具体的には、2010年1月から2月にかけて、北アイルランドの当事者と英国政府・アイルランド共和国政府で行われた「エクストリーム交渉」の結果、ようやく到達した「落としどころ」(パレード関連)が、数か月もしないうちにわやくちゃになってしまったことと、2012年11月にベルファスト市議会が1年365日掲げられているユニオン・フラッグを基本的に下ろしておくと決議したあとで、ロイヤリストが「ノー・サレンダー!」をやり出したこと(そしてそれが今も継続していること……詳細確認したい方はTwaddellで検索を。議会制民主主義というシステムを理解することができず、直接行動で事態を動かそうとするロイヤリストが、座り込み中の場所。この人たち、1974年から変わってない)。
2013年夏のパレードの季節は、リパブリカン側はほとんど暴れることなく、ロイヤリスト側が警察相手に大暴れという事態になった。その後、ヘタレなあたくしではブログに書くこともできないほど重く暗い話題で矢継早の展開となっているのだが(BBC NewsのQ&Aページも出ない)、ロングケッシュ/メイズ刑務所跡地に計画されていた「和平センター」建設案への支持を、北アイルランド最大政党DUPが撤回し、この建設のために認められていた欧州連合(EU)の補助金も、話はなかったことになった。一方で、バラク・オバマがベルリン演説のときに「紛争が終わった北アイルランドでは壁は消えています」と驚愕のおバカっぷりを露呈した「壁 peace wall/fence」は増えていて、つい先日も東ベルファストのカトリック教会の敷地内に「可動式のフェンス」の設置が認められたばかりだ(ソースはるのめんどいので略)。
1998年4月の包括和平合意(グッドフライデー合意)から15年、「紛争」は終わっていない、というと武装勢力の活動の継続にばかり関心が向くかもしれないが、実はそれ以上に、「ポスト・コンフリクト(紛争後)」の問題が大きい。「紛争」を引き起こした構造は、北アイルランドでは、「政治」という点では大きく変わったが、だからといって「社会」が変わるわけではなく、今続いている「ポスト・コンフリクト」の事態は「社会」の問題である。それも、「紛争」の間に《宗派(セクタリアニズム)》が完全に前提になるように変容してしまった「社会」の問題だ。(「紛争」前は、両宗派は混住していたし、宗派間の結婚などもさほど珍しいことではなかった。)
今、行われているのはそういった問題の解決の筋道をつけようという取り組みだ。北アイルランドの《当事者》が各々組織・団体として代表者を出し、話し合い全体の進行を担当するのは《部外者》であるアメリカ人のリチャード・ハースCFR会長(この文脈では、ハースについては「CFR会長」というより、元北アイルランド特使とするのが適切だが)。話し合われるテーマは、「パレード」、「旗」、そして「過去」 (parades, flags and "the past") など。
この9月にこの「交渉」が開始されたときのニュースなどのログ:
http://chirpstory.com/li/158418
その「交渉」が、顔合わせの段階を終了し、関係各組織の「提案書」がハース議長に提出されているのが今の段階。その「提案書」提出に際して、ハース議長が「『提案書』の公開は望ましくない」と述べていたにも関わらずシン・フェインがウェブサイトにアップし、これをUUPが鬼の首を取ったように批判し、ハース議長が「禁止とは言っていませんから」と100%外交官らしくいなし(またナショナリスト側の「紛争被害者組織」も「提案書」をウェブサイトで公開し)……といったドラマが展開されている。
……ここまで書いたところでぐったりしてしまったので、一応アップしておく。本題はまだ先だが、ここでアップしないとまた塩漬けにしてしまうので。
なお、「ハース交渉」の進展をフォローしたい方は:
https://twitter.com/RichardHaass ※ハースさん本人
in Belfast for 2nd day of NI talks; met 18 Nov w UUP, SDLP; today DUP, Alliance, Sinn Fein & FM/DFM. end of year goal doable & desirable
— Richard N. Haass (@RichardHaass) November 19, 2013
https://twitter.com/BrianPJRowan ※ジャーナリスト
"People take absolutist positions at their peril" - Rowan report from @RichardHaass Talks http://t.co/97BrAulFtp via @BelTel
— Brian Rowan (@BrianPJRowan) November 20, 2013
@RichardHaass talks - read Liam Clarke's report in @BelTel pic.twitter.com/ofJjj90Gl0
— Brian Rowan (@BrianPJRowan) November 19, 2013
※「真相究明」をのらりくらり、ずるずると引き伸ばしているのは警察(RUC)と治安当局(英国政府)なんですよね。表沙汰にできないことが多すぎる上に、「縦割り行政」というか「組織間の対抗意識」でどの機関が何をやってるかも相互に把握できてない。
あとは、私のNIのリストで(別の話題も流れてきますが)。
https://twitter.com/nofrills/lists/ni
→一応、現時点でのブライアン・ロウアンのTLのアーカイヴを取っておいた。ロウアンの書いた記事のリンク集も兼ねて。非常に役立つ内容。
http://chirpstory.com/li/171285
As @RichardHaass talks enter new phase @telliott_UUP believes some progress can be made parades/past, but senses deadlock on flags. @BelTel
— Brian Rowan (@BrianPJRowan) November 18, 2013
うむぅ。。。「パレード」や「過去」はまだ《政治的思考、外交的妥協》が可能な分野だけど、「旗」はボーンヘッド相手だからね……。
そして、「過去」はまだしも、「パレード」で《妥協》しちゃうと、またボーンヘッドが組織化して、北アイルランド全域でポータダウン化した現象が見られる可能性もある。
ピーター・ロビンソンやマーティン・マクギネスが「我々は二度と過去には戻らない」というときの「過去」は、ぶっちゃけ、「宗派対立が暴力に結びついた」局面、「武力紛争」の局面のことで、「武力」の行使されないpeaceの状態が維持されることを大前提に、「ピースフルな抗議はあって当然」というのが現状。頭が痛い。
※この記事は
2013年11月20日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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