にいるのではないかという希望を抱く人にとっても、今回の調査結果は喜ばしいものではない。(クラークとかミリバンドとかがごにょごにょやってましたけどね。)ブレアの仕事を引き継ぐのに最も適しているのはとの問いに対し、35パーセントがブラウンと回答、デイヴィッド・ミリバンドとの回答は4パーセント、チャールズ・クラークとの回答は1パーセントに過ぎなかった。ミリバンド、クラーク両名とも、保守党のデイヴィッド・キャメロン党首への人気/支持(13パーセント)を大きく下回り、そればかりか労働党支持者ですらもクラークよりはキャメロンを選ぶという。

当のブレアは、選挙を前に、今週ウェールズとスコットランドで遊説を行なう予定。ということは、党は今もまだブレアはカードとして有効と考えている、ということになる。(ダメだこりゃ。)

ブレアの腰巾着みたいなアラン・ミルバーンは、「1997年より前のことを『古きよき日々』と言う人は誰もいません。歴史はブレアの10年間に優しい微笑みを投げかけることになります、間違いなく」と強気。(あのね、そういうのを「詭弁」というのだし、人々はそれに心底うんざりしているんだと思う。1997年のブレアがすばらしかったことは認める人でも、2007年のブレアについてそう思うとは限らないわけで。)

最後に政治学者2人(David Sanders と Paul Whiteley)の分析として、これは「ニュー・レイバーは彼らの面倒は見るが、私のような一般人の面倒は見ない」と人々が考えているということの反映だという指摘。過去3度の選挙では女性の票が決定的だったが、今回の調査ではブレアに対して「信用できない」といった評価を下し、「以前ほど好きではない」と答えたのは、女性が男性を上回った。

・・・というわけで、オブザーヴァーの「ブレアの10年間」の特集ページは下記です。
http://observer.guardian.co.uk/blair/page/0,,2051838,00.html

「ブレアの決定的瞬間 10選」がおもしろいかも。「それってどうでもよくね?」というものの含まれ具合が。でもリアルタイムでは確かに、ああいうこと(ダイアナ死去時のスピーチとか、レオ・ブレアの誕生とか)はきらきらして見えていたのだよね。
http://observer.guardian.co.uk/blair/story/0,,2049814,00.html
1. Going to war with Saddam
2. The ban on foxhunting
3. Shaking hands with Gerry Adams
4. Paying tribute to Princess Diana
5. The repeal of Section 28
6. Facing up to his NHS critics
7. Becoming a father again
8. Being questioned by Scotland Yard
9. Winning the 2012 Olympics
10. Laughing off Cherie v Gordon


※この記事は

2007年04月10日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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