「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

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2013年10月20日

BBCのスタイルガイド(表記基準)が変わったかもしれない。

この5月、BBCのサイトにあった「英文法クイズ」で「???」となった設問があった。関係代名詞の主格についてのものだ。

【英文法】関係代名詞、thatかwhichか?
http://matome.naver.jp/odai/2136850801329862601


the house that/which stands on the hill のような関係代名詞主格の制限用法については、通常(英米関係なく)、「thatでもwhichでもどっちでもいい」とされている。

一方で、the house, which stands on the hill のような非制限用法(継続用法)では、「whichでなければならない」とされている。

日本の学校で習う通りである。

しかしこの「どっちでもいい」というのが許せない人々がいるらしく、100年も前から異論がある。「コンマの直後はwhichを使うが、それ以外はthatを用いるべきである」というものだ。

これを「……thatでなければならない」に近い(俗語で言う「原理主義」的な)基準にしているのが、「英文の表記基準の代表格」として名高いシカゴ・マニュアル・オブ・スタイルだ。
http://www.chicagomanualofstyle.org/qanda/data/faq/topics/Whichvs.That.html

この主張はほぼ「疑似科学」的といってよいもので(客観的検証にたえる「基準」は、存在しない)、実際には彼らが述べるほどスッキリとした「使い分け」があるわけではない。英国のその手の「表記基準」として非常に名高い「ファウラー」は、いかにもファウラーらしい遠回しで曖昧な表現で「thatとwhichをかっきりくっきり使い分けたら名文になるかっていうと、そんなことはないわけですね」と述べている。
http://matome.naver.jp/odai/2136850801329862601/2136851445231960103
"If writers would agree to regard that as the defining [restrictive] relative pronoun, and which as the non-defining, there would be much gain both in lucidity and in ease. Some there are who follow this principle now; but it would be idle to pretend that it is the practice either of most or of the best writers."

(限定用法関係代名詞に関して書き手の間で合意がなされれば、明晰で簡単になる。実際そうしている者もいるが、この慣行が見られる文章の書き手が大多数であるとか、最上の書き手がそうしているとかいうふりをするのは、怠惰というものであろう)


それなのに、いまさら、英国の報道機関であるBBCが、「シカゴ」的な基準を採用したらしい。

その結果がこれだ。BBC started to use "that" instead of "which" but is this grammatically correct? They use "that" right after a comma.



慣れないことをするから……。

最初はこのthatは指示代名詞だろうと思った(「同様のサイト、パイレイト・ベイのように、それはブロックされている」)が、読み進めるとそれでは意味がとれない(「ブロックされているパイレイト・ベイのように、IsoHuntも……」でなければ意味が通じない)。どう読んでもこのthatはwhichの誤りである。

もうひとつ、文中の固有名詞についている冠詞(や前置詞)の語頭を大文字にするかしないかという点でも変更が出ている。

この場合、大文字にするのが米国流 (I like The Rolling Stones.)、しないのが英国流 (I like the Rolling Stones.) だが、10月19日のBBC記事を読んでいたら、Theが大文字になっていることに気づいた。

「?」と思ってさかのぼって検索してみたところ、今年の8月に表記基準が変更になっていたようである。



ただBBC Newsでも北アイルランドのは "... the Maze Peace Centre" という小文字の表記のままなので、UK国内ではこのスタイルガイド変更は適用されていないのかもしれない。

もう少し見てみないとわからないが、とりあえず、メモ。

しかし、関係代名詞のこれは、やめてほしいなあ……。

なお、BBCだけではなく、ガーディアンの文法クイズでも同じようなwhich/thatの使い分けの断定があったと思うが、ガーディアンの文法クイズはいろいろとぐだぐだなので(「節」と「句」の区別もついていないのはちょっとね……)参照しない。

※この記事は

2013年10月20日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 22:45 | TrackBack(0) | 英語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼